Sightsong

自縄自縛日記

ガトー・リブレ、asinus auris@Ftarri

2019-12-05 22:16:18 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2019/12/4)。

ガトー・リブレ:
Natsuki Tamura 田村夏樹 (tp)
Yasuko Kaneko 金子泰子 (tb)
Satoko Fujii 藤井郷子 (accordion)

このグループをナマで観るのははじめてだが実にユニークだ。

時空間を敢えて埋め尽くすことはせず、間を十分に取り、それぞれの楽器の鳴り響きを活かしている。おそらくはそのための巧妙な曲であり、それらへの追従と、実際に音が出たときと想定とのずれとが、奇妙な緊張感を創りだしている。その結果、時空間は確信犯のように引き伸ばされ、放置され、作品として放り投げられる。

音色どうしのシンクロもおもしろい。トロンボーンのぶるぶると震える音、驚くほどの出足でクラスターが放たれ時空間の隙間に入り込むアコーディオン、とどろくトランペット。

この翌日が新作のレコーディングだという。楽しみだ。

asinus auris:
Chiho Suzuki 鈴木ちほ (bandoneon)
Yoko Ikeda 池田陽子 (viola)

このユニット名はラテン語でロバの耳。この母体となった演奏は、今年(2019年)の5月に高円寺グッドマンで行われたものであって、そのときは藤枝守、齋藤徹、スタンダードなどの曲が中心だった。その後ユニット名を付けるのだと言って互いにアイデアを出しては却下しあうという過程があって(笑ったけど没になった名前を忘れた)、なぜか、この名前に落ち着いた。ファーストライヴである。

そして曲ではなく即興。音のひとつひとつが出されたあとの佇まいやそれによる場への影響を確かめるように、試行が続けられる。バンドネオンからは、蛇腹を叩く音も、蛇腹の風も。ヴィオラからは指ではじく音も、弓で弾く音も、風も。それらに色が付けられてゆく。時間の隙間には少しずつ音が侵入し、風の中からある周波数の音が発生する。これは音の創出の音楽だ。やがて中心からの逸脱と不協和の歓びがあらわれてきた。

一旦演奏を終えて再開。呼吸とともに不思議に揺れ動き痙攣さえもするバンドネオン。それを受けてヴィオラの旋律も揺れ動く。ふたりの音の重なり合いは、まるで和紙が何枚も層をなしているように感じられた。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●藤井郷子
邂逅、AMU、藤吉@吉祥寺MANDA-LA2(2019年)
藤井郷子+ジョー・フォンダ『Four』(2018年)
藤井郷子+ラモン・ロペス『Confluence』(2018年)
藤井郷子『Stone』(JazzTokyo)(2018年)
This is It! 『1538』(2018年)
魔法瓶@渋谷公園通りクラシックス(2018年)
MMM@稲毛Candy(2018年)
藤井郷子オーケストラ東京@新宿ピットイン(2018年)
藤井郷子オーケストラベルリン『Ninety-Nine Years』(JazzTokyo)(2017年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
This Is It! @なってるハウス(2017年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)
藤井郷子『Kitsune-Bi』、『Bell The Cat!』(1998、2001年)

●田村夏樹
邂逅、AMU、藤吉@吉祥寺MANDA-LA2(2019年)
藤井郷子+ジョー・フォンダ『Four』(2018年)
与之乃&田村夏樹『邂逅』(2018年)
与之乃+田村夏樹@渋谷メアリージェーン(2018年)
Mahobin『Live at Big Apple in Kobe』(JazzTokyo)(2018年)
魔法瓶@渋谷公園通りクラシックス(2018年)
MMM@稲毛Candy(2018年)
藤井郷子オーケストラ東京@新宿ピットイン(2018年)
藤井郷子オーケストラベルリン『Ninety-Nine Years』(JazzTokyo)(2017年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
This Is It! @なってるハウス(2017年)
田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス(2016年)
藤井郷子『Kitsune-Bi』、『Bell The Cat!』(1998、2001年)

