近年、特定のミュージシャンの生涯を描いた映画作品が多いと思う。本作もその括りに入れられるかと思いきや、関係者へのインタビューを繋ぎ合わせ、BGMとして「カトバン」こと加藤和彦の楽曲を入れてゆくと言うスタイルで同列には語れないと思った。本作は故高橋幸宏の「もう少し評価されても良いんじゃないか」と言う思いから企画されたのだと言う。
「帰って来たヨッパライ」から音楽家としての歴史を辿ってゆく。フォークルからサディミカあたりが、一部リアルではないが自分が聞いていた頃。その後のプロデューサー的立ち位置での活動は直接知らなかったにしろ、作中で紹介される竹内まりあ等へぇーと思ったり。
アコースティックなフォークルからプログレッシブロックなサディミカへ、更にオーケストレーションなど成功に安住せず「同じことは二度やらない」人生をやり尽くしての自死だったか。音楽だけでなく料理は玄人はだし、膨大な読書量は作品に重みを付け、ファッションリーダーのセンスもピカイチ。要はミュージシャンの枠に留まらない文化人であったと言える。業界人を知る友人の話では、音楽誌の制作においても、加藤和彦と細野晴臣は別格の「重鎮」だったと言う。
懐かしかったのは本作中に流れる楽曲だけではなく、当時のステージ風景やオフショット、彼と共演した多くのアーティストの若かりし姿も。締めは高野寛と高田漣のギターを中心にきたやまおさむや坂崎幸之助など参加の「<a href="https://www.youtube.com/watch?v=r194K2-UGKE">あの素晴しい愛をもう一度~2024Ver.</a>」がしみじみ流れる。改めてトノバンの冥福を祈ろう。
2024年6月4日 川崎・チネチッタにて