原題:『ペコロスの母に会いに行く』
監督:森崎東
脚本:阿久根知昭
撮影:浜田毅
出演:岩松了/赤木春恵/原田貴和子/加瀬亮/竹中直人/大和田健介/温水洋一
2013年/日本
ボケることで却って何か良いことがあるのだろうか?
オレオレ詐欺の電話にまつわるギャグや、主人公の岡野ゆういちのハゲ頭と、同じグループホーム(介護施設)に母親を預けている本田のカツラにまつわるギャグも秀逸だと思うが、同時に、ゆういちの父親の岡野さとるも本田の父親もアルコール依存症であり、その絶え間ない家庭内暴力が妻の認知症の原因になっているのかと想像すると居た堪らない気持ちにもなる。
ところでクライマックスにおいて、ゆういちの母親の岡野みつえが祭りの中で迷子になってしまい、体が弱いことに気がつかずに畑仕事を無理強いさせてしまい8歳の若さで病死させてしまった妹のたかよや、引越しして行った長崎市で原爆に遭い亡くなってしまった幼なじみのちえこや、散々苦労させられた夫のさとると幻想の中で再会するシーンがあり、その後、ゆういちが「ボケるとも悪か事ばかりじゃなかかもしれん」と悟るのであるが、みつえの幻想はみつえにしか見えていないはずで、認知症のおかげで幻想の甘美さに浸れたわけではないのであるから説得力は無く、オチの弱さは隠しようがない。