青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

悲しい桜。

2022年04月03日 00時00分00秒 | 中央東線

(それでも春はやって来る@勝沼・甚六桜)

1ヶ月半もつらつらと富山の話を書き連ねていたのだが、だいたいが予約投稿だったので、ここに新しい記事を上げるのも何だか久しぶりの事になる。2月上旬の真冬の富山の写真から、場面はガラッと変わってすっかりこのブログではおなじみになった感のある勝沼の甚六桜。ここのところ毎年のように見に行くお気に入りの桜である。甲府盆地に春を告げる青空と桜を見ても、どうにも何だか気持ちがずっとザワザワしていて落ち着かないのは、彼の国の戦乱のせいか。まかり間違えば人類の存亡すら左右しかねないきな臭さと意味不明な侵略を企てる人間の愚かしさ、世の中で一番恐ろしいものは人間だという事実を改めて実感してしまうのである。

人間が争っても血を流しても、時間の流れの中で季節は巡り、花は咲く。
今年の桜は、何だか憂いを帯びた、悲しい桜です。

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桜梅桃李の春でした。

2021年04月22日 17時00分00秒 | 中央東線

(春空に映えて@勝沼甚六桜)

引き上げ線の桜を下から見上げる。ここの引き上げ線は、ブドウ畑の中であたかも古墳のようにこんもりとした丘状の地形を形成していますが、鉄道遺構と言うものも、時代が流れて行けば人の営みの中で作られた歴史的な建造物。何百年も後の人間が見たら、古墳と同じようなものとなるんでしょうね。半世紀を経て、勝沼の風景にすっかりと馴染んだ丘の桜。太陽昇り、すっかり晴れ上がった甲州の春空に今年も満開の花を咲かせています。

大きく大きく桜を入れて。E353は控えめに画角に配してみましたが、これでもピリリと存在感をアピールしてくるのがE353のパープル。たぶんこれをE351でやったら桜の色味に埋もれてしまうかもしれない。ここの桜が大きく育ち、たくさんの花を付けるようになったのはここ15年ほどの事。近くで撮影してたオジサマによると、正直国鉄時代はそう目立った撮影地でもなかったそうな。

私はこの菱山の道路から俯瞰する構図を「HDS(ハッピードリンクショップ)俯瞰」と勝手に呼んでいるのですが、桜だけではなくハナモモなんかも植えられていて、春の彩りには事欠かない撮影地です。あ、ハッピードリンクショップってなんやねんって言う人は勝手にググって下さい(笑)。山梨によく遊びに行く人・・・特にドライブとかツーリングが好きな人はお世話になっているんじゃなかろうかと思います。盆地を囲む碧い山並み、勝沼の春を踊る花々。盆地の底を染めるのは春日居の桃源郷か。桜梅桃李、なんて言葉がありますが、まさに甲州の春を言い表しているのではと思ってしまいますね。

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桜花咲き 紫電と愛でる 和の心

2021年04月20日 17時00分00秒 | 中央東線

(引き上げ線に咲く@勝沼甚六桜)

勝沼ぶどう郷駅には、駅がスイッチバックだった時代に、笹子峠への登りに向かう列車が助走を付けるための引き上げ線の跡地が残されています。駅前の旧ホームを中心として整備された甚六桜公園の他にも、こちらにも桜の木が植えられていて、春には素晴らしい景色を見せてくれます。駅から少し離れた場所にあるためここを訪れる人は少ないのですが、私はこの引き上げ線の桜が特に好き。築堤を覆うように桜が植えられていて、すっかり自然に還ったその廃線然とした佇まいがいい。

勝沼ぶどう郷(当時は勝沼)のスイッチバックが廃止されたのは昭和43年(1968年)の事で、桜が植えられたのは廃止後の事だそうですから、約50年を超える時が流れたことになります。ここが鉄道の敷地であったことを偲ばせる杭が立ち並ぶ引き上げ線の跡。雨に当たって少し散り始めの桜でしたが、回復して来た天候の中で実に美しい姿を今年も披露してくれました。

勝沼の駅は甲府盆地を見下ろす高台にありますが、引き上げ線は本線を見下ろすさらに高い位置にあって、満開の桜越しに盆地の風景と北アルプスが良く見えます。眼下には勝沼のブドウ畑が広がり、遠くの山梨市や春日居町方面は平地部分に桃の花のピンクが春霞の中でうっすらと見えて、甲州に春が来たことを実感させてくれます。

E351のスーパーあずさ、E257の特急かいじ、そして115系の普通列車。中央東線といえば長年そんなイメージではありましたが、平成26年から115系に替わって211系が、そして昨年春から特急列車もすべてE353系に統一され、全列車の指定席化が実施されました。そう言えば特急あずさは「スーパー」の冠もなくなっちゃったんですよね・・・E353、デザインとしても悪くないし全然いいんですけど、E351やE257、臨時で189系や215系なんかがバラエティ豊かに駆け回っていた少し前の東線の風景を知っているだけに、統一感の影で失われた多様性に思いを巡らせてしまうのは撮り鉄の性か。

