壜ビールを頼んで乾杯し、先付けをつまむ。その内の一つが白身の握りだった。酒飲みの心を読んだかのような出し方が憎い。この店はこれで三度目であるが、夜は初めてだった。
昼の定食を食べて、華のある料理を作る人だと思った。客の注文ににこやかに、しかもはっきりと「はい」と答える花板を私は他に知らない。日本料理の狭苦しい枠にとらわれない姿勢を高く評価している。
「この前、出張で富山に行って2泊したんだが、料理はうまいね」
「だろう。瀬戸内で育った人間って京都の料理が一番と思っているのが多いが、大間違いなんだよ。金沢とか富山といった北陸は西日本料理文化圏と見ていい。実際にレベルは非常に高い」
「びっくりしたよ。大物はおいしいね。それから何か違うんだ」
「品があるだろ。陰湿な都と違ってw」
「アハハ。そう品があるよ」
「北陸は甲殻類のうまさでも群を抜く。寿司屋に行ったら分かる。築地よりもいいネタをたくさん置いてる、しかも安い」
「金沢までは足をのばせなかったけど。行ってみたいな」
「ぜひ行くべきだよ。京都なんかに銭を落とすくらいならな」
「いつもボロクソやなw」
「ほんまのことだから刺されんのだ」

小鰯の刺身、タコぴり辛焼き、揚げ芋の蟹あんかけ、酢の物を食べた。どれも上品な味で、焼酎のロックが進んだ。
歓楽街は車でいっぱいだった。平和大通りまで出てタクシーを停め、駅に向かった。年老いた運転手が、共●会の事務所の話をしたがるのには往生した(苦笑)
