中島ブラザーズ ”弟”の「外で遊ぼう!」

近頃は日本海で、ヒラマサを追ってばかり。よって磯釣りや渓流釣りは休止状態ですが…。

釣り味・食い味 ~その6(グレ編)

2013-08-31 12:30:00 | 釣り一般
■あこがれの魚■

 今から40年も昔、小学校生活の中盤を向かえた頃にボクの釣り人生が正式に始まった。
 それまで父の故郷である和歌山県の川で竿は出していたものの、自分の竿を買ってもらって本気で始めたのが、同級生間での釣りブームが起こった小学3年生のことだったと記憶している。
 その頃は、近所の甲子園浜と今津港で竿を出し、釣り場に行けない時は自宅から一駅先の阪神電車今津駅近くにあったフィッシングサービス山本(のちに「サンフィッシング」と改称)という店に自転車で足繁く通っていた。そこで諸先輩のオジサン達の話す自慢話に耳を傾け、時にはアドバイスを聞きながら知識を蓄積して、少々頭デッカチな釣り小僧として成長していた。
 その釣り小僧のあこがれが、店内に魚拓になって飾られていた大型グレだった。サイズは72cm、釣った場所は高知県の沖の島ということだった。当時は尾長グレと口太グレの区別はされていなかったが、今考えると、その大きさから尾長グレに間違いない。そして、それを初めて見て以来、ボクにとってグレは特別な魚になった。
 当然「金がない、車がない」子供同士で磯釣りに行くことは不可能であるから実物は見たことがなく、釣魚図鑑で色形を確認して妄想しているだけの日々が続いていたが、初めて実物を釣ったのは、淡路島の生穂という地区にある石積み防波堤だった。当然それは、いわゆる木っ端グレと呼ばれる幼魚ではあったが、とにもかくにも初めての実物との対面は小学6年生のことだった。
 そしてその後、高校生の半ばになって青少年時代の釣りは一旦休止し、紆余曲折があって釣りを再開したのが、25歳を過ぎた頃だった。その頃には自分の車を持っており、行動半径が広がっていたこともあって、再スタートは勿論あこがれのグレ釣りからだった。以来中休みはあったものの、グレ釣りには20年以上も真剣に取り組む日々が続いた。


■グレの釣り味■

 素人目には判りづらいのかも知れないが、上述したようにグレには幾つか種類があって、今では明確に分けられている。その種類は釣り人の多くから口太グレと呼ばれる「メジナ」、同様に尾長グレと呼ばれる「クロメジナ」が釣りでのターゲットで、その他、標準和名で「オキナメジナ」と呼ばれる種もあるが、これは例外的に釣れる数が少なく、狙って釣る魚ではないため、ここでは触れない。
 口太グレは希に60cmクラスも釣り上げられるが、普通に狙う場合で最大クラスは50cm台となり、尾長グレも同様で、希に70cmクラスやそれ以上も釣り上げられるが、60cm台が普通に狙う場合の最大クラスとなる。
 グレ釣りの魅力は、彼らが持つ警戒心の強さから来るのであろう、釣り人がよく言うところの「頭の良さ」と「引きの強さ」だと思う。

 今までに様々な釣りを体験したが、その全てを振り返ってみてもグレ釣りほどテクニックの多彩さを要求される釣りは他にないように思う。
 マキエサ一つをとっても「ただ撒けば寄ってくる」といった単純なモノではなく、ひどい場合は山のようになって押し寄せるエサ取りをかわしつつ、本命を釣らなければならない。そのため、寄ってくるエサ取りの種類と量に合わせてマキエサの打ち方を変え、少しでもグレにサシエサが届く確率を上げるテクニックが要求される。
 また、潮読みでは沖を流れる本流と、磯の周囲を流れる潮流をトータルで捉え、それを3Dで考え無ければならないうえ、その流れ自体が常に変化して一定ではないから、その時その時での判断が迫られる。
 更には、タナのとり方も、単にグレが食いに来るタナを探るためのウキ下(ウキからハリまでの距離)調整だけではなく、道糸の張り具合の調整までをも考えなくてはならないし、「食わせるためのハリスや道糸、そしてウキ、更にはハリやオモリ選び」といった「食わせる為の道具選び」や、竿、リールといった「獲る為の道具選び」も重要になる。
 そしてようやく魚が掛かったとしても、大型を獲るためには、「柔よく剛を制す」の言葉の下、己が持つ能力の限界での竿さばきとリーリングが要求される等々…。”頭のイイ”グレを釣るためのテクニックを書き出すとキリがないほどの量になる。
 「普通レベルのテクニックを持つ」と自称するボクの場合、口太グレの自己記録は愛媛県の蒋渕で釣った53cmで、このクラス近辺は10枚以上は釣っている。そのほとんどが2号ハリスを使用していて釣ったモノで、現在でも地形があまりに複雑でなければ、このハリスでこのクラスを獲る自信があるが、名人クラスはハリス1.2~1.5号で狙っている。細ハリスほど食いが良くなるのはエサ釣りの常であり、特にグレ類はその差が顕著なのでテクニックを磨くとボクなんかよりも更に釣果は伸びることは確実だ。

●口太グレの自己記録”53cm”●


 口太グレとの差が倍近くに感じるほど引きが強い尾長グレの場合、ボクの自己記録は男女群島の帆立岩で釣った60cmで、それに少し足らないクラスは数匹釣っている。ボクがこのクラスを狙うのは長崎県の遙か沖にある離島=男女群島なので、日中であれば4~5号ハリスを使用している。

 
●尾長グレの自己記録”60cm”●


 このクラスよりも下の40~50cmクラスを例えば五島列島で狙う場合は、2~2.5号のハリスを使用するが、名人クラスはこの太さのハリスで60cmオーバーを高知県の沖の島や鵜来島あたりでゲットしているから恐れ入ってしまう。
 グレ類はハリに掛かって危機を感じると「根」と呼ばれる海底の岩塊や、海溝に向かって緊急待避を始める。その傾向は口太グレの方が顕著で、その際には自身の持てる力を最大に発揮するため、モタモタしていたり、油断したりしていると、一気に走られてしまい、ハリスが周りの岩に擦れて飛んでしまう。運良く切れなくても岩の窪み等に張り付くため、多くの場合でにっちもさっちも行かなくなって、結局はハリスが飛んでしまうことになることが多い。(希に、張り付いた後に動き出して獲れることもあるが…)ただし、このフルパワーを一度しのぐと、大型の口太グレを獲る確率はかなり上がるので、馴れてくると何となくだが、対策がとれるようになってくる。
 しかし、尾長グレの場合だとそうは行かず、「これでもか!」と言わんばかりに何度も執拗に締め込んでくる。尾長グレの場合は根に向かうばかりとは限らず、沖の深みへ一気に走るタイプなど様々だが、沖へ走る場合は、やり取りのスペースが広がるだけに、少しは楽な展開になる。
 ただし、実はやり取りで苦労する前に、この尾長グレには関門がある。それは「歯の鋭さ」だ。
 口太グレの歯はブラシ状になっており、ハリを飲まれても、と言うか、飲まれて血を吹き出すくらいの方が早く弱って取り込みが楽になるという説もあるほどなので、ハリに結びつけられたハリスのチモト部を歯で切られてしまうことはほとんど無い。しかし、尾長グレのそれは鋭く、と言っても手を当てても切れるというほどではないのだが、細~中庸なハリスを使っている場合はハリを飲まれてしまうと、高確率でチモト部が切られてしまうのだ。
 その対策にハリスを太くすれば食いが極端に悪くなる。これは、例えば高知県沖の島や鵜来島の磯では上から見えるほどの水深まで浮上した大型の尾長グレが、ハリ&ハリスの付いたエサを避けてマキエサのみを食うシーンは当たり前のように展開され、実映像が何度となく撮影されていることでも実証されている。だから、釣り人は引きの強さに対して明らかに細いハリスを使い、「如何にして飲まれることなく、口周りにハリを掛けるか?!」の対策をとらなければならない。その”神経ピリピリ度”は尋常ではなく、一部には「前アタリを察知し、その後の本アタリでウキが1cm動いた時点でアワせなければならない。」とまで言われているほどなのだ。

 真剣に取り組んでいた時期が長いために思い入れが強くて、説明が長くなってしまったが、尾長グレにしろ、口太グレにしろ、結局は当日その磯で狙えるサイズに合わせて自分の持てる能力で扱える限界の細さのハリスを使って攻めることが多くなるので、その意味ではスリル感が半端ではない釣りの一つだ。
 その”限界の細さのハリス”を使う限りにおいて、尾長グレの40cm台後半クラスから上は、テクニックの要求度が特に高くなるため、間違いなく釣り味は10段階の9になる。対して口太グレの場合は、経験を積むと展開がある程度は楽になることから10段階の8としておく。


■グレの食い味■

 グレの食い味は口太グレ、尾長グレそれぞれに違いがある。
 口太グレの場合は産卵期がハッキリしているので、それを中心に考えると判り易い。旨いのは11月下旬~1月下旬頃までの、産卵前までのモノで、夏場は味が落ちる。よく言われる「磯臭さ」は、夏場の方が出易いのだが、これに関しては今でも僅かに感じるものの、ほとんど過去の話のように扱われている。と言うのも、釣り人が入る磯の周りにはオキアミが恒常的に撒かれており、これを主食としているので臭いが身に乗らなくなっているからだそうだ。その昔は、離島などで釣った口太グレを眼前に持ち上げただけで臭っていたと言うから、この説は当たっているのかも知れない。
 産地による違いも結構あって、ボク的には五島列島や、豊後水道のモノは旨く、紀伊半島のモノはそれよりも評価が落ち、瀬戸内海産はあまり旨くないように感じる。但し、評価の下がる瀬戸内海産を除けば、マダイよりも脂の旨味が多く、味わい深い感があるため、食い味は10段階の7としておきたい。
 尾長グレに関しては、実は産卵期がよく判らない。今までに釣った場所は男女群島~伊豆諸島までと、かなり広範囲で、釣った時期もまちまちなのだが、確実にこの時期に抱卵していると言い切ることができないほどにバラバラの状態なのだ。しかも、漁業の対象になりにくい魚のため、生態の全般についても学者ですらよく解っていないということらしい。
 そこで、ボク自身の経験談だが、一番脂が乗っているとの印象があるのが、6月に山口県萩沖に浮かぶ見島で釣った45cm級で、これは極ウマだった。そして多くの尾長グレを釣り続けている某名人も、「45~50cmの、回遊から離れて磯周りに居着いた体色が茶色い個体が一番旨い。」と言っていたので、恐らくこの判断は間違いではないだろう。そしてそのサイズであれば、10段階の8を付けるのが適当だと思う。
 因みに両魚共、刺身を始め、煮物、焼き物何でも来いだが、我が家の場合は、軽く塩こしょうを振った皮付きの身をフライパンに乗せ、酒を振りかけつつ両面を焼いた後で、ポン酢で食べるのが格別としている。