E353のパープルは、先代のE351の淡いラベンダーのような色合いに比べて色味がハッキリとしていて、菖蒲のように鮮やかな印象を受けるのですが、これが「和」な感じを一層引き立てていて、日本の「和」を代表する桜の花と相性抜群。うっとりとするような春の甲州を、新鋭特急電車が駆け抜けていきます。

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少し寂しい春でした。

2021年04月17日 17時00分00秒 | 中央東線

(早過ぎた桜舞って@勝沼ぶどう郷駅)

いつもなら4月の1~2週目が見頃となるはずの勝沼の甚六桜、今年の春の桜前線の異様な速さで、ご多分に漏れず4月を待たずに満開となってしまいました。個人的に、ここの桜は関東甲信越で鉄道と合わせるには一番いい桜かなと。駅からのアクセスだったり、本数だったり、花付き、花色、アングル、どれを取っても平均値が高い。桜の時期、どこで撮ろうか・・・なんて皆さん色々迷うと思うのですけど、とりあえず迷うくらいなら甚六桜に来ちゃいなよって思ってる(笑)。今年もお酒はご法度ながら、変わらず咲き誇るは甲州の桜。駅前の公園に鎮座する、EF64の18号機とともに。かつては中央本線で客貨を問わずエース機関車として君臨していた国鉄世代の生粋の山男。前夜の雨に濡れ落ちた花弁の中で。

雨上がりの朝、公園の水溜まりにその姿を写すロクヨン。引退してここ勝沼にやって来たのが平成18年ですから、早くも15年の時が流れました。保存された当時は藍色がかった国鉄直流色を纏っていたものの、今となっては塗装も外板も傷みが目立ちます。部分的には修理もされているのでしょうけど、そのせいでガワがパッチワークになってしまっているのが気掛かり。なかなか屋根がない場所での鉄道車両の保存は難しいものがあるのでしょうが、現在クラウドファンディングが募られていて、再整備に向けての動きもあるそうです。

ちなみにこちらは、平成20年頃の甚六桜公園。13年前か。EF64も移設1年半程度で、まだまだピッカピカでした。確かこの時は新線の建設に伴って付け替えられた旧大日影トンネルが遊歩道として整備されたと聞いて、そこを歩きに行ったんだっけかな・・・大日影トンネルの遊歩道も、その後は漏水による劣化が著しく危険という事で通行止めになってしまって、そっから何の進展もないんだよなあ。それこそ碓氷峠旧線のような明治の廃隧道を散策出来るロマン溢れる遊歩道だっただけに、再開を期待しているのだけども・・・

あれから時は流れ。国鉄機らしく、側面に並ぶ通風用のルーバー。羽根の一つ一つがピンと魚の鱗のように逆立っていて、昭和の工業製品らしい造形美を醸し出しています。昭和から平成になると、工業製品のデザインってのはこのような突起物はなるべく避けて、表面は平滑に平滑にするのが良しとされる時代になって行ったように思う。ステンレス車のコルゲートなんかも、昭和の時代のクルマの方がゴツゴツして彫りが深く、それが得も言われぬ風合いを生み出していて好き。結局昭和贔屓。新しいものに馴染めない悪癖のなせる技か。

この18号機、新製配置から甲府機関区なのだそうで、そこから、立川・八王子・篠ノ井・JR貨物に移って篠ノ井・最後は塩尻で引退と一貫して中央本線、篠ノ井線系統に殉じたサラブレッド。身なりは褪せてもそこかしこから滲み出る山男の貫禄があります。ここに桜を見に来るたびに、あいさつ代わりに写真を撮って行くのだけど、本当ならこの時期はロクヨンの周りにもたくさんの花見客がいたはずなんだよなあ。余生を送るロクヨンに会いに来る人も少なく、今年は寂しい春だったかもしれませんな。

さくら祭りのぼんぼりだけが風に揺れていた、甚六桜公園。
お色直しをしたロクヨンゼロが、来年は満開の桜の下で見られますよう願ってやみません。

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復活の桜

2019年03月28日 21時45分30秒 | 中央東線

(桜、映えるね@勝沼ぶどう郷駅)

先週末頃からちらほらと咲き始めた桜ですが、以外に日中の気温が上がってこないせいで今シーズンは満開までにかなりの時間が掛かっているように思う。週末も気温が低く雨模様との残念な予報、今年は満開が晴れに当たらず休みに当たらずという完全に旬を逃すパティーンになりそうな予感がする。去年は咲いてから晴れベースが続いてよかったんだけどなあ。去年は青空で満開を迎えられた勝沼の甚六桜、関東とは少し時期をずらして満開になる桜なので、来週末辺りに満開になるのだろうか。

ちなみに、3月になってから正直ちょっと体調不良が続いてしまいカメラを持って外に出る気になれなかった。40を超えてからすっかり体力が衰えたような気がするのだが、だいぶ回復してきたので、今週末あたりからまた徐々に趣味を再開して行きたいと思います。
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