原題:『Planes』
監督:クレイ・ホール
脚本:ジェフリー・M・ハワード
出演:デイン・クック/ステイシー・キーチ/プリヤンカー・チョープラー/ブラッド・ギャレット
2013年/アメリカ
「ヴァージョンアップ」してしまう主人公について
かつて海軍の飛行隊ジョリー・レンチの飛行隊長を務めていたが、訓練飛行中に敵艦隊との交戦で同行した訓練生たちを全員失ったショックで飛ぶことができずにいたスキッパー・レイリーが、何故ダスティ・クロップホッパーたちに虚構の戦歴を語っていたのか、その心の闇が明かされないことは、本作が子供用に制作されたからとして許容されてもいいと思う。日本人の観点から捉えるならば本作に登場する日本機が「TSUBASA(翼)」や「SAKURA(桜)」と、ハリウッド映画としては珍しく真っ当な名前であることに感心してしまったのではあるが、致命的とも思える演出ミスを見逃すわけにはいかない。
主人公のダスティはもともとは田舎町の農場で働く農薬散布機である。農薬散布機が世界一周レースに出場しチャンピオンになることを目指しているから、みんなからバカにされ、しかしそれでも優勝するからこそ感動するはずなのである。ところがダスティは海中に墜落した後に、大胆に改造されて、最新鋭の戦闘機になってしまっている。確かにレースシーンの迫力は増すものの、農薬散布機が戦闘機に勝つからこそ感動するのであり、戦闘機が戦闘機に勝っても当たり前のレースでしかないのである。