原題:『楽隊のうさぎ』
監督:鈴木卓爾
脚本:大石三知子
撮影:戸田義久
出演:川崎航星/井手しあん/ニキ/鶴見紗綾/佐藤菜月/秋口響哉/井浦新/鈴木砂羽
2013年/日本
昨今の「ヌーヴェルヴァーグ」
本作の作風を今の観客はどのように受けとめるのだろうか? 例えば、同じ頃に上映されていた『女っ気なし』(ギヨーム・ブラック監督 2011年)を観るような観客ならば、このヌーヴェルヴァーグタッチの作風にそれほど違和感を持つことはないのであろうが、吹奏楽部の定期演奏会で演奏が完成するラストまでの「拙さ」を「みずみずしい」と捉えるだけの器量を持つ観客がどれほどいるのか興味深い。個人的に嫌いな作風ではないが、終始、同時録音の音響の処理が上手くいっておらず、かすかに響く雑音が耳障りだった。
ところで私が気になるのは主人公の奥田克久よりも、奥田をサッカー部に入部させることに失敗し、その上、サッカー部の上級生たちから泥棒扱いされていた奥田の同級生の方で、ラストに校門あたりで奥田に「おはよう」と声をかけられていた、その同級生の顔は映されることはなかったが、引っ込み思案の生徒よりも、せっかく入部した部活動に馴染めなかった生徒の方が気になってしまう。
着ぐるみのうさぎは最後まで生徒たちと交流を持つことはなく、どうせ具現化するならばもう少し具体的に物語に組み込んで欲しかった。