●鈴木ちほ
『今・ここ・私。ドイツ×日本 2019/即興パフォーマンス in いずるば』(2019年)
鈴木ちほ+北田学@バーバー富士(2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ+喜多直毅+西嶋徹@なってるハウス(2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(JazzTokyo)(2019年)
アレクサンダー・ホルム、クリス・シールズ、クラウス・ハクスホルムとのセッション@Permian(2019年)
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
種まき種まかせ 第3回ー冬の手ー@OTOOTO(2019年)
種まき種まかせ 第2回ー秋の手-@Ftarri(2018年)
impro cats・acoustic@なってるハウス(2018年)
鈴木ちほ+荻野やすよし(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2018年)
鳥の未来のための螺旋の試み@ひかりのうま(2017年)
毒食@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2017年)
晩夏のマタンゴクインテット@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
北田学+鈴木ちほ@なってるハウス(2017年)
りら@七針(2017年)
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年) 

●池田陽子
Signals Down@落合soup(2019年)
815展でのパフォーマンス(矢部優子、広瀬淳二、池田陽子、渡辺隆雄、遠藤昭)@好文画廊(2019年)
Hubble Deep Fields@Ftarri(2019年)
謝明諺+秋山徹次+池田陽子+矢部優子@Ftarri(2019年)
アレクサンダー・ホルム、クリス・シールズ、クラウス・ハクスホルムとのセッション@Permian(2019年)
エレクトロニクスとヴィオラ、ピアノの夕べ@Ftarri(2019年)
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
大墻敦『春画と日本人』(2018年)
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)
森重靖宗+池田陽子+増渕顕史『shade』(2018年)
佐伯美波+池田若菜+池田陽子+杉本拓+ステファン・テュット+マンフレッド・ヴェルダー『Sextet』(2017年)
クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』(2017年)


ロジャー・ターナー+喜多直毅+内橋和久@下北沢Apollo

2019-12-05 21:22:51 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のApollo(2019/12/3)。

Roger Turner (ds)
Naoki Kita 喜多直毅 (vln)
Kazuhisa Uchihashi 内橋和久 (g)

それぞれ共演したことはあっても、このトリオによる演奏ははじめてだという。喜多さんもロジャーさんもアポロ初出演(ロジャーさんにはとても良いヴェニューだと来日前に推した)。ロジャーさんは壁にかけられた古い弦楽器を手に取って、興味深そうに眺めている。

ファーストセットはヴァイオリンの擦音からはじまった。ギターの尖った音、鐘の音、それらは澄んでいるのだが、やがて濁らされてゆく。ここから多彩極まりない展開があった。誰かの合図からの急加速。ギターの繰り返しのリフによる悪夢的な雰囲気と、ヴァイオリンによる迷宮的な雰囲気。三者三様の破砕と崩落。三者三様の残響。ギターの擬態。やや抽象的な共有物、そこへの収斂と逸脱が興味深いステージだった。喜多さんのちぎれない糸のようなポルタメント、ロジャーさんの先端の美学が実に印象的だった。

セカンドセットもまた、喜多さんが擦音で仕掛ける。内橋さんのヴォイスとギターによる泡立ちがあり、喜多さんはヴァイオリンで濁った倍音を提示する。ここでも突然の音風景転換が何度となくあり、思いがけないところで全員が急加速する。その中でも、ロジャーさんによるシンバルや針金の擦れる響きやスティックの先端音の増幅などでの疾走、ぐちゃぐちゃで暖かいことさえもあるギターの滑空、その間をヴァイオリンのポルタメントがつないでいる。内橋さんがベース音で素晴らしく駆動する時間もある。最後は、ヴァイオリンが濁りと軋みを引き受け、静かさも策動も吸収した。

