山口県上関町は瀬戸内海に突き出した室津半島の先にあり、さらに上関大橋によって長島とつながっている。山口で生まれ育ちながら、はじめて足を運んだ。上関大橋を渡るとすぐに、竜宮社という小さなお社があって、海に眼をやると、たしかに竜宮につながっているに違いない青さだ。
上関大橋 Pentax MZ-S、FA★24mmF2.0、Velvia 100、DP
上関海峡 Pentax MZ-S、FA★24mmF2.0、Velvia 100、DP
祝島は長島の先にある。船が出ないかと郵便局で訊ねてみると、もう朝の10時代に出てしまって、次は夕方だと気の毒そうに言われてしまう。鎌仲ひとみさんも、原発反対のために見に来る人が多くて困っていると言っていたし、仕方ないので祝島を眺望できる場所を探すことにした。海沿いの狭いくねくね道をちょっと進んで、煙草を吸っているふたりの男に訊ねてみた。
「・・・ああそれなら上盛山(かみさかりやま)の展望台がいい、ほら山の上に竹林があるだろう、あの辺で方向転換すると辿り着けるよ、中電も反対派も監視してるよ。」(山道しかないのに竹林を見つけられるものか。)
そんなわけで、ガードレールがなく細くて怖い山道を進み(私にはテクがない。運転は父である)、無人の御汗観音というところを拝観したあとで、なんとか着いた。
なるほど、確かによく見渡すことができる。長島の南西端の右側には祝島と小祝島、その向こうにはうっすらと大分の国東半島。祝島は火山の噴出によってできた溶岩の島であり、そばの小祝島は休火山である。
原発の建設予定地は祝島ではなく長島の先端部である。ただ、長島の町はその近くではなく、祝島の真ん前にあるというわけである。確かにこの展望台からでも、原発の姿は見えにくいのかもしれない。しかし、この美しい風景を見れば、また、祝島の前にできる建屋の姿を幻視すれば、その是非についての答えは明らかだ。
長島と祝島、小祝島 Pentax MZ-S、FA★24mmF2.0、Velvia 100、DP
長島と祝島、小祝島 Pentax MZ-S、FA★24mmF2.0、Velvia 100、DP
原発予定地(パンフレット『上関原子力発電所建設計画の概要』より)
展望台にあった地図
上関海峡と上関大橋 Pentax MZ-S、FA★24mmF2.0、Velvia 100、DP
また長島の町に戻り、原発の広報施設「海来館(みらいかん)」を覗いた。道沿いには原発反対の看板があった。近くで旨い魚のフライを食べながら窓の外を眺めると、そこからは愛媛の佐田岬がうっすらと見えた。伊方原発がある岬である。
反対看板 デジカメにて
海の向こうにうっすらと佐田岬 デジカメにて
「もしも、計画通りに完成するとすれば、対岸の佐田岬(愛媛県)には、「伊方原発」が建っているので、瀬戸内海を航海する船は、本州と四国との両岸の原発にはさまれた狭い航路を、まるで挟み撃ちにされるようにして通過することになる。いかにも剣呑である。」
「もしも対岸に原発が建設されたら、島の人たちは無気味な原発を押しこんだ、白いコンクリートの塊を朝夕眺めて暮らすことを強制される。3.5キロメートルの海上には、なんの遮断物もない。もしも、原発で事故が発生したとき、祝島は逃げ場のない、人体実験場になってしまう。」
(鎌田慧『原発列島を行く』、集英社新書、2001年)
●参照
○既視感のある暴力 山口県、上関町 >> リンク
○眼を向けると待ち構えている写真集 『中電さん、さようなら―山口県祝島 原発とたたかう島人の記録』 >> リンク
○『核分裂過程』、六ヶ所村関連の講演(菊川慶子、鎌田慧、鎌仲ひとみ) >> リンク