MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『焼肉ドラゴン』

2019-02-08 00:57:32 | goo映画レビュー

原題:『焼肉ドラゴン』
監督:鄭義信
脚本:鄭義信
撮影:山崎裕
出演:真木よう子/井上真央/大泉洋/桜庭ななみ/大谷亮平/ハン・ドンギュ/キム・サンホ
2018年/日本

ストーリーに紛れた「奇妙な声」について

 1969年から1971年頃までの在日朝鮮人の厳しい生活が描かれているのだが、ギャグもなかなか冴えていて当時流行した小川ローザの「Oh! モーレツ」というキャッチコピーなども取り入れているのだが、観客の方がそのギャグをもはや憶えていない嫌いがある。
 金静花を前にして李哲男と尹大樹のマッコリの飲み比べは長回しの撮影で面白かったのであるが、出来れば静花によるオチまでワンシークエンスショットで撮るべきだったと思う。
 ところで本作には奇妙な演出がある。それはナレーションなのであるが、本作のナレーションは金龍吉と高英順の間に生まれた金時生で、有名私立中学に通っているのであるが、「キムチ」と罵られてイジメに遭い、学校に行っていなかった。それを知った父親は日本で生きる以上は転校させずに留年させることで時生に逞しくなって欲しいと願ったのではあるが、既に限界に達していた時生は橋から飛び降りて自殺してしまうのである。
 ところがラストにおいてもナレーションを担当しているのは死んだはずの時生なのである。この不気味な「恨み節」をどのように捉えればいいのだろうか。


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『がっこうぐらし!』

2019-02-07 00:56:18 | goo映画レビュー

原題:『がっこうぐらし!』
監督:柴田一成
脚本:柴田一成
撮影:吉沢和男
出演:阿部菜々実/長月翠/間島和奏/清原梨央/金子大地/おのののか
2019年/日本

ゾンビ映画における「リアリティー」について

 本作が何を目指しているのかよく分からなかった。主人公たちが「美少女戦士」としてゾンビと激しい戦闘を繰り広げるわけでもなく、あるいは『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(押井守監督 1984年)のような徹底したモラトリアムが描かれているわけでもない。
 だから本作は原作のファンか、あるいは主演している「ラストアイドル」と呼ばれるグループのメンバーのたちファンによってのみ楽しめるものなのかもしれないのだが、おのののかが演じた教師の佐倉慈が襲われた時期が混乱しているように感じた。ゾンビによって起こされた火災を消すために恵飛須沢胡桃、丈槍由紀、若狭悠里、直樹美紀と佐倉慈が現場に赴き、胡桃がゾンビの相手をしている間に、悠里と美紀が校内に、由紀と慈が校舎の外に逃げたはずなのだが、その後の展開を見ていると慈は美紀が登場する以前にゾンビに咬まれてゾンビと化しているのである。それとも由紀と逃げた慈は、由紀が見ていた幻想だったのだろうか。あれだけ校内や校庭をうろうろしていたゾンビの死体も彼女たちの卒業時期にはすべて片づけられており、彼女たちの後輩だった美紀が3人と一緒に卒業してしまったりとストーリーに芯がないように感じた。

ラストアイドル「愛しか武器がない」MV【映画『がっこうぐらし!』主題歌】


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『十二人の死にたい子どもたち』

2019-02-06 00:50:07 | goo映画レビュー

原題:『十二人の死にたい子どもたち』
監督:堤幸彦
脚本:倉持裕
撮影:斑目重友
出演:杉咲花/新田真剣佑/北村匠海/高杉真宙/黒島結菜/橋本環奈/吉川愛/萩原利久
    渕野右登/坂東龍汰/古川琴音/竹内愛紗
2019年/日本