演奏後に本人が口にしたことだが、ロジャーさんは齋藤徹さんに捧げるプレイをしていたのだった。バスドラムをほとんど使わなかったのは、それゆえかもしれなかった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●ロジャー・ターナー
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
ロジャー・ターナー+広瀬淳二+内橋和久@公園通りクラシックス(2017年)
ロジャー・ターナー+今井和雄@Bar Isshee(2017年)
蓮見令麻@新宿ピットイン(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
ドネダ+ラッセル+ターナー『The Cigar That Talks』(2009年)
フィル・ミントン+ロジャー・ターナー『drainage』(1998、2002年)

●喜多直毅
ハインツ・ガイザー・アンサンブル5@渋谷公園通りクラシックス(2019年)
喜多直毅+西嶋徹『L’Esprit de l’Enka』(JazzTokyo)(-2019年)
宅Shoomy朱美+北田学+鈴木ちほ+喜多直毅+西嶋徹@なってるハウス(2019年)
喜多直毅+元井美智子+フローリアン・ヴァルター@松本弦楽器(2019年)
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
喜多直毅+翠川敬基+角正之@アトリエ第Q藝術(2019年)
熊谷博子『作兵衛さんと日本を掘る』(2018年)
喜多直毅クアルテット「文豪」@公園通りクラシックス(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
ファドも計画@in F(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
喜多直毅+マクイーン時田深山@松本弦楽器(2017年)
黒田京子+喜多直毅@中野Sweet Rain(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
喜多直毅クアルテット@求道会館(2017年)
ハインツ・ガイザー+ゲリーノ・マッツォーラ+喜多直毅@渋谷公園通りクラシックス(2017年)
喜多直毅クアルテット@幡ヶ谷アスピアホール(JazzTokyo)(2017年)
喜多直毅・西嶋徹デュオ@代々木・松本弦楽器(2017年)
喜多直毅+田中信正『Contigo en La Distancia』(2016年)
喜多直毅 Violin Monologue @代々木・松本弦楽器(2016年)
喜多直毅+黒田京子@雑司が谷エル・チョクロ(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年)http://www.jazztokyo.com/best_cd_2015a/best_live_2015_local_06.html(「JazzTokyo」での2015年ベスト)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
喜多直毅+黒田京子『愛の讃歌』(2014年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
寺田町の映像『風が吹いてて光があって』(2011-12年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年) 

●内橋和久
サインホ・ナムチラック+内橋和久@八丁堀ハウル(2019年)
内橋和久+サーデット・テュルキョズ@Bar Isshee(2018年)
ユーラシアンオペラ東京2018(Incredible sound vision of Eurasia in Tokyo)@スーパーデラックス(2018年)
ロジャー・ターナー+広瀬淳二+内橋和久@公園通りクラシックス(2017年)
U9(高橋悠治+内橋和久)@新宿ピットイン(2017年)


川島誠+クリスティアン・メオス・スヴェンセン@東北沢OTOOTO

2019-12-05 07:58:15 | アヴァンギャルド・ジャズ

東北沢OTOOTO(2019/12/1)。

Makoto Kawashima 川島誠 (as)
Christian Meaas Svendsen (b)

フローリアン・ヴァルターの紹介で、クリスティアン・メオス・スヴェンセンから来日するけど何かとの連絡があった。この極めて強度が高いベーシストとの手合わせを考えた結果は川島誠だった。川島さんの希望もあり、長めの1セットを行うこととなった。

クリスティアンは手も足も使い、弓も3本使い、そのために口も使い、フライトベースと格闘する。それに加えての倍音。発せられる複数の声はまるで千手観音のように感じられる。しかも千手のひとつひとつは微細に揺れ捕捉できない。実にユニークなプレイヤーだ。

川島誠もまた複数の声を発する。クリスティアンとは違い発生源はひとつである。吹き方に作為的な変化はみえない。ときに想像を超えて弱弱しくもあり、ときに化け物のように咆哮し、つねに死との共存を強く意識させる音である。これがどこにいくか読めるわけもなかった。そして50分くらいが経って、(文字通り)精根尽きたようになって命の種を吐き出した。

だが終わってから、川島さんは「そのあともう1歩踏み込みたかった」と言った。そうなったときに示される世界とはどんなものだろう。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4

