MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『僕らのごはんは明日で待ってる』

2017-01-12 00:13:51 | goo映画レビュー

原題:『僕らのごはんは明日で待ってる』
監督:市井昌秀
脚本:市井昌秀
撮影:関将史
出演:中島裕翔/新木優子/美山加恋/岡山天音/片桐はいり/松原智恵子
2017年/日本

頭が良すぎる主人公の鈍感さについて

 主人公の葉山亮太と上村小春がデパートの屋上で有料の備え付け双眼鏡を覗きながら、釣り堀を営む老夫婦や違法駐車で婦人警官に反則切符を切られている男性や、砂場で『ぐりとぐらのおおそうじ』を手にしている男の子に話しかけてくる女の子に「あてレコ」をするシーンなどとてもチャーミングな演出だと思ったが、館内で笑いが起きなかった理由は、おそらく観客のほとんどが女子中高生でギャグが良く分からなかったからだと思う。
 しかし『疾風ロンド』(吉田照幸監督 2016年)においても指摘したことなのだが、一ヶ所だけ致命的なリアリティーに欠ける部分があるために本作は失敗していると思う。それは学校の図書館の全ての文庫本を読み終わって再び堀辰雄の『風立ちぬ』を読むほどの知性を持ち、兄を病気で失っている葉山亮太が、いくら普段はぼんやりしていておっちょこちょいであるとはいえ、上村小春が別れを告げた本当の理由になかなか気が付かないところである。市井昌秀監督の前作『箱入り息子の恋』(2013年)が良作だっただけに期待して観に行ったが、残念ながら主人公よりも観ている方が先に理由が分かってしまい葉山のあまりの鈍感さにすっかり冷めてしまった。


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