青空、ひとりきり

鉄路と旅と温泉と。日々の情景の中を走る地方私鉄を追い掛けています。

淡い春をパステルに彩って。

2023年04月15日 10時00分00秒 | 東武鉄道

(東武のスタンダードヒーロー@大落古利根川橋梁)

春雨そぼ降る春日部の街にて。花散らしの雨に乗って8000系。という事で、先月の越生線とかでも最近よく東武の8000系を撮影している。数を減らしたと言えどもまだまだ東武の主力車両で、越生線だけでなく舘林以北のローカル区間、そしてこの野田線では主役の座を譲っていません。そもそも、東武の8000系って今どれくらい残ってるんだろうね。ローカル用に2連になった800・850形みたいな派生形式を含めると、まだ相当残っているのではないかと思われるのだが。東武の歴史の中でも相当に大きな存在の車両なので、引退とか全廃とかなったらそれなりに騒ぎになりそうなのだけど、今のところまだそこかしこで走っているのであまり騒ぎにもならない。よくよく考えると、東武電車で残る唯一の通勤型の鋼製車輌になってしまった。この後の9000系からはステンレスボディになってしまったのでね。

線路に沿って架かる牛島人道橋から。この区間の野田線は単線なのでカブリもないし、上下とも10分に1本電車が走って来るのでカット数はいくらでも稼げる。現在も単線で残る春日部~運河間、それこそバブル時期には野田線の完全複線化なんかも検討されていたようですが、この辺りは江戸川の鉄橋を始めとする利根川水系の旧河川を渡る橋梁の数が多いので、なかなか線増となると大変なんではないかと思われます。そしてコロナ禍による乗客の減少で、野田線は2024年度以降の減車(6両→5両化)がプレスリリースされており、複線化の話もいまさら・・・という雰囲気になってはいるのだけど。

足元を少し濡らしながら、河原の桜並木と春の景色を探してそぞろ歩く。そうそう、プレスによると野田線の減車は今走っている編成から1両抜くなんて事はしないで、5両編成の新造車両で置き換えて行く感じになるそうなので、60070系(仮)みたいなのが出て来て8000系が順々に落ちて行くのではないかと。コロナ禍が明けて乗客も戻り始めているのでは?と思わなくもないんだけど、中長期的に見れば少子高齢化による通勤通学客減は避けられない、という事なのでしょうね。東武くらい大きな路線網を持つ会社だと、車両の導入計画みたいなものは早目に手を打っておかないと後手後手に回ってしまうのでしょうし。

アングルを探していると、河原の一角に淡い黄色の小さい花が群生しているのを見付ける。露に濡れた花弁が、非常に複雑な造形をしていて珍しい。何という花なのだろう、と手元のスマホで調べると、トウダイグサ系の「ノウルシ」という草花らしい。へえ。春の河原の河川敷に群生して・・・とあるからきっとそうなのだろう。埼玉県内では葛西用水や見沼代用水の周辺の河原に見られるポピュラーな春の草花だそうですが、意外にも絶滅危惧種のリストにも載る植物なのだとか。

そんな春の花の淡い黄色をモチーフに、構図をローアングルで固めて8000系の登場を待つ。無駄なものをそぎ落とし、「多くの乗客を乗せて運ぶ」という通勤電車の本来の役割に徹し切った8000系のシンプルなサイドビュー、ミンデンドイツの板バネ台車と併せて、デザイン性も非常にいいですよね。これぞ東武、と言うイメージに合った造形がすんなり伝わって来ます。「TOBU URBAN PARK LINE」のロゴを付けても、やっぱり野田線は野田線で、東武電車は東武電車。

春の大落古利根川、パステルカラーの淡い彩りの中を。

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藤の街の桜、春の日に濡れて。

2023年04月13日 21時00分00秒 | 東武鉄道

(春雨に濡れて@東武アーバンパークライン・春日部~藤の牛島間)