●川島誠
ピーター・コロヴォス+川島誠+内田静男+山㟁直人+橋本孝之@千駄木Bar Isshee(2019年)
『今・ここ・私。ドイツ×日本 2019/即興パフォーマンス in いずるば』(2019年)
川島誠インタビュー(JazzTokyo)(2019年)
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
マーティン・エスカランテ、川島誠、UH@千駄木Bar Isshee(2019年)
川島誠@白楽Bitches Brew(2019年)
タリバム!featuring 川島誠&KみかるMICO『Live in Japan / Cell Phone Bootleg』(2019年)
フローリアン・ヴァルター+直江実樹+橋本孝之+川島誠@東北沢OTOOTO(2018年)
照内央晴+川島誠@山猫軒(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
川島誠@川越駅陸橋(2017年)
むらさきの色に心はあらねども深くぞ人を思ひそめつる(Albedo Gravitas、Kみかる みこ÷川島誠)@大久保ひかりのうま(2017年)
#167 【日米先鋭音楽家対談】クリス・ピッツィオコス×美川俊治×橋本孝之×川島誠(2017年)
川島誠『Dialogue』(JazzTokyo)(2017年)
Psychedelic Speed Freaks/生悦住英夫氏追悼ライヴ@スーパーデラックス(2017年)
川島誠『you also here』(2016-18年)
川島誠+西沢直人『浜千鳥』(-2016年)
川島誠『HOMOSACER』(-2015年) 


『今・ここ・私。ドイツ×日本 2019/即興パフォーマンス in いずるば』(JazzTokyo)

2019-12-05 07:51:38 | アヴァンギャルド・ジャズ

JazzTokyo誌に、『今・ここ・私。ドイツ×日本 2019/即興パフォーマンス in いずるば』(2019/11/4)のレビューを寄稿した。

>> #1114 今・ここ・私。ドイツ×日本 2019/即興パフォーマンス in いずるば

矢萩竜太郎 Ryotaro Yahagi (dance)
川島誠 Makoto Kawashima (as)
鈴木ちほ Chiho Suzuki (bandoneon)
マクイーン時田深山 Miyama McQueen-Tokita (箏)
ヤシャ・フィーシュテート Jascha Viehstädt (dance)
ハナ・クレブス Hannah Krebs (dance)
カール・ルンメル Karl Rummel (dance)
皆藤千香子 Chikako Kaido (企画、構成、dance)

●皆藤千香子
徹さんとすごす会 -齋藤徹のメメント・モリ-(2019年)
『Black is the color, None is the number』(2019年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)


慎改康之『ミシェル・フーコー』

2019-12-04 08:06:38 | 思想・文学

慎改康之『ミシェル・フーコー ― 自己から抜け出すための哲学』(岩波新書、2019年)を読む。

『知の考古学』(1969年)は一種のポジティヴィスムの企てであったという。なるほど、アーカイヴというものがどのような構造下にあり歴史の要素間がどのような関係にあるか、ということでは決してなく、どのような語りのもとにアーカイヴが形作られていったか、ということだ。すなわちそれは「正史」に疑いの目を向ける「考古学」であり、人間従属への抗いの成果であった。言説は常にすべてが傍流であるはずのものだ。

フーコーは、アーカイヴや知の体系が、人間の魂のあり方までをからめとろうとした系譜学を、『監獄の誕生』(1975年)において示してみせる。そして最後の仕事であるセクシュアリティの研究において、人間の自己認識のありようを古代にまで遡り探求しようとした。

現代のスマホという記録デバイスとネットワークのシステムが、常に同時多発的なアーカイヴ化を実現させているのだとして、そして言説どころかナマのモニタリング結果のすべてが傍流に過ぎないことが誰の目にも可視化されているのだとして、ではフーコーはこれについて人間従属を見出したか、あるいはそれへの抗いを見出したか。