■総合評価■

 釣れる時期が長く地域も広い口太グレは、全国規模の大きなモノから小売店やクラブ主催の小さなモノまで、競技会も盛んに行われているが、単一魚を狙った大会の中では、恐らく開催数は最多の部類に入ると思う。それだけこの魚の良型を揃えて釣るには”腕”が必要となる。そして、狙える箇所は減るが、より難易度の高い尾長グレの場合であれば、ななおさらのことだ。そこで評価だが、尾長グレの場合は10段階の9、口太グレの場合は10段階の7.5としておきたい。
 この釣りに対し、長きにわたって真剣に取り組んだことが、頭の中にある引き出しへの情報ストック量が増えた要因であり、これがあるお陰で他の釣りに移行しても理解が早くなることに繋がっているのだと思うだけに、この釣りの奥深さがそう評価させていると理解して欲しい。

 釣りには「豪快だが、大味な釣り」、「繊細だが、迫力がない釣り」等々、スタイルが色々とあるが、「繊細なテクニックで豪快に釣る魚」は少ない。その少ない中の一つがグレ釣りだと思う。それを野球で例えるのなら、釣り人は「打率3割、30本塁打、30盗塁」のバッターを相手にするピッチャーのような立場だ。そんな相手から三振を日本のプロ野球界でとった瞬間が、大型の口太グレを玉網に収めた瞬間、それをメジャーリーグ界でとった瞬間が、大型の尾長グレを玉網に収めた瞬間と言えば解ってもらえるだろうか?って、それは言い過ぎか…?。
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釣り味・食い味 ~その5(ヒラマサ編)

2013-08-03 12:30:00 | 釣り一般
■キング・フィッシュ■

 今回とり上げるのは、ボク自身が釣り人生の中で獲った魚の中では評価No,1のヒラマサだ。以前にマダイのところで触れたように、この魚はオーストラリアやニュージーランドでは”Kingfish(キングフィッシュ)”と呼ばれているが、その通り、「釣って良し」、「食って良し」で、魚の王様だと思うのは、ボクだけではないだろう。(南半球のヒラマサは、亜種という説もあったそうだが、最近では同種とする意見が優勢。)
 また、見た目に於いても”King”の冠に恥じない、魚界では一、二を争う容姿を誇り、同じ系統の色彩を持つブリ系に比べて、体側の中央を横切るラインや周囲に立つヒレといった部分の”黄色さ”が、より鮮やかで、それを挟んで背中のブルーと腹の白銀とのコントラストが美しい。特に船縁まで引き寄せた頃に見える海中での姿は、思わず見とれてしまいそうになるほどだ。(本当に見とれているとバラしてしまうから要注意。)


■ヒラマサの釣り味■

 ヒラマサの魅力、その第一は引きの強さだ。写真上では一見似ているかのように思えるブリ系(実物は、見ればすぐに違いが判るが、)とは、同寸同士で単にパワーを比較するだけなら、ヒラマサの方がやや上程度になると思う。だが、「ブリ系の方は単調であるが、持続的な力を発揮する」のに対して、ヒラマサの方は、「ここ一番の馬鹿力」が基本の力に上乗せされる。
 この馬鹿力が実に厄介で、ブリ系が海中の岩塊といった障害物の上を通過することが多いのに対して、ヒラマサはその馬鹿力を発揮しつつ障害物が入り組む海溝や岩塊の際を目指して一目散に走る。そして釣り人がそれを止めることができなければ、結果的にそれら障害物に道糸やハリスが触れたり、2本バリの上バリが引っ掛かったりして、仕掛が飛んでバラしてしまうことになる。だから同じ青物でも「ブリ系は力があるだけのアホ魚で、ヒラマサは力がある上に賢い魚だ。」と釣り人は語るのだ。
 よく完全フカセ釣りでは「一度本命魚に対して仕掛けが合うと、潮流が変わらない限り、魚の食いが続く。」と言われるが、この釣法でヒラマサ狙っている際の、根ズレによるバラしも同様に「同じ位置でアタリがあって、それを、掛けても掛けても同じところに走られる。」から、ヒラマサの頭をこっちに向かせるだけの仕掛強度と、釣り人側の対処がなければ、入れ食いならぬ”入れバラし”になることもある。
 これだけの違いがブリとの差であるとすれば、単に「習性の違い」として捉えることもできるのだが、他にも賢さを感じさせる部分がある。
 ボクが青物を狙う際には小魚を使った「飲ませ釣り」はほとんどせず、オキアミを使った釣りになるが、この釣りの場合、経験上ブリ系は捕食の結果、サシエサと同時にその中にあるハリごと飲み込み、エラの周辺や時には胃までハリが到達していることもある。しかし、ヒラマサが同様になることはほとんど経験しておらず、大概は口の周りにハリが掛かっている。これはヒラマサの方が警戒心が強いためにそうなるのだと言われているが、この習性がまた実釣時の障害になる。即ち、ヒラマサは、よくハリ外れが起こる魚でもあるのだ。
 ハリ外れは前回の玄達瀬での釣行時にも一度経験しているが、これに限らず今までに何度も経験している。口そのものは硬く、ウマく上下の唇の蝶番部分=かんぬきに掛かれば全く問題はないのだが、硬い唇と顔の間に薄い膜があって、吻部は蛇腹ホース(一層のみだが)のようになっいてる。これが問題だ。
 この薄い部分にハリ掛かりすると、やり取りを繰り返すうちに徐々にハリ穴が広がってゆく。そして何かの拍子で糸のテンションが緩むタイミングとヒラマサが頭を振るタイミングが重なると、ハリ外れが起こってしまうようだ。特に船縁まで引き寄せ、竿を竿受けにセットし、ハリスを手繰りする段階になってこれがよく起こるのだ。実際に8年前、丹後半島沖の白石グリで、メーター前後のヒラマサを7本掛けたが、獲れたのは5本で、残りの2本は目の前でポロッとものの見事にハリが外れてサヨナラとなってしまった。この件を複数の船長に話しても同様の意見を持っていることがほとんどで、余談だが、「外れた瞬間に何故か逃げるヒラマサと目が合う。」という意見まで同じだった。

●8年前の1m3cm(自己記録)だが、この日は目の前で2本がハリ外れ●


 馬鹿力を持つうえに賢いヒラマサをゲットするための仕掛は、それなりの強度が必要になる。勿論細い方が食いが良いハズなのだが、そのメリットがハッキリと感じられるのは恐らく6号程度であると思われる。しかし、70cm以上のヒラマサに対してこれを使うのは「足下の水深が深い」「障害物が少ない」などの地形の条件が整っていることに加えて「ドラグ操作に馴れている」など、釣り人側にも技術が要求されるので、自信がある人以外はやめておいた方がよい。
 「回遊魚はバラすと後が続かない。」と言われるだけに、ヒラマサ狙いではリスクを減らした仕掛を使用して欲しい。細めのハリスで仮に10本掛けることが出来ても、手にする魚が2本であるのなら、5本しか掛からないが手にする魚が3本以上(それも、より大型)になる方を選んで欲しいと思う。また、ボクを含めて仕掛を自作する人も一定の割合で居るが、枝針を出す際に「編みつけ」ができなければ、いっそのこと市販品を利用した方が身のためだと思う。

 ボクがヒラマサを釣るために訪問した釣り場は、西から山口県萩沖の見島周辺と京都府の若狭湾周辺、そして福井沖の鷹巣周辺と玄達瀬だ。
 各地で釣法や仕掛が違うが、見島周辺は長大な棒ウキを使って流す「ウキ流し釣り」で狙い、仕掛に使用する道糸はPE製の6号、装着するハリスは12~14号と特別太い。ここでは時期によって希に1m40cmクラスの超大型も出るが、普通に出るのは70~80cmクラスだ。別段ここのヒラマサの引きが強いワケでもないのに、この太さのハリスを使用するのは、マグロ等、他の回遊魚に対する意識もあるだろうが、結局は重いウキとオモリ、カゴや天秤といった抵抗物を背負っていることと、クッションゴムは着いているものの、伸びの少ないPE製の道糸を使っていることが大きな要素だと思う。
 それが若狭湾周辺では釣法が完全フカセ釣りになり、道糸はフロロカーボン製の6~7号、ハリスは7号以上となる。以前にも書いたが、ボクの場合はメーター前後の大型ヒラマサであっても、ハリスは8号が標準になる。これはゴールデンウィーク頃から釣れ始めるこの一帯のヒラマサが、何故かMAXのパワーを発揮しないからだ。
 そして、福井沖の場合も完全フカセ釣りで狙うが、沿岸の鷹巣周辺では狙えるサイズが大きくても80cmまでになるので、道糸がフロロカーボン製の6~7号に、7~8号のハリスを使用する。これが玄達瀬ともなると、一日に数発来る120cm以上の超大型クラスに対応するため、道糸はフロロカーボン製の8号~10号に、ハリスは標準が10号、場合によっては14号までを使用する。シンプルな完全フカセであるにも関わらず、ハリスが太めになるのは季節のせいか、地形のせいかは判らないが、玄達瀬で釣るヒラマサの引きは最強クラスだからだ。
 因みに仕掛の長さは、ウキ流しでは15m以上を使うが、完全フカセでは全て6mになる。枝バリは1本(全長70cm)のみで、これを編み込んだ2本バリ仕様の自作仕掛以外は基本的に使用しない。

