青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

函嶺走駆

2020年07月27日 17時00分00秒 | 箱根登山鉄道

(風を感じて@出山信号場~大平台駅間)

雨に彩られた四連休、瑞々しく水分を吸い込んだ山霧むせぶ函嶺の森を縫うように走る登山電車。伝統のオレンジバーミリオンの車体が雨に濡れて、山の翠と見事なまでのマリアージュを見せてくれました。ツリカケの音は消えてしまいましたが、あのフルートのような独特の高いフランジの音とモーター音のアンサンブルに酔いしれるのも、窓の開くモハ1モハ2の醍醐味。

それにしてもよく降る雨である。気象の専門家の話では、関東の梅雨明けは8月4日以降になるらしい。7日の立秋を過ぎてしまえば、「梅雨明け」としては公式に記録されないそうで。本当ならば開け放した窓から入って来る山の嵐気を大きく吸い込みたいところでありますが、マスクをせずに箱根の空気を吸える日が、早く来ることを願ってやみません。

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その先へ、光の方へ

2020年07月23日 22時00分00秒 | 箱根登山鉄道

(お待たせしました@彫刻の森駅)

箱根登山鉄道が再開、9カ月ぶり昨年の台風19号で被災(gooニュース)

本日7月23日の始発から、箱根登山鉄道が全線で運転を再開しました。台風19号被害から約9ヶ月、懸命の復旧が結実した瞬間でもあります。平成23年以降の箱根は、大涌谷付近の群発地震や平成25年の大涌谷の小噴火による火山警戒レベルの度重なる引き上げ、そして台風19号による大雨災害と今までなかったレベルの未曽有の災難が続いていました。そして追い打ちをかけるように襲い掛かった世界的なコロナ禍。全国的な観光需要の喪失と、インバウンド需要の途絶によって、観光産業の景況感は最悪を超えた状況となっていますが、登山電車の復旧は、そんな箱根に久々に届いた明るい話題と言えます。

5月の試運転からその動向を追い掛けていた登山電車の晴れの舞台ですし、今朝の全線運転再開の場に立ち会いたい、という気がない訳でもなかったんですが、どうにも新型コロナウイルスの感染再拡大が懸念されるこの状況で、やれGoToキャンペーンだ四連休だと浮かれ気分で箱根に行く気にはなり切れませんでした。まあぼちぼち行こうと思うけど、わざわざ密になりやすい初日に行く事もあるまい・・・と朝寝を決め込んで、昼のニュースで運転再開の映像を眺めていました。つか、最近平日の仕事が激務過ぎて朝早く起きる気力がなかったというのもある(笑)。

ともあれ、止まっていた時を動かす箱根登山鉄道の新たな船出の日。
復旧に関わった全ての方々の奮闘努力に敬意を表すとともに、その指差す先に光のあらんことを。

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静寂の宮ノ下

2020年07月21日 17時00分00秒 | 箱根登山鉄道

(静けさの駅前通り@宮ノ下駅)

国道1号線から150m程度坂道を上がった場所にある宮ノ下の駅。「あじさい坂通り」と名付けられた駅前通りには、小洒落た喫茶店や雑貨屋が並んでいます。いつもなら温泉客がそぞろ歩く坂道ですが、登山電車が走っていないとひっそりとしたもの。宮ノ下の温泉街は、ランドマークとして箱根随一の知名度を誇る富士屋ホテルが長期リニューアル工事に入っていたのですが、登山電車の全線復旧と時を合わせるような形で、この7月15日にグランドオープンしています。電車の運行再開とともに、賑わいが戻る事を願ってやまない宮ノ下の駅です。

駅の入口は立ち入り禁止のテープが張られていましたが、それでも構内踏切は電車の接近とともに律儀に警報音を鳴らして遮断器を降ろします。山を登るB2編成と交換する108-9のコンビ。きれいに塗装され磨かれた車体に、これまた塗装したてのピカピカの108の車体が映り込みます。

思えば、5月から始まった試運転は、日によって使用される車種に違いはあったようなのだけど、108-9が動かない日には当たりませんでした。本来なら2連のサンナナやヨンロクに増結用の単車としてくっつくのが108と109の役目ですが、あの台風の日に入生田にいた事で強羅封じ込めの難を逃れ、今回の試運転では主力として活躍しています。台風で流された線路の地固めに貢献したこの編成は、復旧に向けての陰の功労者かもしれません。いつの間にか新調された「試」の丸看を掲げて、今日も試運転に勤しみます。

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ワクワクが、帰ってきた。

2020年07月19日 10時00分00秒 | 箱根登山鉄道

(巡る緑の中を@強羅~彫刻の森間)

強羅と普段は流し撮りなどめったにやらない(そこまで技量がないしね)私ではありますが、珍しく流し撮り・・・それも、回転流し撮りなんぞをやってみました。回転流し撮りって何ぞや?って感じなんですけど、カメラを左右に流す従来の流し撮りではなく、文字通りカメラを回転させてレンズの円周部分に動く被写体を乗っけるという変化球。青紅葉回る世界の中で、登山電車をそっと映し止めてみましたと、そんな感じかな。もっと周辺部を流したかったんですけど、ヘタレなのでそこまでSSを落とせませんでした(笑)。

