Sightsong

自縄自縛日記

ロジャー・ターナー+亀井庸州@Ftarri

2019-12-07 08:00:55 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2019/12/6)。

Roger Turner (ds)
Yoshu Kamei 亀井庸州 (尺八, vln)

意外な手合わせだが、ロジャーさんによれば、あれこれyoutubeで探していて見つけ、オファーしたとの由。

まずは亀井さんが尺八を手に取り、指孔をタップする。それに反応してロジャーさんはスティックどうしの摩擦音を出す。揺れ動く鳴りに対してはギロギロ音。強い息に対しては立てたスティック。それをエスカレートさせてのマージナルな尺八の共鳴とノイズに対しては、フォークを擦らせてやはりマージンへと向かう。こうして機敏で繊細な呼応が展開された。

亀井さんはテーブルに置いたヴァイオリンの弦を引き出し、それを摩擦させるノイズをさまざまに発展させる。滑らかではなく軋み身体に直接届く音である。応じるロジャーさんの音は感嘆してしまうものだった。針金もスティックもブラシも使い、そのドラムセットとの接触は極めて自由であり、連続的で広い連続的な響きを創出した。なかでもシワシワの金属板を柔軟に使ったプレイには眼と耳が釘付けになる。そこから高音へと移行し、亀井さんもまたヴァイオリンで高音を発した。ヴァイオリンは息をしているようでもある。

麻痺した脳を叩き起こすような強いパルスを経て、鼠花火のごとき音の火花が場を支配した。亀井さんはアジア的なノイズと和音、そしてここにきてようやくクリアな旋律を弾き、それゆえ怖さを感じさせた。ロジャーさんはシンバルを片手で回転させ、金属との擦れ音を展開している。また、異様なほどに尖って澄んだ音も出す。紛れもなく、針金の先端の美学をみせるロジャーさん独自の音だ。

フタリの空で火花が高速で瞬く。亀井さんはアーチを描く。ロジャーさんは両手に合計6本ものスティック(!)を持ち自在な音を出している。

いちどは演奏が終息したが、ひと呼吸置いて、次の演奏に入った。

ふたりはそれぞれ音響の部品を提示する。やがて亀井さんが弾くヴァイオリンが、濁りノイズを含み持ち、まるで馬頭琴の響きを発した。ヴィブラートも含め、アジアの慄きや呪いを感じさせる。ロジャーさんが応じて叩く音はまるで和太鼓。そして、亀井さんによる音は街の雑踏のダンス、ロジャーさんのパルスは指とブラシによるダンス。狙ったような鐘の音で演奏が終わった。

デュオによる即興ならではの、発見の種が散りばめられた演奏だった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8

●ロジャー・ターナー
ロジャー・ターナー+喜多直毅+内橋和久@下北沢Apollo(2019年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
ロジャー・ターナー+広瀬淳二+内橋和久@公園通りクラシックス(2017年)
ロジャー・ターナー+今井和雄@Bar Isshee(2017年)
蓮見令麻@新宿ピットイン(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
ドネダ+ラッセル+ターナー『The Cigar That Talks』(2009年)
フィル・ミントン+ロジャー・ターナー『drainage』(1998、2002年)

●亀井庸州
特殊音樂祭@和光大学(JazzTokyo)(2019年)