●今年5月の96cm●

 とにかくヒラマサ釣りの魅力は、相手の度を超えたその強い引きと賢さに対して、自分がどこまで迫れるかにある。特に相手が大型の場合は、まさに「食うか食われるか」の世界だ。それだけに釣り人はこの魚を釣るために躍起となる。その昔、オキアミの出現によって釣り人界にヒラマサ・ブームなるモノが到来したが、それも頷ける話だ。

 ここで釣り味の評価をしよう。「完全フカセ」での釣果であれば文句なく10段階の9をつける。だが、その他の釣法では引きがダイレクトでない分だけ釣趣が下がるように思え、もったいない気がするのが残念だ。


■ヒラマサの食い味■

 食べたことがある人には判ってもらえることだが、ヒラマサのウマさは超一級品で、上段でも述べたようにその意味でも”Kingfish”の名に値する魚だ。
 その旬は夏とされていて、ブリ系とは季節が真反対になる。ブリ系の70cmクラスは関西ではメジロと呼ばれるが、そのサイズとヒラマサは時々同じポイントで釣れることがあって、そうした場合、帰宅後は直接比較できるので、その違いの大きさが、見た目以上にあることがよく理解できる。
 両魚共に、ちゃんとプロの手によって血抜きがなされているにも関わらず、身の色はヒラマサに白っぽさを感じるのに対してブリ系は血の色がにじんで見える。食してみても見た目の印象通りでブリ系はどこか「血なまぐささ」が残るのに対して、ヒラマサはそれを全く感じないのだ。これは身についている赤黒い部分=血合いの体積がブリ系の方が多いことも関係していると思う。
 身に乗る脂の質も両者に違いがあって、ヒラマサは大型の脂が多い個体であっても脂分が上質なため、しつこさは感じないが、ブリ系は、何故か脂が乗り過ぎてしつこいか、少なくてあっさりし過ぎて味気ないかの、両極端の印象がある。
 気になる寄生虫も、水温の高い時期のブリ系ではでは「かなりの確率で入っている」と思った方がイイのに対して、ヒラマサでは過去4月に萩沖で釣った、痩せた一個体だけに”身の毛もよだつ”ような量が入っていた以外は全く発見したことがないから、その意味でも有り難い。

 今までボクがヒラマサを釣った月は1月と、4月~11月の各月だが、どんな魚でも季節差もあるように、ヒラマサも例外ではない。
 玄達瀬で釣る7月初旬では個体それぞれで腹に抱える卵巣や精巣のサイズは大きく、それらに栄養分が取られていて、身の脂分が減っているから、ヒラマサらしい旨味は充分にあるものの、割とあっさりとしたイメージだ。だから、ボク個人の印象かも知れないが、旬と言われる産卵期の夏場よりも産卵から回復した9~10月と、産卵に入る直前の4~5月が一番ウマいように感じる。

 料理法は、今まで定番の「平造り」を始め、「しゃぶしゃぶ」「塩焼き」「洋風のソテー」「味噌漬け」等々、様々な調理法で味わったが、何をやってもウマい。だが、上述した産卵期を除外したその前後の「はらす(腹側の身)の平造り」と、365日、いつの日であっても「半割にした頭部と、エラブタ後ろの”カマ”と呼ばれる部分の塩焼き」の味は格別だ。
 頭部とカマは、やや強めの塩を施してオーブンで表面がパリッとなるまで焼くのだが、これを、友人を交えて5人で食した際は、四方から箸が伸びてアッという間に無くなってしまうほどの好評さだった。

 上述した理由から、食味の評価もかなり高く、たとえ味的にピークの時期でなくとも他魚を凌駕している。だから釣り味同様に10段階の9をつけたい。


■総合評価■

 釣り味、食い味共に9であることから総合評価は10段階の9としたい。実のところ、これ以上の高評価の魚は未だ遭遇しておらず、ボク的には無い。9.5クラス以上は“夢”として残しておきたいからであって、実質ヒラマサ、特に完全フカセで狙う玄達瀬の大型は最高評価になる。
 昨秋以来、若狭湾~福井市沖では8年ぶりの大回遊があって資源量は確保されているものの、これがまたいつか何かのタイミングでサッパリ居なくなってしまうこともあり得るワケである。だから、もし仮にヒラマサ釣りに興味があるのなら、是非今年はチャレンジを実行して欲しい。チャンスは今なのだ。

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釣り味・食い味 ~その4(渓流魚編)

2013-07-27 12:30:00 | 釣り一般
■「一挙数得」の釣り■

 渓流釣りに本気で取り組み初めて早5年。諸先輩方には「知った風に言うな!」とお叱りを受けるかも知れないが、今までに様々な釣りをしてきたボクの目から見た渓魚達についての評価なので、その辺はお手柔らかに…。

 そもそもこの釣りを始めた切っ掛けは、グレ釣りがオフになる3月に解禁され、禁漁になる10月になれば再びグレ釣りがシーズンインするという、誠に都合の良いタイミングでできる釣りであることが大きかった。他に、副次的なことだが、暑くなっても高地の涼しい場所で釣りができるし、夢中になって楽しみつつも「流水を遡る」という、ハードな運動は日頃の運動不足が解消できるので、一挙両得どころか「一挙数得」にもなることは、この釣りを続ける要素にもなっている。
 また、釣れてくるヤマメ、アマゴ、イワナといった魚達は姿形、色合い共に美しく、自然が作り出す美に触れる喜びがある。

●美人なヤマメ●


 そんな感じで、今やメインの年間釣りスケジュールの中で一角を占めるようになった渓流釣りだが、始める前には大きな誤解があった。
 関西のTV釣り番組で、この釣りをとり上げるのは大抵、解禁時の頃であり、20cmそこそこのアマゴを水面から引き抜き、空中を飛んでくるのを受け玉でキャッチするという映像がほとんどだった。そして、その様子を見た結果、「こんな小物を釣って楽しいのかな?」というのが、正直な感想だった。
 その評価が変わったのが、細山長司さんを始めとする「本流釣り」をする釣り人達の映像や文献を見たことだった。小物だと思っていた渓魚は、環境が整えば普通で40cm近くに、降海型などの場合であれば70cmオーバーにまで育つということをこの映像などで知ったことは衝撃的だったのだ。


■渓魚の釣り味■

 「同じ魚であっても釣り方が変われば、難易度が変わる。」これは当然だが、エサ釣りに限って言うと、「延べ竿で釣る」というスタイルがこの釣りを難しくしているように思う。
 ボクの釣り歴中では一番長いグレ釣りでの経験から言うと、糸強度の限界まで竿を絞り込んでも更に締め込み、走ろうとする魚には、レバーブレーキ付きのリールであればレバーを解放し、ドラグ付きのリールであればドラグを滑らしてリールから糸を出して、再び竿を立てて踏ん張ることを、または、それを繰り返すことが獲るために有効な手段であると認識している。
 しかし、延べ竿には当然リールが付いていないためにそれができない。だから、竿をタメても止まらず、更に走る大型渓魚が掛かると、「滑る川底と水流抵抗」という人間にとって不利な条件の中で、相手が上流に向かおうが、下流に向かおうが、動きに合わせて同じ方向に釣り人自体が走らなくてはならないのだ。しかもその判断は瞬時に行わなくてはならず、釣り人のセンスと運動能力が問われることになる。
 また、他の魚と比較しても渓魚達は警戒心がかなり強い部類に入るので、この釣りは、細糸の効果が他の釣りに比べて大きく、糸が細ければ細いほどアタリが増える傾向にある。しかし、細ければ細いほど仕掛の強度が落ちるのは当然として、上述した「糸を出せない」という構造的な問題も加わって、食いを良くしようと思えば、仕掛を切られる確率がかなり上がるというジレンマを抱えている。
 その結果、ある程度の腕がないと、大きな渓魚をバラしてしまい、中小型しかゲットできないこともあるのだが、そんな様子を見かけるせいか、ルアーで渓魚を狙う釣り人の中には、エサで狙う釣り人を「小さな魚の数釣りをする人達」と思い込み、「エッサマン」と、半ばバカにしたように呼ぶ人を見かける。しかし、それは知らぬが故の勘違いしているように思える。
 これは海の場合でもそうだが、オキアミなどのプランクトン系やゴカイやミミズといったエサと小魚の両方を捕食する魚を狙う場合は、エサで釣る場合よりも、小魚で釣る方が仕掛を太くしても食いがあまり変わらないという傾向があるのだ。小魚を擬したルアーも同様に、狙う範囲への飛距離が確保できた上で、動きが不自然にならない範囲であればある程度糸を太くしても構わず、それはエサで狙う人の仕掛けに対して、こと強度という面ではかなり有利になる。
 だから、疑似餌を食わせるテクニックという難しさがあっても、ドラグを使ってリールから糸を出せる上に糸が太くできるというアドバンテージが自分たちにあるということを忘れないでいて欲しい。勿論、渓魚がフィッシュ・イーター化するのはある程度の大きさに成長してからになるため、ルアーで狙う場合は初めから小型が少ないのは当たり前のことだ。
 つまりは、「ルアーで狙う場合は、(エサ釣りよりも)アタリの数は少ないものの、大型のゲット率が上がるが、エサ釣りの場合はその逆」ということであり、「疑似エサを使って食わせる」のも腕前が必要であるのなら、「細糸を使って良型以上をゲットする」のにも腕前が必要なのだ。であるから、アプローチに違いがあるだけで「釣り自体に優劣はない」ということを理解して欲しい。