今年の桜は、東京で早目の満開宣言を迎えた後、一週間程度の菜種梅雨に入ってしまいました。春には三日の晴れはなしとは言いますけれども、桜を楽しみにしていた人々をあざ笑うかのような雨、雨、雨・・・。まあ、そういう天気ならそういう天気らしく撮るしかないってんで、わざわざ東武電車に乗って埼玉くんだりまで出掛けて来ました。乗り換えの春日部の駅で東武らーめんのワンタンメンを食べて準備万端。目指す駅は東武アーバンパークラインの藤の牛島駅。春日部と藤の牛島の間にある大落古利根川(おおおとしふるとねがわ)に続く見事な桜並木を愛でに。春雨の中で素晴らしい花付きを見せていました。

藤の牛島で東武60000系を降りる。野田線に投入された新車というだけでも存在が貴重。野田線ってのは、かつては8000系すら上等の部類で、だいたいが伊勢崎線を追い出されたツリカケの5070系とか、そういうセコハン車両で構成されたラインナップが主軸だった時代が長かったもんですから、「野田線に新車」とか言われると、長らく堪え難きを堪えて来た野田市民とか鎌ヶ谷市民なんかは「いいんですかっ!」という気持ちになったんじゃないかなって思うよね(笑)。

「藤の牛島」なので、有名なのは「牛島のフジ」。藤花園という植物園にある国の特別天然記念物ですが、藤の花の前にこの街を彩るのが大落古利根川の桜。今の利根川は関宿あたりから東に流れて銚子で太平洋に注いでいますけども、古の時代の利根川は関東平野の真ん中をくんずほぐれつ洲を作りながら絡み合って流れておりました。度重なる洪水から江戸の町を守るために利根川の東進と平野部の流路の整理が行われ、かつての利根川の名残りはこんな感じで街中を流れる灌漑用水として今に残っています。しとしととそぼ降る春の雨に艶やかに色味を増して水面に映る桜の見事さよ。

こんな見事な桜が咲いているのに、お天気が悪いせいで人っ子一人いない大落古利根川の桜並木。晴れていたら、この桜並木の下ではシートがずらっと並んで、それこそ吞めや歌えやの花見の宴が繰り広げられていたのではないかと思われるのだけど、おかげで一人静かに花見とカメラに勤しめるのは嬉しいところ。人がいっぱい居たら、自由なアングルなんか組めないですからねえ。

桜の木の下にあった公園のベンチに、雨露を手で払って腰掛ける。駅前の路地にある謎のお好み焼き屋で買った100円のお好み焼き(唐揚げ)をモグモグと食っていたら、野田線が古利根川を渡って行くのが見えた。空いた右手でワンショット。こーいう雑な芸当が出来るのも小さくて軽いOLYMPUS PENのおかげ。雨の日に傘差して重い一眼レフとか振り回すのはかったるいので、ホント助かりますね。

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中野通り、春、夕映え。

2023年04月10日 17時00分00秒 | 西武鉄道

(春の中野通り@西武新宿線・新井薬師前~沼袋間)

都内桜巡り。この日に丁度満開の発表があった東京の桜を、荒川二丁目から飛鳥山、面影橋、そして高田馬場へ歩いて最後は西武新宿線の新井薬師前へ。夕暮れ迫る中野通りの桜並木、クルマの波と人の波を遮るは二条のレールと踏切の遮断器。西武電車特有のサイレンチックな踏切警報音が鳴ると、クルマと人がその動きを止め、ライオンズブルーの電車が右へ、左へ。そして風にささめく桜の花びら。

桜の中を滔々と駆けては流れて行く電車たち。NRAの小江戸号、池袋~秩父線からは撤退してしまったものの、新宿線に限ってはまだまだ主軸の活躍。シルバーの車体に赤いライン一筋、レッドアローの愛称の名残りである。しかし、この踏切を望む事の出来る歩道橋、なかなか有名な撮影地なので結構な人だかりで、度々地元の方が「通学路を塞がないで!」と注意に来たりしていた。隣が小学校で通学路になってんのよね。この歩道橋。

