私は給食で鯨肉を食べた最後の世代に当たる。昭和50年代の初めは週に2回は鯨がメインディッシュだった。質の悪い鯨を使っていたせいだろう。硬くて歯の間にスジが挟まることしばしで、子どもの間ではひどく不評だった。
本当に美味しい鯨を食べたのはかなり後のことだった。牛肉の代わりに鯨を使ったはりはり鍋は今や高級品でそうそう口にする機会はないが、大好きである。
たまたま小さな魚屋さんで見つけて栄さんが買い求めた鯨ベーコンは感動の味だった。それまで食べていたのはパラフィン紙のように薄くスライスした臭いゴムのような感じで、雲泥の差だった。
噛めば噛むほどに肉汁と脂が舌をやさしく愛撫するが如くだった。ベーコンという表現に偽りなしで豚を凌駕していた。店主からキャベツの千切りをベーコンで巻いて芥子酢醤油で食すとよいと教わった。これならば確かにくどさを感じない。旅はするものだとつくづく思ったのである。
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