●現時点の自己記録33cmのヤマメ●


 と、話が横道に逸れてしまったが、ボクにとっては延べ竿と、それに装着される細仕掛の不合理さによって起こるハラハラ・ドキドキがたまらず、それがこの釣りの面白さとなっている。
 渓流ではヤマメ、アマゴ、イワナと、一部に外来魚のニジマスやブラウントラウトが狙われているが、ボク自身は外来魚否定派なので、釣り味の評価はヤマメ、アマゴ、イワナのみとしたい。
 ヤマメは海に下り、サクラマスとなって遡上すると、最大で70cmオーバーに育ち、アマゴも同様に遡上型は50cmオーバーに育つこともあるようだが、ボクはそのタイプを狙わないため、それらは別格としておく。それ以外の、普通の渓流に生息している40cmまでのタイプを狙うのなら、ヤマメ、アマゴに難易度の差はほとんど無いと思うので、釣り味は同評価の10段階で8としておく。
 イワナの場合もダム湖や海から遡上した物の中には最大で80cmクラスになるそうだが、そのサイズは極希であり、一般的に釣れる最大クラスは50cmまでだろう。
 同サイズのヤマメ、アマゴと比較するとスピード、パワー共に劣っているうえ、エサに対する執着が強いようだ。そのため、実釣ではヤマメ、アマゴはアワせ損ねると、二回目のチャンスはほとんどないが、イワナの場合はハリ先が刺さらない限り、同じ場所で何度かチャンスがあるように思う。またボクの釣りレポートでも尺オーバーのイワナは毎年のように釣っているが、ヤマメ、アマゴに関しては尺オーバーが極端に少ないことからも難易度に差が有ることが理解できるだろう。よってイワナの評価は10段階で6.5としたい。

●現時点の自己記録40cmのイワナ●


■渓魚の食い味■

 渓魚は養殖物であっても水温が低い清らかな水でしか育ち辛い。そのため、食材としての供給地が必然的に山間部となるため、TVの旅番組のレポートでは秘境的な地域の紹介とリンクすることが多く、そこで味わう珍品として、串に刺して焼いた渓魚をウマイ、ウマイとほおばるシーンを見かける。但し、それがイワナ、ヤマメ、アマゴ、ニジマスであっても同じような感想を言う場合がほとんどだが、実際にはかなり味が違うのだ。
 順位をつけるとヤマメ、アマゴには釣り味と同様に、食い味の違いを見つけ辛いため、同格の1位となり、以下イワナ、ニジマスと続く。何と言っても1位の2種は身の中に寿司屋でよく味わうサーモン系の脂と同様の甘みがあって、実にウマイ。その旨味は、川魚の中では一定の評価を受けているアユよりも確実に上だと思う。そして料理は天ぷらを始めとして、フライに塩焼き、何でもイケる。
 これがイワナとなると、身にサーモン系の脂分が少なく、かなり淡泊な味になる。そのため、味わう際は、塩焼きにするのならキツめに塩を振るか、いっそのこと強制的に味を入れる料理にした方がイイと思う。その他に、源流に棲むイワナを刺身にするという記事を読んだことがあるが、ボクには川魚を生食する勇気がないので、どうにも評価できない。
 余談だが、ニジマスはどうかというと、これまた身にサーモン系の脂分が少なくてイワナよりも大味な印象の上に、分厚く硬い臭みのある皮があるため、ランクはかなり下がってしまう。
 
 そんなこんなで、渓魚の食い味はヤマメ、アマゴが10段階の8、イワナは10段階の6.5としたい。釣り味と同じ評価になってしまったが、ボク的にはそんなところだ。


■総合評価■

 総合評価は釣り味、食い味とも同評価だったためにヤマメ、アマゴが10段階の8、イワナは10段階の6.5となる。
 経験が浅く、大したサイズの魚を釣っていないにも関わらず、ヤマメ、アマゴに関しては高いポイントを与えたが、ボクにとってはこれから先も更にサイズアップが狙えそうな、夢が広がる釣りの一つであることが、この評価を後押しした理由なのかも知れない。
 聞くところによると、渓魚もサイズによる味の評価に違いがあるそうで、大型を連発した暁には食い味の評価が下がることもあり得る。そんな起きもしない将来の出来事はどうでも良いが、現実的に心配なことがある。それはこの釣りに衰退感を感じてしまうことだ。
 実際、内水面の漁業従事者は減少し、現在行われている放流事業も一部を除いて衰退傾向にあるようだ。成魚であれ稚魚であれ卵であれ、放流がなければ成り立たないのがこの釣りの現実であるが、「放流量が減る→釣れにくくなる→釣り人が減る→入漁料収入が減る→そしてまた放流量が減る」といった負のスパイラルが各地で始まっているようだ。そのアオリを受けて釣具店の渓流用品コーナーは年々減少し、釣具メーカーは極力在庫を作らない方向に進んで、買い時を逃した道具は手に入り辛くなっている。この釣りが過去のモノとならないよう、何か手立ては無いものか?と思案する今日この頃である。
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釣り味・食い味 ~その3(メダイ編)

2013-04-27 12:30:00 | 釣り一般
 釣行予定日になると荒天となる悪循環にハマリ込み、もどかしい日々が続いている。よって、今週も、「釣り味・食い味」のシリーズだ。

■不思議な魚■

 「海の底は空の上(宇宙)と同じくらい謎が多い。」と、どこかで聞いたことがあるが、今回採り上げるメダイも、その謎の中にある不思議な魚だ。
  船釣りしかしない人が想像するメダイの行動範囲は、釣果実績から想像するに、300m~50mくらいに思うだろうが、実はこの魚、目で見える範囲、つまりは水面近くまで浮上してくる。それを知るのは離島遠征に向かう磯釣り師たちだ。
 磯からの大型魚狙いで有名な長崎県五島列島沖にある男女群島では、大型尾長グレを狙うのに一番楽なアプローチは夜釣りだとされている。その夜釣りでは集まった魚が、オキアミのマキエサを拾う際に夜光虫が反応して、蛍が飛び交うようなイメージの”淡く尾を引く光”が水中に走ることがある。そしてその光の尾が大きい場合は、大型魚が接近していると判断できるから、それを見た釣り人の心は期待で胸が膨み、アタリが来るまでの間はドキドキの瞬間となる。そして、その動きの中で電気ウキが消し込まれると、すぐさま強烈な引きを味わうことになる。
 以前であれば、その引きの正体は尾長グレ、そうでなければサンノジやイズスミといった磯魚であったのだが、ここ近年ではそれが大型のメダイであるケースも増えているのだ。
 男女群島での夜釣りでのウキ下は4ヒロ前後=6m前後からスタートすることから、そのあたりまでメダイは確実に浮いてきているということになる。反対に深い方では300m以上の水深でも釣れていることから、同一個体の移動ではないのかも知れないが、生息域として水深差が300m以上もある魚は極めて珍しい存在だと思う。

 以前は釣りの対象魚として大きく採り上げられることが少なかったように記憶しているのだが、資源量が増えて、現在では各地の沖釣りで盛んに釣られている。これには理由があって、実は前回ブリ類のところで触れた養殖業の衰退が関係しているそうだ。
 ブリの幼魚であるモジャコとメダイの幼魚はよく似た条件下で育つため、養殖魚の元となるモジャコ(ブリ~ハマチの幼魚)を獲る際にメダイの幼魚が混入してしまうのだそうだ。そして、ここでメダイの悲劇が起こるのだが、養殖業者にとってメダイは商品価値がない魚だから、発見されると除外されてしまうのだ。しかしそれは「捨てられる」のであり、一度捕獲されてしまうと彼らは恐らく生きてはいないか、成長できなかったであろう。
 それが現在では、ハマチの養殖量が減り、それと共にモジャコ漁が減って、本来の生態サイクル内に入るメダイの幼魚が増え、その結果、資源量が回復しているのだそうだ。
 沖縄の美ら海水族館の深海コーナーにも展示されているということから、沖縄近海にも生息しているのは間違いないだろうが、実際に釣りの対象魚として成立し、「狙って釣っている地域」を調べてみると、南は種子島あたりから始まって太平洋側は伊豆七島近海あたりまで、日本海側は新潟県沖あたりまでがそれに該当する。
 関西一円では、日本海側に大型が多く、最大で1m近いサイズがゲットされているのだが、太平洋側、特に和歌山県田辺沖で釣れているサイズはほとんどが65cmクラスまでであり、何故か小さい。


■メダイの釣り味■

 メダイは引きが強烈で、それがなかなか衰えずに下層から上層まで抵抗し続けるファイターだ。ブリほどのスピードはないのだが、トルクフルな引きが執拗に続く。これは体内に浮き袋を持っていないために、水圧の変化に強い体質となっているからのようだ。それとは反対に口腔内の肉質が柔らかいため、途中で口切れが起こって、ハリ外れるこることもある。その点、口が硬い上に後半になると浮き袋が膨れてだらしなく腹を返すマダイとは違って、船縁までハラハラ・ドキドキさせてくれるのは好敵手の証だ。

 しかし、生態の不思議と同じく、釣り味も掴み所がない要素があって評価が難しい。
 他地域のことはあまり知らないが、ボクの向かう若狭湾一帯では、一昔前であれば10号ハリスの5本バリ仕様の胴付き仕掛けでも十分な効果があり、一船30~40本という釣果もよくあって、釣れすぎて嫌になることもあったそうだ。
 その為、魚種の少ない冬場の「お土産釣り」としての位置づけであることが多かったようだが、次第に荒食いの機会が減って専門に狙わなくては釣果が伸びないようになってきたそうだ。
 そして、近年では仕掛もハリスが長く、より自然にエサが流れる天秤ズボ仕掛にしか反応しない魚が増え、ハリスも若干細くした方が食いが良くなるようになっているようだ。
 更に今シーズンに入ると天秤仕掛への反応も悪くなり、よりエサが自然に流れる「完全フカセ」での釣果のみが目立つようになってきた。同様にハリに着けるエサの種類も、ホタルイカで充分に釣果があったものが、イカの短冊→オキアミと、より食い渋りに強いタイプ、逆に言えばエサ取りに弱いタイプへと変わってきているから、その面でも難易度が増している。
 それらに対しては、各船の船長も同意見を述べているし、「魚探に反応がある位置にポジションを決めて釣りを始めても、群れが薄いために警戒心が強いせいか、アンカーを降ろした音に驚いてすぐに散る。」という話も聞いたことがあるから、個体数が減ってスレた魚が中心になっているのは事実であろう。
 船から釣る場合は「完全フカセ」を至上とするボクのような釣り師だと、より繊細になる傾向は喜ぶべきことなのかも知れず、その立場であれば釣り味の評価は高くなる。しかし、以前の若狭湾を知る釣り人や、他地域で竿を出す釣り人であればそんなに高くないのかも知れないから判断が難しい。
 だから、釣り味の評価は近年の若狭湾における「完全フカセ」での釣果であれば10段階の7.5をつけたいが、天秤ズボであれば6、胴付きで数が釣れる場合は5.5くらいが正当な評価であろうか?。そんな感じがする。

