原題:『麦子さんと』
監督:吉田恵輔
脚本:吉田恵輔/仁志原了
撮影:志田貴之
出演:堀北真希/松田龍平/余貴美子/温水洋一/麻生祐未/ガダルカナル・タカ/ふせえり
2013年/日本
麦子さんと「赤いスイートピー」
人生の目標が定まらないのに元気だけは有り余っている娘の小岩麦子と、人生の終わりが近づくも、娘に心配をかけないように気丈に振る舞う母親の彩子の相性は2人の人生において一番大事な時期であるにも関わらず最悪なのだが、これは2人に限らない母と娘の普遍的な問題であろう。
吉田恵輔監督の前作、『ばしゃ馬さんとビッグマウス』(2013年)が佳作だったこともあって本作もかなり期待していたが、ストーリーそのものに驚かされるようなことはない。ただ自分と瓜二つだった母親が祭りで歌った松田聖子の「赤いスイートピー」を麦子が歌う時、男女の恋愛を歌っていた「赤いスイートピー」が母娘の歌に変換されるところが涙を誘うはずだったのであるが、麦子は上手く歌えない。そこに、亡くなってしまった母親との関係の修復が叶わない麦子の悔恨が感じられるのである。