●ミシェル・フーコー
ミシェル・フーコー『性の歴史Ⅱ 快楽の活用』(1984年)
ミシェル・フーコー『性の歴史Ⅰ 知への意志』(1979年)
ミシェル・フーコー『監獄の誕生』(1975年)
ミシェル・フーコー『ピエール・リヴィエール』(1973年)
ミシェル・フーコー『言説の領界』(1971年)
ミシェル・フーコー『マネの絵画』(1971年講演)

ミシェル・フーコー『わたしは花火師です』(1970年代)
ミシェル・フーコー『知の考古学』(1969年)
ミシェル・フーコー『狂気の歴史』(1961年)
ミシェル・フーコー『コレクション4 権力・監禁』
重田園江『ミシェル・フーコー』
桜井哲夫『フーコー 知と権力』
ジル・ドゥルーズ『フーコー』
ルネ・アリオ『私、ピエール・リヴィエールは母と妹と弟を殺害した』
二コラ・フィリベール『かつて、ノルマンディーで』
ハミッド・ダバシ『ポスト・オリエンタリズム』
フランソワ・キュセ『How the World Swung to the Right』


四方田犬彦『ブルース・リー』

2019-12-03 08:11:49 | アート・映画

四方田犬彦『ブルース・リー 李小龍の栄光と孤独』(ちくま文庫、原著2005年)。

李小龍はどこにも帰属できない人だった。香港ではドイツ人の血が混じっているからという理由で功夫道場への入門を取り消されかけ、ハリウッドではあまりに中国人らしく見えるという理由で活躍できなかった。

そのことと関係するのだろうか、かれが開拓した功夫の世界は、脳と各器官という権力構造から身体を解放するところに理想を求めた。それはドゥルーズ=ガタリのいう「器官なき身体」と「プラトー」の概念に極めて近いという指摘には納得させられるものがある。

かれにとっての香港とは、多くの映画人が描いたような中国大陸との関わりには無縁だった。その点において、マイケル・ホイの『Mr. Boo!』シリーズとの比較がなされていて興味深い。かれは海を視ていたディアスポラだったのだ。そしてそれゆえのナショナリズムであり、また、アメリカやパレスチナにおいて異議申し立てを行うエスニック集団・マイノリティ集団が李小龍のフィルムにシンパシーを抱いたこともわかる。

じつにすぐれた評伝だ。

●参照
四方田犬彦『ニューヨークより不思議』
四方田犬彦『マルクスの三つの顔』
四方田犬彦・晏[女尼]編『ポスト満洲映画論』
四方田犬彦『ソウルの風景』
四方田犬彦『星とともに走る』
ブルース・リー『ドラゴンへの道』『死亡遊戯』『死亡の塔』
ロバート・クローズ『燃えよドラゴン』


広瀬淳二+カル・ライアル+クリスティアン・メオス・スヴェンセン+ダレン・ムーア@下北沢Apollo

2019-12-01 12:01:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のApollo(2019/11/30)。

Junji Hirose 広瀬淳二 (ts)
Cal Lyall (g)
Christian Meaas Svendsen (b)
Darren Moore (ds)

ノルウェーから再来日したクリスティアン・メオス・スヴェンセンは、今回はほとんどヴァケイションであり、ギグは2回だけである(この日と、今日のOTOOTO)。それにしても良いメンバーである。

ファーストセット、セカンドセットともに、皆が擦音をコアにサウンドの展開を図るという形。ダレン・ムーアはシンバルを擦り、クリスティアンも楽器の音を確かめるように撫ではじめる。やがて全員とも持てるエネルギーを全開にしてゆくのだが、それが凄まじく、インプロもフリージャズも何とでも呼んでくれというようなものだ。

