原題:『カノジョは嘘を愛しすぎてる』
監督:小泉徳宏
脚本:吉田智子
撮影:柳田裕男
出演:佐藤健大原櫻子/三浦翔平/窪田正孝/水田航生/浅香航大/相武紗季/反町隆史
2013年/日本
「嘘」を愛せることで生まれる感動について
例えば、主人公の小笠原秋(アキ)と、高校生の時に「CRUDE PLAY」というバンドを一緒に結成したヴォーカルの坂口瞬が携帯電話で会話している内容に、突然、秋の家を訪れた彼らのプロデューサーである高樹総一郎が割り込んで口論するというような、あるいはアキが鼻歌で奏でていたメロディーをかなり離れていた場所から女子高生の小枝理子(リコ)が正確に聴き取って覚えてしまうというようなシュールで現実離れしたシーンには醒めてしまう。そのようなシーンを敢えて無視したとしても、例えば、ヘリコプターを巡るアキと残りのメンバーたちの認識の違いなどは、本作を観ただけではよく掴めない。バンドを売るために曲の内容を「エコとかエイズとか世界平和とか」大きなことテーマにする羽目に陥るのであるが、本来ならばアキは「大きな愛よりも、這いつくばるような小さな歌」を作りたいのであり、それが実際にメンバーたちが乗ってきたヘリコプターとアキが自分で操縦している模型のヘリコプターの対比で暗示されているのである。アキとリコが遭遇するシーンも違和感が残り、本作では理子の才能を知った秋が「一目惚れって信じますか?」と声をかけているように見えるが、原作ではたまたま自分のそばを通りかかったリコにいきなり声をかけている。ただ音楽と関係のない場所が欲しかっただけのアキの心情を勘案するのであるならば、原作の方が的確であろう。
残念ながら原作の良さを本作は上手く汲み取れていないのであるが、亀田誠治が提供したオリジナルの楽曲の良さと大原櫻子の素晴らしい歌声によってかろうじて観賞に耐えられるものになっている。もっとも本作がターゲットとしている女子高校生たちはけっこう泣いて観ていたから、厳しい評価を下す必要などなさそうなのであるが、彼女たちは「CRUDE PLAY」というバンド名がイギリスのロックバンド「Coldplay」から取られていることを知っているだろうか?