原題:『名も無い日』
監督:日々遊一
脚本:日々遊一
撮影:高岡ヒロオ
出演:永瀬正敏/金子ノブアキ/オダギリジョー/今井美樹/真木よう子/井上順
2021年/日本
脚本と演出の「格差」について
正直、ストーリーが全く掴めない。主人公の小野達也は写真家としてニューヨークを拠点に活動しており、弟の章人も東大を卒業後ハーバード大学へ留学するくらいのエリートだったのであるが、2016年の4月頃、実家に戻った達也は章人が新聞配達以外に家に一人で引きこもっている現場に遭遇することになる。しばらく一緒に暮らしたようで、達也は家を大掃除するのであるが、何故か捨てたものを章人はゴミ集積場から拾ってきて元に戻しているのである。章人は白内障を悪化させて右眼の視力を失ってしまっており、間違えることに対する強迫観念に囚われている。
ところがその後、達也が章人に対してどのように対処したのか描かれないまま章人が亡くなった2年後の現在が描かれているのである。弟に対して冷たすぎないだろうか?
このようにどれほど主人公が感傷に浸ろうが、全く同情できないのだが、映像そのものは悪くはないと思う。例えば、店の前で水を撒いている女性の前を達也が右側から歩いてくるのだが、左側から現れるのはゴミ収集車で、真ん中にいる女性の前で交錯するのである。
達也と章人(=ゴミ)の対立の緩衝材として登場するのが、岡崎紗絵が演じる稲葉奈々で彼女は土から陶器を作り出し、それは「ゴミ」から有益なものを生み出す営みなのである。そして達也もまた写真により「無」から「有」を生み出す実作者ではなかったか。
八木(中野英雄)の居酒屋で飲んでいる直子(大久保佳代子)がビールを同時に飲んで同時にグラスを置くところなど、とにかく映像に対する細かい配慮は文句のつけようがないのだから、もう少し脚本がこなれていれば良かったのにと思う。
gooニュース
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