広瀬さんの上から下への往還はいつもながら超一級であり、高音のフラジオで攻めまくる時間も、発泡スチロールを仲間にした拡張の時間もあった。カル・ライアルはポケットにびしびしと入ってくる。ダレンさんもあらゆる技を惜しみなく使う。そしてクリスティアンは、三本の弓を同時に使い(口で固定したりもする)、さらに喉歌も混ぜてくる。これにより複数の声を表現するのであり、かなり独創性が高い。それだけでなく4人の声が交代しあった。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●広瀬淳二
815展でのパフォーマンス(矢部優子、広瀬淳二、池田陽子、渡辺隆雄、遠藤昭)@好文画廊(2019年)
広瀬淳二+さがゆき@なってるハウス(2019年)
クレイグ・ペデルセン+中村としまる、エリザベス・ミラー+広瀬淳二@Ftarri(2018年)
広瀬淳二『No-Instrument Air Noise』(2017年)
ブライアン・アレン+広瀬淳二+ダレン・ムーア@Ftarri(2018年)
ロジャー・ターナー+広瀬淳二+内橋和久@公園通りクラシックス(2017年)
クリス・ピッツィオコス+吉田達也+広瀬淳二+JOJO広重+スガダイロー@秋葉原GOODMAN(2017年)
広瀬淳二+今井和雄@なってるハウス(2017年)
広瀬淳二+中村としまる+ダレン・ムーア@Ftarri(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
広瀬淳二『SSI-5』(2014年)
広瀬淳二+大沼志朗@七針(2012年)
広瀬淳二『the elements』(2009-10年)

●カル・ライアル
Signals Down@落合soup(2019年)
Kiyasu Orchestra Concert@阿佐ヶ谷天(2017年)

●ダレン・ムーア
ブライアン・アレン+広瀬淳二+ダレン・ムーア@Ftarri(2018年)
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)
サイモン・ナバトフ@新宿ピットイン(2017年)
広瀬淳二+中村としまる+ダレン・ムーア@Ftarri(2017年)
Kiyasu Orchestra Concert@阿佐ヶ谷天(2017年)


松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン

2019-12-01 11:04:35 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットイン昼の部(2019/11/30)。

Koichi Matsukaze 松風鉱一(as, ts, fl)
Takayuki Kato 加藤崇之(g)
Hiroaki Mizutani 水谷浩章(b)
Akira Sotoyama 外山明(ds)
Mikio Ishida 石田幹雄(p)

意外にも抑制された立ち上がりはアンビエントな雰囲気もある。しかし各メンバーの正体はすぐに露わになる。「Outside」でのずっと囁いているようなアルトは実に松風さんらしい。それが終わったあとのペキペキのオルガンのようなギターには笑ってしまった。加藤さんは救急車のサイレンのような音も、ロックギターのような音も(「3.11」)、豪華にきらびやかな音も出す。さすがである。

また「3.11」ではギターソロが終わるや否や、エネルギーが移行したかのように、石田さんが火のついたようなソロを弾きまくる。そして皆が煽る煽る。ファーストセットはハチャメチャに5人が重なる「Kikikaikai」で締められた。

セカンドセットの「Hawk Song」における石田幹雄のピアノもまた見事であり、ちょっと板橋文夫の「Goodbye」を思わせる断片もあり、哀しく深いソロだった。ここでの擦れるテナーも、スティックで細かい打音を集めた外山さんのシンバルも素晴らしかった。もちろん一貫してサウンドを駆動するフレットレスベース。

最後はアルトでの「J・C・ナガセ」、アンコールはテナーでゆっくり目の「w.w.w.」。

Fuji X-E2、7artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●松風鉱一
渋大祭@川崎市東扇島東公園(2019年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
平田王子+渋谷毅『Luz Do Sol*やさしい雨』(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その2)
松風鉱一カルテット@西荻窪Clop Clop(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その1)
松風M.A.S.H. その3@なってるハウス(2018年)
今村祐司グループ@新宿ピットイン(2017年)
松風M.A.S.H. その2@なってるハウス(2017年)
松風M.A.S.H.@なってるハウス(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
松風鉱一@十条カフェスペース101(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
5年ぶりの松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)
松風鉱一『Good Nature』(1981年)
松風鉱一トリオ+大徳俊幸『Earth Mother』(1978年)
『生活向上委員会ライブ・イン・益田』(1976年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
森山威男『SMILE』、『Live at LOVELY』 
反対側の新宿ピットイン
くにおんジャズ、鳥飼否宇『密林』