午後は曇りがちな一日でしたが、夕方になって低くなった太陽が雲間からチラチラと踏切に差し込んで来た。マゼンタに染まる中野通りの踏切。そして西武電車と言えばライオンズブルーもいいけれど、このカナリアイエロー?のカラーリングがしっくり来る。特に新宿線系統は2000系じゃないっすかねーって感じになります。

混雑する歩道橋から地面に降りて、茜差す中野通りを歩く。新宿線にライナー車両の40000系も来たりするんですね。ただ、路上に降りてもコスプレしてる外国人さんがカメラで桜と自撮りしてたり結構なカオス。コスプレ外人がいるあたり、流石はサブカルの聖地・中野ブロードウェイを擁する中野区という感じもする。ってか、三月くらいからの訪日客の戻りっぷりってエグくないですか。インバウンド復活は外貨獲得という意味ではいい事なのかもしれないけど、コロナ禍以降のお出掛けシーンの回復ぶりは正直日本人よりも海外勢の方が勢いが強いのではないかと思わせる。コロナ前と比べて円レートが安くなってるってのもあるし、正直外国人から見た日本が「安い観光地」になっているのではないか?という気持ちがして忸怩たる思いが。

クルマのライトに灯が入る時間まで、ああでもないこうでもないとまったりと。日が暮れてシャッタースピードが稼げない時間まで中野通りで粘ってました。歩道橋に集まっていた撮り鉄キッズたちが三々五々に解散する中、近所の酒屋さんでレモンサワーを購入し、駅前路地にあった銭湯へシケ込む。ちょっと熱めのジェットバスで体をほぐしてから、帰りの新井薬師前駅で夜風に当たりながら飲むレモンサワーが染みる。ドラえもん電車がカーブの駅を通過する姿を見ながら、都内桜巡りを締めくくったのでありました。

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あの頃の、面影を探して。

2023年04月09日 10時00分00秒 | 都電荒川線

(かつての超高層ビルを仰いで@学習院下~面影橋間)

山手通りと新目白通りの交わる、高戸橋の交差点から東池袋方面を見上げる。これも都電では非常に有名な構図ですかね。早稲田を出た都電は、高戸橋の交差点で北に向きを変え、神田川の橋を渡って山の手の台地を東池袋に向かって登って行く。坂道の向こうに聳えるはサンシャイン60。高さ240m、地上60階の東洋一の高層ビルも、現在は第1位の「あべのハルカス(大阪・300m)」から数えて日本の高層ビルランキングではトップ10圏内にも入ってない(12位)のだそうで。都内でもサンシャインより高いビルは東京都庁を始め結構出来てしまいましたけど、やっぱり我々世代には「日本一の高層ビル」と言えば池袋のサンシャイン60(サンシャインシティ)。今は「空飛ぶペンギン」で有名なサンシャイン水族館でも人気があるようです。

この日の神田川沿いの桜並木は七分咲き。都内の中でも、意外とこの川は大袈裟に言えば急峻な谷あいの地形を褶曲して流れていて、ひとたび大雨・・・現代で言うとゲリラ豪雨なんかがあったりすると、あっという間に谷底にある石神井川~神田川に水が集まって溢れたりする暴れ川でもあります。特に上流、杉並あたりの神田川とか善福寺川って、今更河川改修も出来ないんだろうけどグネグネに曲がって流れてて治水の難しさを感じますですよね。この辺りの神田川も相当の深さに浚渫して河道を下げ、川の流量を確保する対策が取られてますから、東京都でも都市の洪水対策は色々とやってるんだろうけどさ。

