青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。写真はおおめ、文章はこいめ、コメントはすくなめ。

麦茶と湿気った歌舞伎揚げ

2008年09月08日 21時20分56秒 | 日常

    

最後の18きっぷをどう使おうか、と時刻表を読み読み迷ってる時間と言うのは楽しいものだ。
「何を盛り込み、何を切るか」と言う取捨選択は、車の旅も鉄道の旅も変わらないと思うんだけど、鉄道の方が自由度がない分ストイックな感じはします。今回は、夕方に横浜で用事があったからなおさらだったっすね。

今回はお手軽な位置にある割には乗ってなかった身延線を潰してみる事に。
関東近郊のローカル線はあらかた乗り尽くしたかな、と言う感もあったのだけどね。
身延線がまだだったのは、山梨好きだから車で沿線は何度も通ってたってのもあるのかな。

ガッツリ始発で出る訳でもなく、6時ちょい前の横浜線で出発し、八王子始発の中央本線松本行に乗換え。入線前から並んでいた壮年ハイカーとのボックス席争奪戦は見事に敗戦し(笑)、ドア横のロングシートで甲府まで。いつもはハンドルを握って走る甲州街道も、鉄道目線で見るとちょっと違った雰囲気であります。初狩駅のカーブっぷりにびっくり。車体傾きすぎ(笑)。
甲府駅に到着した後、身延線の富士行きが出るまで小一時間の空きがあったので、構内に停泊していたEF64機関車の初期型と後期型を眺めたりしながら過ごす。初期型は分厚いボディに大きなベンチレータと国鉄色がいかにも山男のイメージですねえ。対して後期型は塗装もあって非常にスマートだ。などとヲタ心を満載にしながらベンチに座る私の斜め前で一生懸命ダンスの練習をしていたおばちゃん2人組、謎過ぎ(笑)。
9:04甲府発・身延線普通列車富士行きはJR東海の313系3両編成。ローカル線と言えばボックス席に足を投げ出して、景色を楽しみながらのんびり缶コーヒーでも…と言うイメージなんだが、3両全てロングシートと言う効率優先のむごい仕打ちにいきなり打ちのめされる(笑)。しゃあないのでロングシートの隅っこによっかかって身延線の旅はスタートするのであります。
しかしながらこの313系、乗ってみればなかなか乗り心地がいい。東花輪までは甲府盆地の住宅街の中に短い間隔で小さな駅が続くのだが、キビキビと加速しピタッと止まる。最大加速に入れるとブーンと唸るモーター音もなかなか素敵です。市川大門と言う駅でホエールズを思い出したりしつつ、甲府盆地の南端である鰍沢口からは富士山の西麓を富士川が刻んだ谷沿いをくねりながら身延線は一気にローカル色を強める。下部温泉で少々の客が入れ替わった。一度行ったことあるけど、静かな温泉街ですよね。

    

塩之沢と言う山間の小駅で下車。勿論降りたのは私一人。こんな何もなさそうな駅で降りたのは、駅の真横に「塩之沢温泉」と言うマークがついていたのをツリマプで発見したからだ。甲府駅の待ち時間で携帯から旅館の番号を調べて電話。一応旅館らしいので何時くらいに行けばいいのか聞いてみたのだが、電話口に出て来たおばちゃんは「何時からって別にいつでもいいんだけどォ」といかにも田舎らしいのんびりした返事でありました(笑)。
さて、その塩之沢温泉、地図上では駅の真隣に書かれているので見付けるのは簡単だと思ったのだが、駅から山へ登って行く小道を5分ほど上がってもそれらしき影は見えない。あれ?と思ってまた駅の方に戻りウロウロしていると、家の前で藁を叩いてるおばあちゃんが

「さっき電話なすった人かェ?」

と声を掛けて来た(笑)。
さっき目の前通ったっちゅーねん(笑)。ばーちゃん、もっと早めに(ry
「オモテに回ってくんない」と言われて表に回ると、あ~、確かに看板出てるね
ってこれじゃわかんねw
山梨県南巨摩郡身延町帯金字塩之沢2786・塩之沢温泉。どう見ても普通の民家です(笑)。

