イタドリの仲間で伊豆諸島に分布する変種クラスのもの。海岸の崖や火山荒原などで見られ、いわゆる裸地に最初に進出する先駆植物として有名。普通のイタドリに比べ葉が厚ぼったく光沢がある。伊豆大島には普通のイタドリの生育を確認することが出来なかったからあるのかないのか不明である。
ところで、この仲間は園芸的・観照的な価値は全くないが、分布は面白い。越後にはイタドリの変種でケイタドリというのがある。葉の裏に微毛をもつ種で平地に普通にある。太平洋側の平地は全てイタドリで毛のないタイプである。ケイタドリはない。従って、毛のあるタイプとないタイプが太平洋側と日本海側に住み分けしていると考えるとすっきりとしたイメージになるのだが、越後を含めて近県の高山にはイタドリが生育していてケイタドリは無い。ところが、太平洋側は平地から高山までイタドリが連続的に生育するのといわれている。一方、越後では高山にはイタドリ、平地にはケイタドリという図式になるのだ。これをどう解釈したらいいのかいまだに妙案は浮かばない。
話は変わるが、もう一種オオイタドリという種があって、越後にはごく当たり前に存在する。この茎がイタドリ笛を作るのにいい素材で、子供たちとネイチャークラフトをするときによく使用する。
先日、緑の少年団の交流イベントがあり、その時の講師役で招集されたから、このイタドリ笛を一緒に作り合奏でもしようかと考え、事前に近くの山に行って調達した(イベント会場にもあるだろうが、不確かであるから前もって準備をした)。草薮から数本のイタドリを採取してきたところ、居合わせた方(地元の方ではないらしい)から注意を受けた。「ここは私有地だから採ってはダメだ」。法律的に反論する余地はないのだが、一瞬眼が点になった。子供と一緒に野遊びをする目的で、道路わきの藪の中にあるオオイタドリを数本採取してきた「だけ」なのにという思いと指摘されたこととのギャップがたまらない。
登山道などで歩きやすいようにと道を広げるために刈り払いが行われることがよくあるが、そのときに貴重な植物が問答無用に仮捨てられている方がよほど心の痛いことではないのか・・・。
自然は誰のものか。私的所有と公的なもの。一つ一つの価値に大きな違いがあるということ。それを見極める確かな知識を持つ必要性。大きな矛盾と問題点を突きつけられた感じで悶々とした心地である。