原題:『武士の献立』
監督:朝原雄三
脚本:柏田道夫/山室有紀子/朝原雄三
撮影:沖村志宏
出演:上戸彩/高良健吾/西田敏行/余貴美子/夏川結衣/緒形直人/成海璃子/柄本佑
2013年/日本
不妊なのか不能なのか
浅草の料亭の娘として生まれ、母親が亡くなる12歳まで料理を教えられていた主人公の春は料理の腕は天下一品であったが、気の強さが災いして1年で商家から離縁された過去を持ち、相変わらず、加賀藩六代藩主の前田吉徳の側室であるお貞の方に女中として仕えていた。
ある日、料理方である舟木伝内にその才能を見出され、次男の安信の嫁にと懇願されて春は2度目の結婚をすることになるのであるが、長男が急死してしまい、包丁侍として跡を継ぐことになった安信は、それまで武道に邁進しており、料理は苦手だった上に、23歳という若さで春より4つも年下だった。
ここからストーリーは春の叱咤激励による安信の出世物語へと展開していくが、私の興味は春と安信の夫婦関係にある。春が舟木家に嫁いだその日に、姑の舟木満は春に向かって孫を期待していると述べるのであるが、どうも安信は春との夫婦生活が感じられない。そもそも安信は幼なじみの佐代のことが好きで、佐代を巡って幼なじみの今井定之進と剣術の試合をして負けたために佐代は今井家に嫁いだのであるが、それでも安信は佐代のことが忘れられないようで、それが原因で安信は春と夫婦としての夜の営みがないようなのである。実際に、2人で料理の食材を探す旅に出た際に、足に血豆が出来るほど歩いてために疲れきって眠ってしまった春の寝姿を見ながら、安信は恐る恐る春の髪の毛を手で触れようとする。一方、春は、恩赦で佐代が戻ってきたことを知って、安信が佐代と結ばれるようにと家出をしてしまう。
結果的には、献身的な春の行動に感銘を受けた安信が春を見つけ出して本当に結ばれることになる。その後、舟木家が代々続いたというナレーションがあったから、安信と春には子どもが出来たのであろうし、旅の途中で、地蔵菩薩にお供えをして拝んでいるのだから、子どもの健やかな成長を祈願したのであろうが、子どもの顔は最後まで現れることはない。
どうもこの子供を巡る物語が不鮮明で、不妊なのか不能なのかはっきりしないところにストーリー全体の弱を感じてしまうのである。