面影橋電停に停まる7700形。新目白通りの桜並木を添えて。面影橋と言えば、私がたぶん小学生の頃だからもうウン十年前の話になるのだけど、生まれて初めて都電に乗ったのがここ面影橋の電停でした。千葉県の我孫子にある祖父母の家に行く際、休みになると片道千円くらいの電車賃を渡されてはその交通費の範囲内で一人で好きなルートを使って行っていたんですが、ある時、ふと「都電に乗ってみたい!」と思い立ったんですよね。小田急で新宿へ出て、高田馬場から歩いて面影橋の電停まで来たのを覚えている。都電の始発駅が早稲田というのは知っていたけど、たぶん地下鉄東西線の運賃をケチったんだろうな。

桜咲く面影橋の電停を眺めながら、もう記憶の彼方になった子供の頃を思う。この祖父母の家への一人旅は、都内を通り抜けて千葉へ行くだけとは言え、「自分でルートを考え、切符を買って、電車に乗る」という行為自体が小学生には非常に刺激的で楽しみだった覚えがある。もう季節はいつかも忘れたけど、確か都電を面影橋から町屋駅前まで乗ったんだよねえ。んで、町屋から千代田線に乗らず、あえて京成線に乗って高砂から京成金町に出てね。そっから千代田線乗って我孫子に出たので、小学生にしちゃマニアックなルートだと思う。まだ町屋電停も商店街のアーケードの横にあったんだよね。

ちなみに、この「面影橋」という電停の名前は、個人的に非常に趣があっていいよなあと思う。何だか歌や小説のタイトルになりそうな名前で、都電の電停名で一番好きかもしんないなあ・・・なんて考えながら、自分の「路面電車とのかかわり」がスタートした場所である面影橋の風景と、満開の桜を眺める。ここで三ノ輪橋行きの都電を待っていた少年の頃の面影なんて、とうに忘却の彼方へ去ってしまったなあ、なんて独り言ちるオジサンのセンチメンタリズム。ちょっと気恥ずかしくはあるのだけど。

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花の飛鳥山。

2023年04月07日 23時00分00秒 | 都電荒川線

(花の飛鳥山@北とぴあ展望台より)

柔らかな花曇りの午後、東京の桜の名所でもある飛鳥山公園を、北とぴあの展望台から眺める。この時期の北とぴあ展望台は、眼下を走る新幹線を眺めに来た春休みの鉄道キッズでいっぱい。無料の公共施設でここまで撮影条件の揃っているところもなかなかないのでは?という恵まれた場所にある。この日の飛鳥山の咲きぶりは線路側の東斜面が七分から満開、公園内が五分から七分という感じ。そんな春景色の東京を背に、北へ向かうはやぶさ・こまち編成。南側の王子駅前方面の展望が、駅前に建設されたタワマンのせいで狭まってしまったのが惜しい。

北とぴあの展望台を降り、都電の王子駅前から飛鳥山への階段を登れば、花見に興じる人、人、人・・・コロナ禍から三年目の春、流石に世の中も感染症を気にして閉じ籠っているよりも、外へ出る事を選んだようです。抑えていた感情を爆発させるように、一気に咲いた飛鳥山の桜。かたや人間の方は、綺麗な花を愛でるより、おおかた浮かれて宴を開き酒を飲むのが花見の本質なので、他人様に迷惑を掛けない程度に大いに盛り上がっていただきたいところ・・・(笑)。

都電荒川線が明治通りの併用軌道に飛び出して来る飛鳥山の交差点。都電の中では言わずと知れた桜の名所らしく、交差点を見下ろす歩道橋には大勢のカメラマンが。さすがに都内の交差点なので、クルマを捌きながら都電と桜をコラボレートするのがなかなか難しい。何度かのボツを繰り返してクルマの流れを掴んだ後、さくらの花弁のデザインをあしらった城北信用金庫のラッピング車両が、午後の日差しを浴びて飛鳥山の坂を降りて行きました。

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