本書はタイトルに惹かれて借りたのだけど、思っていたのと少し内容が違っていた。ま、それはそれで興味深い内容だったので、閉じずにそのまま読み続けた。そして、消化不良感が残った。
話の軸となっているのはベーシック・インカム、wikipediaには「ベーシックインカム(英: Basic Income, BI, Universal Basic Income, UBI)は、最低限所得保障の一種で、政府が全国民に対して、決められた額を定期的に預金口座に支給するという政策。」とある。生活保護と違うのは、全国民に対してというと点。夢物語に聞こえるが、小規模ながら海外で試験的に実施された例はある。
本書の内容はタイトルの通りで、 「お金のために働く必要がなくなったら」を「ベーシック・インカムが導入されたら」と読み替えたら意味が通る。が、それだと取っ付きにくいので平たく書いたのだろう。そして、この時点で既に自分には理解困難なのだった。所得は労働の対価ではない。所得は国から得られる。そして労働の対価はない。「ならば働く人間など居なくなるのではないか」と言う疑問への回答が延々と本書には綴られている。さて、どうだろうか。
所得を得るために(やりたくない)仕事をしなくて良いのだから、人はそれぞれがやりたいと思う仕事に就くようになるというのが、本書の主張に見える。生活のために働かなくて良いのだからと。それはそうかもしれない。だがそうであるならば、働かない人がいてもおかしくないだろう。人は皆、何かをせずには(働かずには)いられないと本書の執筆陣は思い込んでいるように感じられたが間違いだろうか。カネのためじゃない、世のため人のために働くというのは、現在の社会でもボランティアなどそうだろう。
一方、エッセンシャルワークであっても人がやりたくない仕事はどうなるのだろう。担い手がいなくなる業種が必ず出てくると思うが、それに対する回答は本書になかった。また、全国民一律給付と言うのは仮定の話であって、ライフステージに合わせ給付金額を変えることは必要だと思うが、そこは枝葉末節の部分なのか言及されていなかった。まずは簡素化したモデルで説明と言う事か。
本書は、ベーシック・インカムを導入すれば人々の暮らし方、生き方を変えられると言う筋立てで企図したのかもしれない。だがベーシック・インカムの概念や実現の具体案が引っ掛かり、とてもその先の社会変革まで考える気にはなれなかった。
2024年11月29日 時価より戻る電車にて読了
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