原題:『Open Range』
監督:ケビン・コスナー
脚本:クレイグ・ストーパー
撮影:ジェームズ・ミューロー
出演:ロバート・デュヴァル/ケビン・コスナー/アネット・ベニング/マイケル・ガンボン
2003年/アメリカ
なかなか「最後」とはならない西部劇について
1882年にもなるとアメリカでさえ、定住者の増加により、自分の牧場を持たないままに草原から草原へと移動しながら牛を育てる「自由放牧(free-grazing)」の「開放牧場者(open-rangers)」は、自分たちの土地を荒らす嫌われ者として扱われているのであるが、主人公のブルーボネット・スピアマン(=ボス)は妻と子供をチフスで亡くし、チャーリー・ウェートは内戦で心を病んでおり、16歳の少年のバトンはメキシコ人の孤児など社会からドロップアウトした人々なのである。
定住者と「放浪者(vagrant/varmint)」との対決は正義と復讐を巡る葛藤が描かれることになる。その物語自体に問題はないように見えるのであるが、評価の高い銃撃シーンに私はかなりの違和感を覚えた。
クライマックスにおいて、ボスとチャーリーに向かってバクスターが3人の男たちを引き連れて対峙するのであるが、モーズに右腕を折られた男に対してチャーリーが「おまえがモーズを殺したのか」と問いかけながら、頭部目がけて銃撃して一発で仕留めてしまう。バクスターたちに銃撃戦になるという危機感が全く感じられないのであるが、さらに不思議なのは、結構、お互いに銃を撃ち合っているのであるが、撃ち放たれる銃弾の量に対する相手への命中率が異常に低いことで、ベッドから起き上がって現場に向かったバトンなどは絶対に撃ち殺されていなければならないはずなのであるが、奇跡的に生き残っている。
私は本作を「最後の西部劇」と呼びたい誘惑に駆られるのであるが、それは『許されざる者』(クリント・イーストウッド監督 1992年)が同様に呼ばれているような意味ではなく、まともに西部劇が撮られることはもう無くなるのであろうという郷愁の念からであるが、やはり相変わらず『ジャンゴ 繋がれざる者』(クエンティン・タランティーノ監督 2012年)のような佳作は撮られ続けており、才能というものは意外と絶えないものなのである。