MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『将軍家光の乱心 激突』

2017-01-20 00:25:36 | goo映画レビュー

原題:『将軍家光の乱心 激突』
監督:降旗康男
脚本:中島貞夫/松田寛夫
撮影:北坂清
出演:緒形拳/真矢武/織田裕二/長門裕之/京本政樹/松方弘樹/千葉真一/加納みゆき/二宮さよ子
1989年/日本

「ロック」が流れる時代劇について

 時代劇だと思って真面目に観賞していたら作品の冒頭からリアリズム無視の活劇で、それはそれで納得して観るとしても、例えば、江戸城へと向かう途中の竹千代たちが足尾近辺で捕らえられた場所に馬で駆け付けた伊庭庄左衛門たちが到着する直前に、竹千代たちを救出した石河刑部たちが牢屋がある構内を爆破する。

 家臣たちに逃げ道を全て塞ぐように命じた伊庭庄左衛門は何故か翌朝、石河刑部たちが逃げてくる先で一人で待っているのである。

 2人はクライマックスにおいて一騎打ちの勝負を始める。

 しかしわざわざ家の藁の屋根に登ってまでチャンバラを始める時、ついに笑いを禁じることができなくなった。
 おそらくアクションシーンは千葉真一が、竹千代がメインのシーンは降旗康男が演出を担ったと思われるが、この2人の監督の対照的な演出が上手くかみ合っていないように思うのであるが、例えば、千葉が出演していたテレビドラマ『柳生一族の陰謀』や『服部半蔵 影の軍団』のようなものとして割り切って観るならば悪くはない。

 春日太一は2017年2月2日号の週刊文春の「木曜邦画劇場」という連載で本作を取り上げている。春日は「幕府軍の強大さと、彼らから竹千代を守ろうとする刑部たちの想い。この二点が丁寧に描かれているのだ。だからこそ主人公たちの戦いに感情移入ができ、命がけのアクションが『決死の覚悟の逃亡劇』としてドラマ的必然性あるものになる。その結果、手に汗握る緊迫感とカタルシスが生まれた。そこが疎かだと『凄いことをやっているなあ』という他人事で終わってしまう。(p.111)」と指摘しているのであるが、既に書いた通り本作は降旗康男が監督なのであって、アクション監督の千葉真一との演出方法に齟齬があるはずなのだが、何故か春日は降旗に関して何も語っていない。春日は千葉とは「毎年数回のトークイベントをさせていただいて」という仲であり、批判することが難しい立場になってしまっている点を考慮したとしても、やはりダメなものはダメだと言わないと時代劇研究家として信用されなくなると思う。


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