●ウマそう…●



■実釣時のエピソード■

 生まれて初めてこのメダイに出会った釣り人が口にするであろう台詞は、「何やこのヌルヌルは!」だと思う。それくらいこの魚の体表は多量の粘液で覆われている。その様子を表現するのなら、お笑い番組で「ローション・プロレス」というヤツがあるが、あれと同様の、したたり落ちるほどのヌルヌル具合なのだ。
 これは体表を細菌や寄生虫から守るために出すそうだが、浮き袋がないことと共に、これがあるために、行動範囲が広いのかも知れない。だが何れにせよこれが一旦ボートにしたたり落ちてしまうと、滑ること滑ること。荒れた日などは危険が伴うほどの滑りだ。
 このブログでもメダイを手に持った写真を何度か掲載しているが、その際に、どうしてもこのヌルヌルがウエアに付着するので、その後取るのに一苦労する。しかもこのヌルヌルはしたたったその時ばかりでなく、執拗だ。
 ヌルヌルがウエアに着いた後の処理は、ブラシを使って入念に洗い落とすようにしている。とある日もそのように洗い、乾燥させたのだが、ウエアを仕舞う際、一部に洗い残しがあって、ヌルヌルがガビガビッとなっいていることに気付いていた。しかし、「まぁいいや」と、あまり気にせずにいたのだが…。
 そして後日そのウエアを使用したのだが、途中でパラつきだした雨の水分に反応したガビガビが元のヌルヌルに復活していたのだ。慌ててティッシュで摘むように拭き取ったのだが、今度は綺麗に取れ、不思議と跡が残っていなかった。何とも不思議なヌルヌルである。
 韓国の化粧品でカタツムリのヌルヌルを使った物があって、好評だと聞くが、このメダイのヌルヌルは何かとてつもないパワーを秘めているに違いないとボクは思っている。しかし、「今から特許をとろうか?」と思ってもその能力もないし、乱獲でメダイが減ることも嫌だ。だからこの話は内緒にしておきたかったのだが…?。


■メダイの食い味■

 希に寿司ネタで提供されたことを経験しているが、そんなに感動があったワケではない。それが一変したのは一昨年の、秋のことだった。
 「メダイっていう魚を釣ったから、レシピを調べといて。」と、船上から妻に連絡しておいたのだが、帰宅すると妻が嬉しそうに「何やっても美味しいんだって。」と言うので、翌日に、まずは定番である刺身と手巻き寿司にして味わってみた。そしてこれが抜群にウマかったのだ。
 それでも80cmで10kgくらいはある魚なので、当然身が余る。それを翌日は鍋、更に残った身を西京味噌に漬け込んで5日後に味わったのだが、これまた全て激ウマであった。また、捌いた時点で出るアラに加えて頭部は兜割にして煮付けたのだが、これもまた絶品であった。そして、それ以降、我が家では「マダイは要らないからメダイを釣ってきて!。」との声があがるようになった。
 この魚の良さを付け加えるのなら、「不思議なことに骨が柔らかく、スッと刃先が滑るように切れてしまう」ということを挙げておきたい。頭部にしても同様で、マダイのように出刃を当ててハンマーで殴るような、危険なマネはせずともよく、スパッと割れてくれるのだ。その意味でも有り難い存在である。
 食したサイズは小は55cm、大は91cmまでと、ワイドだが、マダイのように大きくなればなるほど加速的にマズくなることはないが、80cm以上は身に入った筋が少しだけ気になる。食味的なベストサイズは75cm前後で、脂の乗りきった味が好みであれば、年末までに釣った物がベストになり、それ以降はやや脂が落ちて少しだけあっさり気味にはなるが、身のコクなど、基本的な味わいはそんなに変わらない。
 因みにボクの通う若狭湾周辺を中心に鳥取沖~新潟沖の個体の評価が高く、市場価値も高いそうだ。それに反して太平洋側の評価はここまでに及ばないので、地域差があることを考慮した方がイイのかも知れない。

 上記理由から、若狭湾のベストサイズであれば、食味の評価はかなり高く、10段階の8.5をつけたい。また、前評判の高い地域産であれば、それ以上の大型やそれ以下の中型サイズでも8をつけて構わないと思う。


■総合評価■

 釣ることよりも食いたくなる魚の一つであることから、総合評価は10段階の8としたい。ただし、上述したように近年の若狭湾での状況下においての判断だ。
 ここ近年の若狭湾では資源量が減る傾向にあるだけに、今後の動向が気になる存在である。
 釣り人は職漁者ではないので「元を取る」ことを優先する人は少なく、ゲーム性も求めるハンターであり、「釣れ過ぎては面白くない」が、「釣れなくては辛い」というジレンマを抱えている。若狭湾におけるメダイの現況は「掛かればデカイが、ある程度のテクニックが必要」な状態なので、バランスが取れた状態であるのかも知れず、喜んでイイ状態なのかも知れない。

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釣り味・食い味 ~その2(ハマチ~ブリ編)

2013-04-20 12:30:00 | 釣り一般
■青物の代表■

 日本の青物を代表し、出世魚を代表する魚でもあるブリ。その出世魚としての呼び名は、関西では釣りの対象魚となる小さい方からツバス(40cmまで) → ハマチ (60cmまで)→ メジロ (80cmまで)→ ブリ(80cm以上)と呼び、関東ではワカシ → イナダ → ワラサ → ブリと呼ぶ。他の地域でも呼び名は様々だが、四国ではメジロ(ワラサ)サイズに相当する呼び名がないので、「ハマチが釣れている」との情報が流れていて「な~んだハマチかよ」と思っても、実際は70cm級だと言うこともあるので注意が必要だ。
 スプリンター系の魚体は砲弾型で、色彩も背が青、腹は白銀で、その中間に黄色のラインがあって、F1や耐久レース、あるいはバイクレースでお馴染み?の「ロスマンズカラー」のようだ。ボクにとっては少年時代に釣魚図鑑を眺め、あこがれていた魚の一つであった。だから、初めてこの魚を釣った際に、釣りたての色彩を見て「なんてカッコイイ魚なんだろう。」と感動したことを思い出す。
 ボクが釣りを始めた少年時代は、現在ほど釣れている魚ではなかった。一説によるとこれは養殖業の衰退が関わっているという。
 養殖と言っても、ブリ類は卵からふ化させる完全養殖ではなく、モジャコと呼ばれる稚魚を採取して大きく育てる方法がとられているので、本来は畜養と呼んだ方が正しいのかも知れない。そしてこの養殖業は市価の下落と反比例して上昇するコストと、赤潮などの水質汚染による大量死の影響で一時ほどの勢いは既に無くなっている。その結果獲られるモジャコの量が減って天然の資源量が増えたことが、釣り場への回遊が増えた経緯だと言われている。


■ハマチ~ブリの釣り味■

 この魚(ブリ類)へのアプローチの中で、一番簡単な方法が、船(沖)釣りで、サイズが小さいほど数が出るし、大きくなるほど難易度が増すのは言うまでもないことだろう。実際に福井県鷹巣沖の船釣りでは、毎年のように晩秋になるとハマチクラスの三桁釣果(一船単位)が続くが、メジロクラス以上だとそんな釣果は起こりえない。そのことでサイズ別の難易度の違いが証明できると思う。
 ハマチとその下のツバスを含めたクラスは、居る場所でさえ竿を出せれば、ほぼ間違いなく食ってくる。本来、ブリ類はフィッシュイーターである一面を持っているが、このクラスだと、オキアミへの反応が良い状態である確率がかなり高いから、マキエサを切らさず、その遊泳層を攻めることさえ出来れば、それこそ8号以上の太いハリスであっても、短いハリスの胴付き仕掛けでもお構いなしで食ってくるし、サビキ仕掛の類である疑似餌への反応も良い。だから、ある意味アジやサバと同じような感覚で釣れてしまう魚だ。(もちろん標準的な活性に於いて)
 この傾向は磯からグレなどの上物釣りの外道で釣れる時も変わらず、この魚が欲しければ、回遊を感じたら如何にオキアミのマキエサを切らさずに、自身が立つ磯の周囲に足止めするかが数を釣る鍵となる。

 その上のメジロクラスだと、少し話が変わってくる。まずハリスの短い胴付き仕掛では釣果が得辛くなり、船の直下を狙う場合は天秤ズボ仕掛の方が釣果が伸びるようになる。そして更には、直下よりも仕掛が潮下方向に自然に流れる完全フカセ釣りの方が釣果が伸びることが多くなってくる。その原因は、サイズが大きいほど生存競争を勝ち抜いた魚であるために、警戒心がある程度強まっていることと、個体数が減っているから我先に競い合って無闇矢鱈にエサをとる必要が無いためだと思われる。また、よりフィッシュイーターの傾向が強まって、小魚を追うために、オキアミへの反応が鈍くなる群れも垣間見られるようになるが、こういった群れの魚は、ジギング(ルアー)や、活きエサを使った「のませ釣り」以外では釣り辛くなる。
 そして、更にその上のブリクラスになると、ボクの行動範囲の中ではオキアミのエサで専門に狙うことはなく、メジロクラスに混じって時折ドカンッ!と釣れてくる程度になる。

