銀座ニコンサロンに足を運び、上本ひとし写真展『海域』を観る。
山口県周南市の大津島には、かつて、人間魚雷「回天」の訓練場があった。おそるべきことだ。自らの命を無為に落とすために、特攻の訓練さえもさせられていたのである。
この写真群は、大津島、さらに島を取り巻く海を、スクエアフォーマットの銀塩フィルムによってとらえている。むろん、テキストによる説明はある。しかし、写真は、ものいわぬ海を見つめている。この視線の強度たるや、刮目にあたいする。
薄暗がりのなかでの、島のかたち、波のかたちと光、船、小舟、鳥。すべてを覚悟して受け止めなければ許さぬといわんばかりである。これらを撮ることじたい、写真家は「還暦を迎えて」、はじめて可能となったのだという。
わたしも山口県の出身だが、この島のことは、数年前まで知らなかった。いつか訪ねてみたいところである。