さて、田舎の親戚の家に遊びに来たという感じがぴったりの塩之沢温泉は、何気に明治20年くらいから営業をしている歴史のある温泉らしい。裏山の沢筋にちびちびと湧く鉱泉を溜めては沸かして使っているそうで、浴槽は風情もなんもないポリバスだが「正真正銘の温泉だァよ」とおばあちゃんは胸を張る。効能は湿疹や火傷なんかの皮膚関係だそうだ。薄く緑に色付いたお湯は少しとろんとして、塩味とかすかな硫黄の匂いがする。
蛇口をひねり、冷たい鉱泉を入れてぬるめの湯加減でマターリ。裏山のミンミンゼミの鳴き声が染み渡るような浴室は、湯加減も雰囲気も空気も時間も何もかもゆるい。こんな雰囲気を感じるのが旅だと思う。次の電車の時間の関係であんまりゆっくりも出来ないのが残念だ。
お湯から上がると「もっとゆっくりしてけばいいのに」とおばあちゃんはせっかちな都会人をなじりつつ「麦茶でもあがってってくださいよ」と氷入りの麦茶を出し、「おせんべいくらいしかないけど」と天乃屋の歌舞伎揚げをくれた(笑)。玄関の土間でしばしの茶飲み話。すっかりおばあちゃんに電車の時間ギリギリまで引き止められました(笑)。

「こっちに来る用あれば、また来てな」と言う挨拶を交わし歌舞伎揚げをかじりながら駅までの道を歩く。「田舎に泊まろう」みたいに仕込み泣きでもすればよかったかw
駅に着いたと同時くらいに、カーブの向こうから富士行きの普通列車がやって来た。
おばあちゃんの歌舞伎揚げはメリメリと歯に食い込む。
ちょっと湿気ってるぜ!ばあちゃんw


 

    

富士行きの普通列車は隣の身延駅で長時間停車をするので、こっからは先行する「ワイドビューふじかわ6号」で富士宮へワープする。甲府から静岡を結ぶこの特急は、「ムーンライトながら」でおなじみのJR東海373系3両編成で運行されている。利用率を上げるために身延線内では自由席特急料金が安くなっているのが特徴で、身延から富士宮は(乗)650円(特)630円の1,280円でした。安いのでそれなりに使っている人はいるみたいですね。車窓に富士川を眺めながら走るこの特急、身延線はカーブが多くてスピードが出せないのがネックで(平均時速50kmくらい?)、中央道と東名を結ぶ中部横断道が出来たらバス相手にかなり苦戦しそうではあります。

およそ40分で富士宮駅に到着。富士宮と言えばご当地グルメ「富士宮やきそば」。改札前に駅弁売り場兼やきそばスタンドがあり、「やきそば大(600円)」をいただく。水気の少ない硬い蒸し麺にシャキシャキキャベツ。そして富士宮やきそばのポイントにして最大に美味しいのが中に入っている肉の「脂かす」ですねえ…ラードを取るために焼いた豚肉の脂身の残りカスなんだが、カリカリしてて香ばしく、豚肉の脂の旨味が凝縮されてるんですよ。体に悪そうなものほど美味いと言う持論を文字通り表現していると言えるだろうなあ。そしてカツオブシの削り粉がたっぷり!
おみやげにマルちゃんの「カップ富士宮やきそば」を2個購入し、富士行きの電車に乗ると20分で富士到着。富士→沼津→熱海→横浜と帰路は流れ作業で、最後もやっぱりSuicaグリーンで爆睡締め。

いやー、今年は久々に18きっぷを使い切ったのだが、充実してましたねえw
三岐鉄道北勢線に始まり、伊豆急行、米坂線に身延線…
だいたい乗り鉄にグルメと温泉が絡んでいるのはワンパターンだが(笑)。

ちなみに、土曜日に太ももに湿疹が出来てカユくてたまらなかったのが、日曜日に塩之沢温泉に入ったら直ってしまったんだが…温泉の効能だとしたらスゲエなw塩之沢温泉。

湿気った歌舞伎揚げが好きな人は、是非行ってみて下さい(笑)。

コメント
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