 強引で知られるハマチ~ブリではあるが、上述したように小型であっても太ハリスを気にせず食ってくるから、掛かればガンガンと巻き上げれば良いだけなので、やり取りはかなり単調になる。だが、メジロクラス以上になると、引きとハリス強度のバランスが釣趣的に良くなってくるので、やり取りは、もう少しスリリングなモノになる。ただし、活きエサやジギング(ルアー)で狙う場合は更に太いハリスが使えるから、どうしても単調な「力対力」の展開になる傾向のままではあるが…。
 この魚は最も経験を積んでいるであろう、最大のブリクラスになっても「頭の良さ?」をあまり感じない。
 例えば、磯の上から釣る場合はもちろんのこと、船から釣る場合であっても頭の良い?魚であれば、海中にある根(上からは見えない大小様々な岩礁)に向かって疾走して岩穴に潜り込んだり、窪みに張り付くといった行動をとる、あるいは岩礁の合間を縫って走ることで危機を回避するのだが、ブリ類は基本的にそのような行動をとらない。一定の層をひたすら全力で突っ走り、下層に岩礁があってもその上を通過する習性があるようだ。
 だから釣り人は自分が使用しているハリスに合わせたドラグ設定を行い、あとは相手の動きに合わせて落ち着いたやり取りを心掛ければ獲れる確率は高い。
 磯からグレなどを釣る”上物釣り(うわものつり)”の外道で掛かった場合も同様で、根に入ったりしない習性を理解して、一番強烈なファーストランをオープンベイル(スピニングリールの道糸をフリーで放出すること)でかわし、あとは引きに合わせてオープンベイルと、レバー解放(レバーブレキ付きリールの場合)やドラグ調整をすることで相手の引きを凌ぐことができれば、ゲット率は低くない。ボクの磯での記録は82cmだが、これは2号ハリスで釣ったし、釣り友が同寸を1.75号で釣っていることでもそれが理解できるだろう。(どちらも偶然やラッキーといった感じではない。)

 「大型であれば、パワーに圧倒される面もあるが、やや単調で、無理な引っ張り合いをしなければゲット率が高い」といったところから判断してみると、釣り味はメジロクラスで10段階の6、ブリクラスで7がボクとしては妥当なところだと思う。(それ以下のクラスは評価外。)


■実釣時のエピソード■

 奇しくもマダイと同様のパターンになって申し訳ないが、この魚は寄生虫が入る率が高い魚だ。この寄生虫は「ブリ糸状虫」というのだが、ブリの成長サイクルに合わせて成長→産卵するそうだ。よく目にするのは春以降の水温が上がる時期で、逆に冬場は目立たないが、実のところは常在しているらしく、冬場に発見し辛いのは、その時期に形態が変わっているからだそうだ。
 だから、寄生虫が棲み着いているのは「天然の証」と言うべきであり、逆にこれが夏場であっても入っていないのは、発生しないような餌を与えられた「養殖物」と判断した方が良いとも言われている。ただし、この寄生虫はアニサキスとは違って、知らずに生食しても人に一切害を及ぼさないということだから、見た目は兎も角、食べた後に、どうこうなるということはない。
 今から、10年以上前、5月中旬にいつもの白石グリで、メジロクラスが入れ食いになったことがあった。サイズ的に、いかにもウマそうで、喜び勇んでの「お持ち帰り」となったのだが、このほとんど全てに数多くの寄生虫が棲み着いていた。ウチのキープ数は2本で、その他はもちろんお裾分けもしていたから、発覚後は近い知り合い平謝りしたことは言うまでもない。
 よくよく考えてみると、例えば日本海側の漁師さん達だと12~2月の旬に積極的に狙って獲るが、それ以外の季節は手をつけたがらない。その理由がこの寄生虫であり、これによって市場価値が無くなって「二束三文になる」からだそうだ。

●実は、これにも”虫”が沢山入ってたのだ。●


■ハマチ~ブリの食い味■

 「これほどサイズや季節によって評価が変わる魚はいないであろう。」そう思うほど味は変わる。
 小さいツバスクラスは時期によって多少の差はあってもほとんど脂が乗っておらず、スカスカなので、料理法は味噌煮などで無理に味を入れる方法がベストだと思う。伝聞によると初夏のツバスは脂が乗っているとも言うが、ボク自身はそんなツバスを釣ったことがないから、真偽のほどは判らない。もっとも、このサイズをボクが狙って釣ることはなく、もし釣れてしまった場合は、ハリを飲み込んで血を噴いている個体以外はキープせずにリリースするようにしているが…。
 では、ハマチクラスだとどうなるのか?。
 ハマチと言えば、寿司ネタでは定番になっているが、真冬以外でも脂が乗っているのはほとんどの場合で養殖物であって、天然物はこのクラスになっても、普段は脂分が少ない。真冬近くになり、水温が下がればそこそこ脂が乗ってくるし、成長が早い魚だけにこの季節になればハマチと言ってもメジロサイズ近くになってくるので、話が変わってくる。
 だが、本当に食って「ウマい」となるのは、個人的な好みかも知れないが、晩秋以降、晩冬までのメジロ~ブリサイズだと思う。この時期は「旬」であることから当たり前の話ではあるが、同時期に釣れる他の青物の中で一、二を争うほどウマくなる。平造りにして食べても良し、鍋や、しゃぶしゃぶで食べても良しで基本的に何の料理で食ってもウマいのだが、中でも一番ウマいと思うのが「カマ」と呼ばれる、エラブタを受ける側の半月状になった部位の塩焼きだ。(思い起こしてもヨダレが出そうだ。)
 だが、この一番ウマい季節のメジロ~ブリサイズは市場価値も高い。だから漁師さんが懸命になって追い回すせいか、残念なことにボク自身がこの時期に得た釣果は極僅かだ。

 上記から、食い味はハマチクラスであれば冬場のみ10段階の6で、それ以外の季節は評価外。メジロクラス以上は普段が6で、冬場のみが8という評価をつけたい。



■総合評価■

 気まぐれな青物の中にあって、ほとんど毎年回遊があり、釣りの対象魚として安定した資源量がある。その結果、昔は考えにくかったが、瀬戸内海でもメジロクラスが“狙って釣れる”ようになっているほどだ。だから、ポピュラーな魚で親しみ易いうえに強烈な引き味で釣り師を楽しませてくれるから、有り難い存在ではある。だが、釣り自体は単調な展開になることが多い。
 食味についてもサイズムラ、季節ムラが激しい。そこで、総合評価はハマチクラスは10段階の4.5、メジロクラスであれば6、ブリクラスで7.5としたい。
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釣り味・食い味 ~その1(マダイ編)

2013-04-13 12:30:00 | 釣り一般
■長らく釣りを続けていると…■

 今年で齢(よわい)50年。思えば人生の半分はとうに超えたはもちろんのこと、もしかすると3分の2を越えたのかも知れず、自分の”オッサンさ”を改めて理解するのだが、重ねた年齢の中で釣り人だった時間は30数年に達している。
 しかし、何分にも飽き性なので同じ魚を狙って釣りを続けてきたワケではない。
 小学3年生に近所の港でアジ・サバ・イワシを狙っての”サビキ釣り”から始まった釣りは、中学生になって、夏場はキス、冬場はカレイやアブラメ(関西の方言で、アイナメのこと)を狙う「投げ釣り」に発展し、高校生前半には防波堤からの「夜釣り」でチヌを狙うようになっていた。
 ここまでが青少年期で、しばらく”陸釣り?”が忙しくなって、数年のブランクがあったが、20代中盤に防波堤でのチヌ、グレ釣りから再びチャレンジが始まった。そこから次第にそれらを磯釣りで狙うようになり、それと並行して底物のイシダイ釣りにもチャレンジしていたり、ブラックバスを狙って滋賀県の琵琶湖や奈良県の池原ダムへボートを車に乗せて通っていた時期もあった。そして、近頃の船釣り(沖釣り)や渓流釣りと、覚えた釣りは多岐にわたり、釣り上げた魚の種類は外道を含めると相当な数に昇っている。

 そんな釣り歴を歩んできたから、一部に存在する、「自身のやっている釣りを絶対化して、その中での価値観で他の対象魚や釣法を下に見る」釣り人とは対照的な目を持っていると自負している。
 また、基本的に「釣った魚は食べる」主義だから、ある魚が季節や産地によって、世間で思われているほど、ウマくなかったりすることもよくあるし、その逆もあることを知っているつもりだ。
 そこで今回から数度にわたり「釣り味・食い味」と題して、大胆にも対象魚についての、ボクなりの総合評価をしてみようかと思っている。
 釣り味は個人の性格や趣向で大きく変わるので、「簡単だけど、奥が深くて面白い」という釣り人いて当然だし、魚によっては「食い渋った状況」では全く違う習性になることがある。
 また、食味についても同様に趣向があるし、季節によって評価が大きく変わることもある。だから、ツッ込みたくなるようなこともあろうかと思うが、あくまでも釣り味は標準的な活性時についての話であり、そのランク付けに関しては「獲るための難易度が高く、釣り人側の努力がより必要になる魚」ほど高くしている。
 そして食味は、季節ごとの違いに触れた上での「淡泊な味よりも、ハッキリとした味が好み」であるボクの舌での判断であること、更に付け加えるなら、ボクが魚類学とは無縁であることは言うまでもないだろうから、まぁ、その辺はご理解のほどを…。


 そして今回はマダイから…。

■マダイの釣り味■

 マダイと言えば、「めでたい」の語呂合わせからか、相撲の優勝力士がこの魚を手に持って満面の笑顔で記念撮影をしていることもあるし、七福神の「えべっさん(恵比寿様)」が左手に持っていることからも、象徴的な魚であり、魚の王様(赤いから女王様?)とも言われている。だが、本当にマダイの存在は王様級なのだろうか?。
 面白いことに王様=キング、魚=フィッシュ、すなわちキング・フィッシュとは、ニュージーランドあたりではヒラマサのことを指すから、少なくともその地に住む人にとっては王様でないことは確かなのだが…。