彫刻の森と強羅の間にある地獄沢の鉄橋付近を行く108-9。「地獄沢」と言われると名前が恐ろしいのですが、早雲山の爆裂噴火口である早雲地獄から流れて来る沢筋である事に因んでいるのだと思われます。ここが二ノ平と強羅の境界に当たり、湯本から登って来た登山電車は大きく右カーブをして、強羅の温泉街を右に見ながら強羅の駅へラストスパートをかけます。「又のおいでをおまちします 強羅温泉郷」の看板、強羅花壇や強羅環翠楼、雪月花などの高級旅館を擁する強羅温泉郷ですが、強羅付近で湧くナトリウム系の透明な源泉を使った宿と、大涌谷の噴気地帯で火山ガスに水を通した蒸気造成泉(薄濁りの硫黄泉)を引き湯している宿と、二種類の源泉の宿があります。ケーブルカーを挟んで北側が大涌谷の引き湯、南側に本来の強羅温泉の源泉を使った宿が多いように思います。

箱根登山電車 全線運転再開「ワクワクが、帰ってきた。」【フルバージョン】

そうそう、23日に迫った登山電車の全線運行再開に合わせて、小田急グループがこんなYoutubeムービーを作っています。被災から復旧に向けて、箱根旅行を楽しみにしていた男の子の目線からのストーリー仕立ての映像ですが、こういったプロモーションにも、箱根ゴールデンコースの再開に合わせた箱根振興への思いが伝わって来ますね。本来なら登山電車の復旧と「Go Toキャンペーン」とやらで箱根も賑わうはずだったのでしょうが、感染の再拡大に伴って東京からの大っぴらな客入れは望めなさそう・・・ひとまず、神奈川県内の観光客を中心に、ささやかに盛り上がりたいところです。

そして、このYoutubeムービーに使われたのが108-9号のコンビ。ベルニナでも、サンモリッツでも、最新型のアレグラでもなくこの車両が使われたという事が、いかにモハ1・2の2形式が登山電車を端的に表すイメージリーダーであったか、という事が分かります。既に廃車が発表されていますが、1ユニットくらいは動態保存を・・・なんて思うのだけど、それをするには入生田の車庫は狭すぎますかね。

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アングルチャレンジャー

2020年07月17日 17時00分00秒 | 箱根登山鉄道

(伐採地を行く@宮ノ下~仙人台信号場間)

今までは箱根の山の鬱蒼とした森に隠れ、駅間の撮影場所は限られていた箱根登山鉄道ですが、災害復旧工事のために、大きく伐採された場所から登山電車が見えるようになりました。場所で言うと仙人台信号場の宮ノ下側になりますでしょうか。もともとここには仙人台信号場へ行く作業用の道路があったのですが、大型の重機や資材を入れるため道路の拡幅が必要だったのでしょう。樹木の伐採、法面補強と新しい擁壁の作成が行われて、非常に見通しが良くなっています。試運転で湯本に下る108-9号。国道1号線を登るトラックとともに。

ズームリングを回して、寄りでもうワンショット。ユンボの置かれている奥がおそらく仙人台の信号場です。この撮影地は北側に開けた場所なので、光線で言えば午後向きでしょうか。ただ、登山電車の場合は「昼なお暗き」箱根の山道を登って行く電車なので、あんまり晴れてても木や山の陰で撮影しにくくなってしまう。登山電車を撮るのは曇りの日が一番いいと思いますね。

今回は撮影地のアングルとして消化できるかは置いといて、新しいポイントを開拓してみました。お次は大平台隧道の強羅側出口にある大沢橋梁付近。ここも台風の大雨によって土石流が発生し、大量の土砂が流れ込んだ場所です。崩れてしまった奥の斜面を補強するための鉄骨の足場が確認出来ます。だいぶ土砂は取り除かれて整地は進んでいるように見えますが、まだ復旧工事の途中と見えて、重機は置かれたままです。

崩落地の沢を下って行くベルニナB2編成。以前だったら木々の間にちらりと電車が見えるだけだった場所ですが、土石流で沢筋の木々がなぎ倒された結果、やはり見通しが良くなっています。理由が理由だけに手放しで褒められたもんじゃありませんが、未だ災害からの復旧工事中の現場と、復旧に向けての試運転のコラボレーションを一枚。大平台から仙人台の間は、大平台隧道を含め断続的な80パーミルの急勾配で、息を付く暇もない坂道が続いています。一応水平は固めて撮影しているんですが、真横から80パーミルを見るとこうなるのかって感じですねえ。一説によると、3両編成の登山電車が80パーミルの急勾配を走ると最前部と最後部に3mくらいの高低差が付くらしいが・・・

1000形電車の1両の長さ=14,660mm×3両=43,980mm(43.98m)
1000分の80の急勾配=80/1000=距離1mあたり高度は0.08m上昇
→0.08m×43.980m=3.5184m

ということで、80パーミルの急勾配を走ると、ベルニナでは計算上、最前部と最後部で約3.5mの高低差が付くことになる。3.5mの高さってーと普通の家の1階半くらいか。つくづく貫通路で全両繋がってなくて良かったなあと思うね。なんか物でも落したら大変なことになりそうだ(笑)。

 

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