面白そうで面白くない原因について

 安楽死を前提に廃病院に集まって来た未成年の子供たちが、身元不明の「死体」の存在を理由に自殺に反対した一人の参加者をきっかけに、やがて全員が自殺に反対することになるという展開は、その人数からしても『十二人の怒れる男』(シドニー・ルメット監督 1957年)にインスパイアされたものであるだろうが、ストーリーとしては予定調和な感じで捻りがありそうで無く、死にそうで死なず、面白い点を挙げるならば人気女優の秋川莉胡を演じた橋本環奈の自虐的な啖呵くらいであり、オチもサトシの「正義」に対するアンリの「悪意」が弱いと感じた。
 しかしなによりも問題なのは「ゼロバン」とされていた「死体」が実は死んでいなかったというストーリー展開で、さすがに人が死んでいるか死んでいないかはいくら極限状態であるとはいえすぐに分かりそうなものである。


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『七つの会議』

2019-02-05 21:40:30 | goo映画レビュー

原題:『七つの会議』
監督:福澤克雄
脚本:丑尾健太郎/李正美
撮影:西村康
出演:野村萬斎/香川照之/及川光博/片岡愛之助/藤森慎吾/朝倉あき/橋爪功/北大路欣也
2019年/日本

キャスティングの「濃厚さ」について

 本作が成功しているとするのならば、それは「男性」による穴に入れる硬質の「ネジ」と「女性」による穴が開いている柔らかい「ドーナッツ」の対照性と、ラストにおいて明らかになる「ネジ」の脆弱さと「ドーナッツ」の柔軟性による「下剋上」を際立たせたストーリーの巧みさ以上に「濃厚」なキャスティングの妙にあると思うのだが、せっかく主題歌として選ばれたボブ・ディランの「メイク・ユー・フィール・ラブ」が主人公の八角民夫の講釈でほとんど聴こえなかったので、ここに和訳しておこうと思う。

「Make You Feel My Love」Bob Dylan 日本語訳

雨が君の顔を叩きつけ
世界が君を批判しているのならば
君に僕の愛を伝えるために
僕は君を温かく抱きしめてあげられるよ

夕暮れとなって星が瞬き始めても
君の涙を拭ってくれる人が誰もいないのならば
君に僕の愛を伝えるために
僕は永遠に君を抱きしめてあげられるよ

君はまだ決心がつけられないでいるけれど
僕が君を誤解するようなことはありえない
僕たちが出会った瞬間から僕には分かっていたんだ
君の居場所が僕の心の中であることは間違いないってことを

空腹になり精神的にダメージを負い
大通りで這いつくばってでも僕は前に進む
君に僕の愛を伝えるために
僕は何でもするつもりなのだから

嵐が猛威をふるい波がうねり
「後悔」という高速道路に乗ったとしても
変化の風は絶えず激しく自由に吹いている
君はまだ僕のような人間を知らないだけなんだ

僕は君を幸せにしてあげられるだろうし
君の夢を叶えることもできるだろう
君に僕の愛を伝えるために
僕は何でもするつもりだし
君のためなら地の果てまでも行くつもりなんだ

Young boy impressed the judges Bob Dylan' song «Make you feel my love». The X Factor - TOP 100


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『蜘蛛の巣を払う女』

2019-02-04 00:36:46 | goo映画レビュー

原題:『The Girl in the Spider's Web』
監督:フェデ・アルバレス
脚本:フェデ・アルバレス/スティーヴン・ナイト/ジェイ・バス
撮影:ペドロ・ルケ
出演:クレア・フォイ/スベリル・グドナソン/シルヴィア・フークス/キース・スタンフィールド
2018年/イギリス・ドイツ・スウェーデン・カナダ・アメリカ

