孫たちが冬休みの宿題の書き初めをしていた。
1年生の萌香ちゃんは、硬筆で課題「もちつきぺったん」を書いた。
武琉君は3年生、今年は毛筆に挑戦、課題の「たつ年」を練習していた。
学校でも3年生から書道の授業が週1時間あるようだ。
最近良寛の書を鑑賞している。これまではいつも、中野孝次氏に良寛の生き方を教えられていた。関心事は良寛像で漢詩や和歌に興味を持っていたが、書については何となくながめる程度だった。
いつか分水町良寛史料館で「良寛 詩歌と書の世界」(谷川敏朗著 二玄社刊)をもとめた。いつも手元に置いて良寛の遺墨を楽しんでいたが、たとえば六曲屏風に見る、流れるような草書体の漢詩は素晴らしいと感じるが、少しへたくそな、バランスの悪い字もあるなと思っていた。
手元にある吉本隆明の著書「良寛」には、「良寛書字(無意識のアンフォルメ)」と題して良寛の書をいろいろな書体を例に挙げて考察している。
【アンフォルメ:フランス語で“形の無い”“形や枠にとらわれない”】
彼は、「草書体が一番好きだ。草書の中でも細身の字が流れるようにつながっていたり、天となって切れていたりする仮名と漢字の書簡体のものが特に好きだ。」
「良寛にとって書字はいつも布置の均整と無定型の曲線や点による造形美を意識されたものだ。」
「鋭い会話感覚と自他にたいする配慮の配分を心得ている人間像は、良寛の楷書のなかに一番よく現れているようにおもえる。・・・草書の良寛はスピード狂の良寛だが楷書の良寛はゆったりと座っている良寛だ。」と述べる。
また、彼は良寛の32個の「署名」を挙げて、草化の省略の仕方を興味深く考察している。
美の壺(NHK出版)「良寛の書」には 、良寛の世界、文字の美しさを、壱のツボ・・・すべてをかなのように書く、 弐のツボ・・・ ずれとゆれを楽しむ
参のツボ ・・・弱さに強さがある と鑑賞のポイントを上げて分析し紹介している。 そこで、夏目漱石がとびきりの良寛ファンであることも知った。
さらに、北大路魯山人は、以下のようにコメントしている。
・強いて一言でいって見るならば、真善美が兼ね具わっているというの他はない。 ・すべて「芸術も人なり」で、作者の人格はその作品に反映しているものである。良寛様の書の価値は、とりもなおさず良寛様の人格の価値であると断じて万間違いはない。 ・良寛様の書は形がよい。味がよい。美的である。
・その超邁な見識とその真摯なる態度から生まれた良寛様の書は、徳川末期における一大奇蹟である。実に良寛様の芸術的態度と見識は、これまったく良能の革新者のみがもつ新思想であって、敬服に堪えざるところである。 ・良寛さまは書に優れていて、空海以来といわれている。また和歌は柿本人麻呂以来、漢詩は日本一だと思っている。中国の李白、杜甫に匹敵する人物だと思っている。 ・良寛はもって生まれた豊かな才能、悠々たる努力はしているが、苦しみながらの努力はしていない。ゆとりをもった努力をし、そして抜群の集中力が良寛の書を形作っていると思われる。 等々と。
晩年の書
また、小松正衛著の「良寛さま」には「絶世の筆として断簡零墨といえども神品扱いにされる良寛の書が生まれたのは、玉島修行より帰郷し、五合庵に山居してからの修練の賜といってよい。」とある。子供たちの脇で滅多に持たない筆を握った。
静かな環境で、墨の臭いを嗅ぎながら座机に向かう。おあつらえ向きに外は雪が静かに降り始めた。
「騰々任天真」と、そして並べて「草木以為隣」と新年の抱負を書いた。
ついでに、ハンカチに麗しの磐梯を描くと、実にさわやかなこころを感じた。
自己流の下手な字だが、書の素晴らしい気分を少し味わったような気がした。
65の手習い、これからも少し筆を持ってみたいと思った。
孫たちの書き初めから、ひととき良寛の書に思いを巡らせた。
正月に、生前父が使用していた、硯箱一式を譲り受け、親子で数十年ぶりに書初めをしました。今年の目標をそれぞれ書いたのですが、皆、様にならず、日頃の筆不精が如実に表れ、爆笑の年初めでした。笑い事ではなく、練習しなきゃ‥です。皆様の楽しげな様子が、写真を通じて伝わってきました。
心身ともに鍛える必要のある一年になりそうです。ご健康を祈念しております。
今日から出社なのに、明日からまた3連休。仕事始めのコメントでした。
今年もよろしくお願いいたします。
こころ落ち着ける「書」、良いものですね。
少し書いて見たいと思っています。
落ち着いたお正月、雪が少なめで助かっています。寒の入り、ますます寒くなります。
気をつけてお過ごしください。