 まずは釣り味を検証してみる。
 これは釣り雑誌のカメラマンから聞いた話だが、水族館のエサやりで、撒かれたエサの中へ真っ先に突っ込んで来てガバガバと口を使うのがマダイだそうだ。そしてそれは釣り人としても頷ける話だ。
 例えば山口県萩沖ではウキ流し釣りといって、オモリ負荷70号以上でサイズは1mほどもあるウキを使って釣ることが多いが、この大ウキをスポンスポンと沈めてくれる魚の一つがこのマダイであるし、磯からのフカセ釣りでは小型のウキを目にもとまらぬ速さで引き込み、同時に竿、あるいは釣り人の腕ごと引っ張り込んでゆく魚でもある。そして、勿論、船からの天秤ズボ釣りその他でも大きく竿を絞り込んでくれる。だから、食い意地の張った魚であることは間違いなく、その意味では決してハリを口に掛けることが難しい魚ではない。
 では、その先の、掛けてからのやり取りではどうだろうか?。
 マダイを船から狙う場合、日本海の若狭湾周辺では5~6号のハリスが中心で、それ以上になると食いが極端に悪くなる。上述の萩沖では8~10号でも入れ食いということもあるし、逆に関東では2.5~4号というから、全国平均は5号といったところだろうか。
 しかし、磯釣りでのやり取りを経験したことがある人だと解ると思うが、マダイは根(水中の岩礁)に向かって走り込んだり、あるいは根そのもの潜ったりする習性はないので、リールから道糸を大きく送り出してやっても「根に擦れて仕掛が飛ぶ」ことは少ない。したがって走りたいだけ走らせて弱らせれば、後は比較的簡単に獲れる魚だ。だから、もっと細い糸でも獲れる確率は高い。しかも、間違って指を口に入れると指が潰れるかというほど噛む力がありながら、歯自体は鋭くもなくザラついてもいないため、ハリを飲まれていてもハリスが擦れて切れる率は高くない。
 その実、ボクの細糸記録だと長崎県五島列島の福江島でグレを狙っていて獲った75cmは1.7号ハリスでのやり取りだったし、その昔、取材で訪問した徳島県古牟岐の磯ではグレ釣り名人の小里哲也さんが、チヌ狙いの1.2号ハリスで85cmをボクの目の前で仕留めている。(しかも、驚くことに冗談を言って笑いながら…)
 しかも、この魚は水圧の変化に弱い。船から狙った場合だと、エサをとった(ハリを咥えた)層で一旦フルスピードで疾走した後は一度休憩したかのように失速する。そこから中層まで引き上げると再び抵抗するが、始めの勢いはなく、そこから更に引き上げると頭を振るだけになる。そして、水面近くまで引き上げてくると浮き袋が膨れてしまい、完全にバランスを失った姿勢になって「ただ重いだけ」に変わる。
 これが磯から狙った場合になると、掛けた層からの水深差が船よりも少なく、ハリスが細いので、もう少し抵抗時間が長くなるが、他の磯釣り対象魚と比較しても、最初のスピード以外は抜きん出るようなファイト感はない。
 また、数ある釣り対象魚の中でもマダイは、大型に出会い易い魚の一つだと思う。個体数は稚魚放流その他の努力で安定していて、それらが順調に育つことも多いのか、船で狙う限りであれば、通ううちに大型の80cm級を手にする確率は高い。それは、例えば舞鶴辺りの釣り船が発進しているホームページ内の釣果欄で、春の乗っ込みと秋の落ち前のシーズンの釣果を確認すればすぐに判る。定員4~5人という中、70cm級を2~3人が釣り、そのうち誰かが80cm級を釣っている写真は当たり前のように掲載されているのだ。(ただし90cmオーバーは極端に個体数が減るから、幸運が必要になる。)

 結果、上述した点から総合的に考えると、釣り味は10段階の6程度だと思う。(10が最高)

●昨年釣った73cmのマダイ●


■実釣時のエピソード■

 マダイには一定の割合で寄生虫が着いている。それは口の中にいるのだが、そいつが気持ち悪い。容姿は「歩いている状態のダンゴムシを平たくしたような」というべきか、「グソクムシのような」というべきか、はたまた「フナムシのような」というべきか、そんな形だ。色は「美白をした肌色」っぽいのだが、抱卵しているメスは青緑色の卵が透けて、より気持ち悪さを増している。そしてそのメスが大きく、大人の親指ほどのサイズで、周囲にそれよりも半分以下の小さなオスが、何匹か寄り添って、逆ハーレムのようになっていることが多い。(気持ち悪いので写真は載せないが…)
 正式名称は「タイノエ」と言うのだが、食べても害はない、と言うか、食べられる位置には着いていないので気持ち悪さは兎も角、安心して?それが着いていたマダイ自体は食べられる。
 そして、マダイ釣りのエピソードと言えば、ついこの寄生虫がらみの話を思い出してしまうのだ。それは愛媛県の日振島でのことだ。
 グレを狙っていた際、春先に入って食い渋るグレに反して、マダイのアタリが続いたことがあったのだが、数匹釣る内の一回でそれが起こった。例によってマダイのそれと解る、竿ごと引っ張り込むアタリがあって、しばらくやり取りした後に急に抵抗感が無くなってしまった。まさしくそれはハリのスッポ抜けだったのだが、そのハリ先にこの寄生虫だけがぶら下がっていたのだ。
 つまりは、「マダイがエサを食う→ボクがアワセを入れる→マダイの口腔内には刺さらず、寄生虫にハリ掛かりする→マダイが疾走する→やり取りが始まる→マダイが口を開ける→寄生虫だけが抜け出る」という流れでこうなったのだ。この時以外にも、もう一度だけ同じ体験をしているが、これも磯釣りでのことであることから、恐らくハリのサイズが船で使う際よりも小さいためであろう、と思っている。(大バリだと寄生虫ごと貫通するのだと思う。)
 ウソのようなホントの話だが、同様の経験をした釣り人の話を数回聞いているし、記事を読んだこともある。だから釣りをする人の間では、少しは知られた話ではあるのだが…。


■マダイの食い味■

 続いて”食い味”つまりは食味の話に移ろう。どんな料理にも合う蛋白な味わいで、それでいて深みがあるというのがマダイの一般的な評価だと思う。しかし、ボクの場合は好みに合わないのか、それとも巡り合わせが不幸というべきなのか、「これはウマいっ!」と唸るほどのマダイに出会ったことがない。釣った場所は覚えているだけでも、若狭湾~福井沖の日本海をメインに、和歌山県紀伊半島沖、長崎県五島列島、山口県萩沖から瀬戸内海まで、各地に広がり、季節は四季の全てで釣っている。ただし、この中に高級マダイの産地である、紀淡海峡の加太あたりの魚が含まれていないから上述の感想になるのかも知れない。
 マダイの”食べ頃サイズ”は40~45cmと釣り人の間で言われており、それより小さければ食えるところが減って料理の種類が限られるし、逆に50cmを越えてくると全長に正比例して旨味が減って不味くなり、70cm以上は確実に筋張って食感も悪くなる。
 また、個体差があるものの、産卵期が5~6月なので、4月中旬から6月中旬までは、腹に抱えた真子(卵巣)や白子(精巣)の成長に合わせて栄養がとられて身の旨味が減り、真子や白子が最大に成長する頃には”はらす”と呼ばれる部分は「骨と皮」だけの状態になる。しかし、四季を通して一番大型が狙えるのが「乗っ込み」と呼ばれる、産卵のために浅場に入ってくる時期だから、釣り人はジレンマを抱えてしまうのだが…。
 マダイの旬は春と言われているが、上記の理由からそれは、初春の”腹が大きくなり始める直前”に限定した方がイイと思う。

 食味の評価は抱卵時期を除いた基本状態であり、個体差が判り易い刺身での判断を中心としているのだが、その刺身での味わいは、人によって「締めたての歯ごたえのある状態がイイ」とか、「一日あるいはもう少し寝かせた方がイイ」とか、意見がある。ボクはそれに倣って、ほとんどを試したことがあるが、歯ごたえ以外の旨味に関しては、言われたほどの差を感じることはなかった。また、最近の船長の中にはサービスで「神経締め(抜き)」と言われる方法で釣った魚の処理をしてくれる場合もあるが、ナイフによる「普通の締め」との差も大きく感じたことはない。

 また、食の好みは「年齢と共に変化する。」とよく言われるが、ボクがマダイを食う場合は、若い頃に好きだった刺身よりも煮付け、それも、最近ではあら炊き(あらの煮付け)が一番ウマく感じるようになっている。しかし、マダイの骨は硬く、特に頭は非情に硬い。したがって、あら炊きの下処理である兜割(かぶとわり)は大変な作業になる。また、ウロコ取りも大変な作業で、恐らく釣った魚の中で一二を争うほど硬くて周囲に飛び散るのがマダイのウロコだと思う。たから、三枚おろしを含めた料理全般の下処理で苦労する魚だ。(その他、刺身にしてもウマくない大型魚の身は、西京味噌を使った”味噌漬け”にすることをお薦めしておく。)

 そんなこんなを総合的に考えると、マダイの食味は釣り味と同じ10段階の6程度に評したい。一般の人やマダイを専門に狙う人にとっては意外な結果かもしれないが、要は「もっとウマい魚が他にもある」ということから、相対的に考えての結果だ。勿論、最初に記したように食味には好みの差があることは言うまでもないが…。


■標準点やや上の魚■

 奇しくもマダイは釣り味・食い味ともに「真ん中やや上」という評価になった。これを低いとみるよりも、「全ての魚の中心指標となる魚」捉えた方がイイのかも知れない。何度も言うとおり、ボクの、やや「独断と偏見」が作用しているために各人には反対意見もあるかと思うが、今後も様々な魚を評価してみたいと思うので、乞うご期待?を!。

 


 
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釣りをしていて「怖い目」に遭った話

2012-06-16 12:30:00 | 釣り一般
■バス釣り■

 その昔、今から15~6年くらい前の一時期、ボクはブラックバス釣りに凝っていた時期があった。
 「やり出したらとことんまで」のボクは、ロッド&リールはもちろんのこと、当然?のように小型船舶操縦士免許を取得し、アルミ製の長さ12フィート(約3.6m)の小型ボートと10馬力エンジン、魚群探知機諸々を用意して、当時は琵琶湖や奈良県の池原ダム等でよく竿を出していた。
 表題の「怖い目」とは、そのバス釣りの最中であり、好きなポイントだった琵琶湖の湖東、近江八幡にある伊崎不動で起こった出来事だった…。