姉妹の絆の「脆さ」について

 主人公のリスベット・サランデルは「ファイヤー・フォール」と呼ばれる世界核攻撃プログラムの奪還をプログラマーのフラン・バルデルから依頼されるのだが、その先には「ザ・スパイダーズ」と呼ばれる国際犯罪シンジケートのトップだった彼女の父親のアレクサンダー・ザラチェンコと彼の後を継いだ妹のカミラ・サランデルがいた。つまり原題である「蜘蛛の巣の中の少女」とはカミラが張った罠にかかるリスベットを指しているのであるが、後半になってリスベットとカミラの実家である屋敷で繰り広げられる戦いにおいて、リスベットの相棒であるプラグが屋敷をコンピューターで完全にスキャンし、それを指針にアメリカ国家安全保障局の保安官であるエドウィン・ニーダムが援護射撃することでリスベットがカミラに「蜘蛛の巣」をかけ返す展開が上手いと思う。
 しかしストーリーに関しては納得できない部分がある。それは幼少の頃にリスベットが実家から逃げようと試みるシーンであるが、カミラは父親の側についてしまいリスベット一人が逃げることになり、カミラはその後父親から虐待されることになるのである。ラストにおいて「何故助けに来てくれなかったのか?」問うカミラに対してリスベットは「あなたは父親の方へ行ったから」と答える。それは正論だとしてもカミラがどのような憂き目に遭うか分かっているのだからやはりリスベットは姉として妹のカミラを助けに行くべきだったのではないだろうか。


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『ミスター・ガラス』

2019-02-03 00:56:37 | goo映画レビュー

原題:『Glass』
監督:M・ナイト・シャマラン
脚本:M・ナイト・シャマラン
撮影:マイケル・ジオラキス
出演:ブルース・ウィリス/ジェームズ・マカヴォイ/サミュエル・L・ジャクソン/サラ・ポールソン
2019年/アメリカ

時代に取り残された映画監督の感性について

 M・ナイト・シャマラン監督の『アンブレイカブル』(2000年)と『スプリット』(2017年)のデヴィッド・ダン、イライジャ・プライス(=ミスター・ガラス)、ケビン・ウェンデル・クラム(=群れ)という主要キャラクターを登場させ、精神科医のエリー・ステイプルと対決させることで、コミックなどに登場するスーパーヒーローの存在そのものを問うスリリングなストーリーを途中まで楽しめたのであるが、ラストのオチは失敗していると思う。
 エリー・ステイプル医師の裏を突いて、ガラスは監視カメラに映された自分たちが超能力を発揮している様子をネットに流すことに成功するのであるが、あの程度の超能力であるならば今ではCGでいくらでも捏造できるもので、世間が騒ぐことはあり得ないのである。シャマラン監督の感性が時代に追いついていないと思う。
 ガラスがケビンに襲わせるつもりでいた新築の「オオサカ・タワー」の名前の由来は、言うまでもなく大坂なおみの活躍によるものである。


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宇宙戦艦ヤマトと「氷の海」

2019-02-02 00:59:04 | 美術

 先週の『アートステージ』を見ていたら、カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ(Caspar David Friedrich)の「氷の海(The Sea of Ice/Das Eismeer)」(1823-1824年)が紹介されていて、どこかで見たような絵だと思っていたら、『宇宙戦艦ヤマト』の冒頭で地中に埋もれているヤマトのイメージに似ていると思って、シリーズを通して検証してみたが、偶然似ているだけのようだった。

「宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟」本編冒頭映像


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朝日新聞と毎日新聞の違い

2019-02-01 00:52:27 | Weblog

朝日新聞、写真集から盗用 北海道面連載を取り消し
朝日記者、道新出版物から引き写し 事実上の盗用と認定

 2019年1月30日付毎日新聞夕刊の「ナビゲート 2019」というコラムで科学ライターの粥川準二が、早野龍五・東京大学名誉教授らが福島県伊達市の住民の被爆を分析した論文において、本人の同意を得ていないデータが使われていたという問題を巡る朝日新聞と毎日新聞の記事の書かれ方の違いを指摘している。
 「線量を3分の1に過小評価していた」ことに関して毎日新聞は「実数」を示しておらず、さらに雑誌名も書かれていないために詳細なチェックができないのであるが、朝日新聞では「18ミリシーベルト」と示されており、さらに雑誌名も書かれているということで朝日新聞の情報の扱い方を評価している。
 このように朝日新聞を褒めようとした矢先に朝日新聞の盗用事件が明るみになった。朝日新聞はたまにこのような失態をやらかす。


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