MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『土竜の唄 香港狂騒曲』

2017-01-07 00:17:52 | goo映画レビュー

原題:『土竜の唄 香港狂騒曲』
監督:三池崇史
脚本:宮藤官九郎
撮影:北信康
出演:生田斗真/堤真一/岩城滉一/瑛太/古田新太/上地雄輔/菜々緒/本田翼/仲里依紗
2016年/日本

人身売買の是非について

 本作の主人公である菊川玲二を「日本のジャック・リーチャー」と見なすにはあまりにも若すぎるとは思うのだが、不本意ながら若い娘を救出する使命を帯びてしまうという点において物語の構造は同じといえるだろう。
 しかし『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』(エドワード・ズウィック監督 2016年)と本作の決定的な違いは、本作においては「人身売買の是非」というシャープなサブテーマが設定されているところにある。貧しい両親が娘を売って金銭を得ることで生活が安定し、娘は裕福な家庭で育てられ「お嬢様」になり誰も損をしないというチャイニーズマフィアの仙骨竜の理屈は親子の絆の問題はあるもののよくよく考えてみるならば意外と正論なのである。この「正論」は深く議論されないまま菊川玲二の活躍によって轟迦蓮は救出されるのであるが、却って数寄矢会会長の轟周宝や「クレイジーパピヨン」こと日浦匡也を延命させてしまうという皮肉が効いており、このようなコメディー的な要素も持つ物語の「深み」が宮藤官九郎の脚本にあって、堤幸彦監督の『RANMARU 神の舌を持つ男 鬼灯デスロード編』(2016年)にないものなのである。


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