鈴木則文『少林寺拳法』(1975年)を観る。
少林寺拳法とは、中国の少林拳とは異なり、満州から引き揚げてきた日本人・宗道臣(※)が創始した武術である。異なるとは言っても、宗は、中国河南省の崇山少林寺出身者に教えを乞うており、それに他の武術の要素を組み合わせたものであるようだ。(実はさっきはじめて知った。)
この映画も、実在の宗の生涯をモデルとしている。もっとも、宗が千葉真一のような濃いキャラであったかどうかわからないが。
宗は、敗戦後、大阪の闇市で警察に目をつけられ、香川県多度津町へと渡り、道場を開く。よそ者であるにも関わらず、宗は地元に受け容れられ、どんどん若者を入門させ一大勢力となっていく。そして地元ヤクザとの抗争。
やはり鈴木則文ならではの面白さ最優先主義、すべてにおいて過剰。誠直也(アカレンジャーにしか見えない)の右手を人形みたいに切り落とさせたり、安岡力也の局部を鋏で断ち切ったり、最後にとどめをさされる男が口から吐く血を煮こごりのようなコロイドにしてみたり。
そして、悪人がうそぶきながらガラッとふすまを開けたところ、暗闇の中に千葉真一の顔が浮かび上がる場面なんて、待ってましたと言いたくなってしまう。(この場面で、千葉真一が「少林寺拳法が無頼の徒なら、お前たちは何だ」と、絞り出すような低い声で威嚇するところだけ、何故か覚えていた。)
ところで、いろいろ検索していて発見した。中国の崇山少林寺の近くに、「少林拳とサッカーを融合させて教えるサッカースクールを2017年までに建設する計画」があるという。もろに『少林サッカー』の影響らしい。記事には、まさに映画を地でいく写真があって、笑うというより仰天した。そのうちワールドカップやオリンピックでセンセーションを巻き起こしたりして。チャウ・シンチーが監督とかやったりして。
「中国“少林サッカー”専門校建設へ 成績向上に期待」(スポニチ、2013/8/10)
そういえば、何年か前、杭州だか寧波だかの空港の売店で、崇山少林寺の写真集を発見して立ち読みした。その中には、超人としか思えない人たちが紹介されていた。中でも、男が自分の局部に紐を通し、その紐で重たい石を引きずって歩くという写真があった。驚愕してすぐに頁を閉じたが、強烈すぎて忘れられない。おそるべし崇山少林寺。
※実は、一筋縄ではいかない側面が大きいようである。
http://www.let.osaka-u.ac.jp/geography/gaihouzu/newsletter2/pdf/n2_s2_3.pdf
http://budo.sence-net.com/siryou/
http://budo.sence-net.com/siryou/shiryou6.pdf
●参照
○鈴木則文『ドカベン』(1977年)
○鈴木則文『忍者武芸貼 百地三太夫』(1980年)
○鈴木則文『文学賞殺人事件 大いなる助走』(1989年)