Sightsong

自縄自縛日記

Outer Pulsation@台北Gongguan Underpass

2019-04-23 22:33:04 | アヴァンギャルド・ジャズ

台北のレコード店・先行一車は噂通り素晴らしい場所だった。以前に東京のライヴハウスで知り合ったI-Cheng Linさん経由で話が伝わっていたようで、初訪問のとき店主(なのか?)の王啟光さんに、あああんたかと言われてしまった。確かに品ぞろえが面白いし、いろいろな人が出入りする。インプロにすごく詳しいJan-wen Luさんともお会いできて、いろいろと珍しい盤を見せてくれた。

ここに集まる人たちの企画で、地下道でギグをやるという。辿り着く自信もないし、先行一車に集まって一緒に車で出かけた。はじめは誰が演奏者で誰がリスナーなのかわからない。

以下、演奏順に。(I-Chengさんが背景などあとで教えてくれた。)

■ Dino

No-input electronicsを使う。台湾にアヴァンギャルド音楽が入ってきた1990年代半ばには高校生であったようだ。ヴェテランらしく、シートに広げたエレクトロニクスを淡々と扱う。地下道という効果もあるのか、いきなり音があちこちから聴こえてきて頭がくらくらする。

■ Lala Reich

石塚俊明や富樫雅彦を好むというドラマー。3年前から活動をはじめ、今回がはじめてのソロだという。

小さな音をとても大事にしていることが伝わってくるし、それだけに大きな音で鳴らすときにそれが際立つ。櫛を使ってシンバルを擦ったりもした。静かな集中のためか、時間の経過を忘れてしまう演奏だった。

■ Jyun-Ao Lin

4年前にパリから帰国してから、実験的な音楽を追求している。ミュージック・コンクレートの影響を受け、また大友良英グランドゼロや灰野敬二を愛聴しているという。ギターを弾きながら前後に大きくステップして動き、足で獲物を狙うかのようにエフェクターを扱う。サウンドがカラフルになった。かれの動画を観るともとよりそのスタイルのようだが、この日は地下道全体をサウンド創出に使っていることになった。

■ Chia-Chun Xu

高校生の頃からノイズをやっているらしい。エレクトロニクスでの拡がりのあるサウンドが伝わってきて、その多層性がとても良い。工事用コーンを片手で使いサウンドに変化を付ける、そのアナログ操作も効果的だった。

■ IC Jean

ギターを横に寝かせ、エレクトロニクスとつないで音響発生器として使う。Jyun-Ao Linをリスペクトしており、これがライヴ3回目だそうである。ユニークなアプローチゆえ、サウンドがシンプルになったこととあわせて変化が生まれた。

■ Shao-Yang Xu

香港出身、現在ロンドン在住。気さくな人で、演奏前後にあれこれと話した(わたしの業界とわりと近かった)。新潟に在住していたこともあるそうだ。また、マヘル・シャラル・ハシュ・バズのメンバーだったこともあるという。ロンドンのCafe Otoでは10回近く演奏したことがあり、また結婚式もそこで挙げたんだと笑った。

かれは地べたに座り、Lalaのドラムス、Jyun-Ao Linのギターに指示しながら、マイクを口の近くに近づけて両手で覆い、ヴォイスをさまざまに変化させる。リストを見せてもらうとベートーヴェンもバッハも入っている。とは言え曲の流れだとか周辺の空気感だとかいったものが溶解してゆき、朦朧とさせられるサウンドとなっている。面白い。

こうして演奏が続くうちにどんどん人が増えていく。東京だってここまで集まることはないかもしれない。王さんは月桂冠をラッパ飲みしてはこちらに手渡してくる(翌朝発つから控えていたのに)。やはりコミュニティの力というものは強い。このような音楽ならばなおさらのことだ。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4 


里茶叔叔、阿布斯@台北Witch House(女巫店)

2019-04-23 07:49:40 | ポップス

朝カフェに入ったら、Witch House(女巫店)における一連のライヴシリーズのフライヤーが置いてあった。アジアンポップスか、面白そうなので覗いてみた(2019/4/18)。

里茶叔叔はギター、ハーモニカと歌。MCでも何かを軽妙に話していて、男女問わず人気がありそう。

しかし後半の阿布斯(Abus)のステージになってさらに店の雰囲気が親密になった。客は8割方20代だろうか。阿布斯はどうやら18歳のようで、ときおり英語で切々と歌っている。客とも顔見知りのようで、やはり男女問わず、憧れの仲間であるように見つめていた。


陳穎達カルテットの録音@台北

2019-04-23 00:41:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

台北でサックスの謝明諺さんに牛肉麺をごちそうになって、そのまま、かれが参加している陳穎達カルテットの録音を観に行った。場所は士林のスタジオである(2019/4/18)。

Ying-Da Chen 陳穎達 (g)
MinYen "Terry" Hsieh 謝明諺 (ts, ss)
Kinya Ikeda 池田欣彌  (b)
Wei-Chung Lin 林偉中 (ds)

リーダーはギターの陳穎達さん。録音はこの日で3日目とのことであり、前回満足しなかった曲の演奏となった。「離峰時刻」という陳さんのオリジナル曲で、音がみちみちに詰まった良い演奏だった。いちど演って前回の録音を聴くと、隙間があるように感じられる。それはベースの池田欣彌さんによれば夜も遅くてみんな疲れていたからだ、とのこと。しかしなおも執拗に演奏を行う。

至近距離で聴く謝明諺(テリーさん)のサックスはさすがである。テイクによって異なるフレーズをもりもりと吹く。アイデアと技術とが手を取り合っているからに他ならない。途中でうまくいかなかった場面も含めてとても面白い。

陳さんのギターはソフトでもあり芯が通ってもおり、初対面ながら、やわらかな人柄をあらわしているような音に聴こえた。林偉中のドラムスもまた、いろいろと工夫したビートに柔軟に対応しつつも力強いパルスを放つ。もう長いこと台北に住んでいるという池田さんは、この日はエレキベースを弾いた。鋭くおさえながらサウンドを前に進めるのは池田さんのベースでもあるのだった。

録音は終始和やかで、それでも満足行くまで聴きかえしてはまた戻る。愉快だったのは、宇宙遊泳的な陳さんのオリジナル「Universe Navigation Log Book」を聴いていて、テリーさんがここはオーヴァーダブだと言ってスタジオに戻り、いろいろと愉快な音を重ねる。昔のテレビゲームのようだ。テリーさん以外はみんな聴きながら笑っているが、さてどんな面白いサウンドが出来上がるだろう。

このカルテットは、『R.E.M Moods』(2015年)、『Animal Triste』(2017年)と2年おきにアルバムを出している。この第3作がどのようなものに仕上がってくるか楽しみだ。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4mm、XF60mmF2.4

●謝明諺
東京中央線 feat. 謝明諺@新宿ピットイン(2018年)
謝明諺+大上流一+岡川怜央@Ftarri
(2018年)
謝明諺『上善若水 As Good As Water』(JazzTokyo)(2017年)