■釣り人生で1、2を争う「怖い目」■

 当時、この近江八幡の堀切港から伊崎不動と呼ばれる琵琶湖に突き出た半島に掛けてのポイントは、春の産卵期に大型が釣れることで知られている存在だった。事実ボクは、当時としては大型の56cmのブラックバスをここで釣っていたので、毎年春の産卵シーズンは、浅場へと上がってくる大型を狙って、近くの浜からボートを降ろして攻めに行くことが多かった。
 しかし、好調だった何年かを過ぎると、突然魚が減って、なかなか釣れないポイントへと変貌していった。その原因は今から考えると、川鵜の仕業だったものと思われる。川鵜を始めとする海鵜など奴らの仲間の姿を見たことがあるだろうか?。何しろ奴らは水の嫌いなカラス、水面の浮遊物しか食えないカモメなどとは違って泳ぎがウマく、一度水中に潜ると数十mは出てこないほど息がもつ。この川鵜が伊崎不動周辺に異常繁殖し始め、そこら中の魚を喰いあさっていたのだ。何しろその数はものすごい勢いで増えているようで、周囲の山は大量に排出される糞による作用で”禿げ山”と化すほどだったのだ。

 何年前だか正確ではないが、ある年の春、ボクは釣れにくくなったことを承知の上、この伊崎不動の付近で「一発でもイイから大きいのを!」と朝から気合いを入れた釣行をしていたのだが、予想通りと言うべきか、朝から釣れない静かな状況が続いていた。
 そのうち、岬の付け根にある堀切付近でボートの動きが慌ただしくなってきた。 最初のうちは、「ライバル出現か?」と、思っていたが、そのうちに「パーンッ! パーンッ!」と銃声が聞こえ始めた。
 「川鵜の駆除を始めたのかな?」と思いつつ、ボクは気にせずそのまま釣りを続けていたが、しばらく経つと銃声が鳴った後に、ポトポトと水面を叩くような音がするようになった。よく見ると、何かが雨のように周囲に散らばって落ちてくる様子だ。しばらく考えた後に合点がいった。何とそれは散弾銃の弾が水面を叩く音だったのだ。
 ボクの心にはだんだんと恐怖心が沸いてきたのだが、それでもどこかに「まさか」という思いもあった。しかし、それまでの「ポトポト」という音が「カラン カラン」というボートのデッキに落ちる音に変わった次の瞬間に、恐怖は体に震えがくるほどに変わった。それと同時に痛くはないのだが、ボクの体に当たり始めたのだ。
 こうなれば完全に釣りどころではない。慌てて退散の準備を始めたボクは「這々の体(ほうほうのてい)」でその場から逃げ帰るのであった。

 まさか、ボクが熊に見えて銃口をこちらに向けていたのではなく、上空方向に向けて撃った散弾が、放物線を描いて落ちてきたようだが、「もしも」を考えると、あまりの恐怖にそこから遠ざかった沖合で、しばらくガタガタと震えていたのであった。
 幸いにもボクは、幽霊やお化けの類を信じないタイプなので、夜釣りで「お化けを見た」という体験などは全く無く、他人からそんな話を聞いても怖くもないが、日頃から「人間のすることの方がよっぽど怖い」と思っているだけに、それを確信するには十分な釣行だった。
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釣りをしていて「ドエラい目」に遭った話

2012-06-02 12:30:00 | 釣り一般
■磯釣りの事故■

 年に何度か、釣りをしている際に遭難したニュースが流れるように、不幸にも大波さらわれたり、転落したりで命を落とす人が居る。中でも多くを占めるのが、磯釣りをしている最中の事故だ。これには昔から、よく言われている「事故が起こるパターン」がある。


 第一に「ライフジャケット(救命胴衣)」を装着していなかったケース。
 このケースは、着衣のままで落水すると、水分を含んだ衣類が手枷足枷となって思うままに泳ぐことができず、最終的にはおぼれてしまうというものだが、これは車のシートベルトと同じで、ライフジャケットを装着していれば大事故をある程度防ぐことができる。だから、日頃から装着を習慣づけ、「これが無くては釣りが始まらない」という、釣り道具の一部としてとらえることが大切だと思う。現在では、ライフジャケットの装着がなければ船には乗せてくれない渡船店がほとんどだが、渡船利用のみとは限らないから、その場合は自己管理能力が問われる。
 以前のように雑誌を始めとする紙媒体が情報の主体であった時代であれば、啓蒙の意味を込めて定期的に特集記事を組んで事故防止につとめていたのだが、ネット中心の現在、釣果情報のような「見たい記事」だけを選ぶようになった、今の若い世代に十分に浸透しているかどうかは心配されることでもある。
 また、ライフジャケットの装着時には必須の条件がある。それは必ず通称「股ひも」と呼ばれる、ベルトを股間に通すことを忘れないで欲しいということだ。このベルトを通しておかないと、もし落水した場合に、スポンと体がジャケット内から抜け出てしまう危険性があるからだ。これも雑誌では昔から啓蒙していたことであり、ボクらが実際に釣り雑誌での写真撮りを行った場合、もしこのベルトが通っていなければ、その写真はNG=掲載不能になるほどの徹底ぶりだったし、それは今でも続いているほど重要な点なのだ。

 もう一つのケースとしては、自己判断による無理な釣行があげられる。
 一言に磯釣りと言っても、渡船を使って主に沖磯や人が陸からは入ってこられないような磯への釣行と、歩いて自分の足で入る地磯への釣行とがある。
 渡船を使う場合、遙か沖合にある台風や熱帯低気圧からのウネリが入っている場合は数日前、少なくとも前日夜7時頃の天気予報時に当日の海が荒天だと判断されると、出船停止の船長判断が伝えられる。だから、よほどのベタ凪でもない限り前日の7時過ぎには出船の確認を釣り人側からとるべきだが、困るのは、思った以上に波が落ちなかったり、変わると思っていた風向きが変わらなかったりで、当日の朝、渡船乗り場で中止が発表される場合だ。
 前日までに中止が判れば、当然、予約していたエサをキャンセルすることができるが、当日朝の場合は、もう購入済みであることから返品するわけにも行かず、そこに来るまでの交通費も掛かっていることから、損害金が大きくなる。そこで、釣り人の中から「どこかで竿出しはできないか?」と、つい考えてしまう人が出てくることになるのだ。
 そしてその行き先が内湾の安全な防波堤程度であれば、問題は少ないのだが、そんなところで釣れる魚と言えば小さな魚が多く、物足りないから、「大きな魚を得るためには潮通しの良い『沖へ、沖へ』、『先端へ、先端へ』」という釣り人心理がつい働いてしまう。
 そこで波が来るか来ないかのギリギリのラインにあり、車を駐めて歩いて降りられる地磯に向かうことになる。実はこの地磯がクセ者なのだ。
 ある程度経験を積んだ漁師さんや船頭さんであれば「この風向きと風力なら、この方向から、こんな大きさの波が来る。」ということが、ある程度予測できるが、一見さんの釣り人の場合はそんなことは出来るはずもなく、あくまでも「見た目」でしか判断できない。しかし、波やウネリの大きさは少し観察しただけでは判断できないのだ。数回に一度の割合で波長が重なって大きくなることを知っているだろうか?。この大波が発生した時にさらわれてしまうのだ。
 また、“地磯”という地形自体にも問題がある。独立礁に立っている場合だと、波高が膝下程度であれば、波は足下を洗いながら一定の方向へと通り抜けてゆく。だから和歌山県の南部(みなべ)地区や田辺地区にある沖磯は、満潮時に水没することで知られているが、その状態でも脚立に道具を乗せて“平気”で釣りが出来るのだ。(当然だが、限界もある。)
 だが、地磯の場合は地形的に波が後ろに抜けないところも多く、見た目にそう高くない波であっても、一旦駆け上がった後は、落下する重力を伴って戻ってくる。これを「引き波」と言うが、地磯の事故はこの引き波にさらわれることで発生することが多いようだ。だから、事故防止のためには素人の自己判断は禁物であり、「諦め」が肝心なのだ。

 渡船利用の場合であっても、各地の船頭さんの中には残念ながら他店を出し抜いて無理な磯渡しをする人も残念ながら存在するし、荒天が予想される状況であっても、少しでも渡せる可能性があるのなら釣り人に「行ける」と言いつつ、当日朝になって「やっぱりダメだった」と、簡単に言ってしまう人も存在する。
 前者の場合は、そのまま渡船店利用での事故に繋がる可能性があるし、後者の場合は地磯での事故の原因にもなりかねない。
 反対に釣り人の安全を考え、グレーゾーンであれば、思い切って中止を言い切る人も存在するし、こちらがどこから来るのかを確認し、「遠くから来るんだったら、リスクがあるからヤメにしたら?」と正直に言ってくれる人も存在するから、まさに「玉石混淆」の状態だ。そこでだが、安全に釣りをするためにイイ船頭さんと巡り会うには、電話でのやりとりで自分で判断するか、他の釣り人に意見を求める、あるいは地元に密着したエサ屋さんでエサを予約&購入し、怪しい場合はそのエサ屋さんで状況を説明して確認を取って判断するということが重要になるのだ。


 そんなこんなで、磯釣りの事故について書いてみたが、僕自身自己判断による無理な釣行をして”ドエライ目”に遭った経験があり、人に対してエラそうなことは言えない。それは…


■隠岐での事故■

 今から20年近い昔、当時妻とは交際中だったが、二人で島根県の隠岐へと旅行と釣りを兼ねて訪問していた最中の話だ。

 隠岐の各島を廻り、最終の地である、中ノ島にたどり着いたのだが、その島の南端にある木路ガ崎(きろがさき)というところに灯台があって、その近くでキャンプをしながら釣りをしようとボクは考えていた。ポツポツと雨が降るものの、雨量は大したことはなく、何よりもそれまでの予定が狂ったおかげで持ち込んでいたオキアミが余っており、最終日のこの日に「それを撒き切ってやろう。」と考えていた。
 灯台からポイントに降りるにあたって、地元の人間にとっては「勝手知ったる道」であるのかも知れないが、ボクには手がかりとして空撮写真しかなく、その写真に書かれている降り口(と言っても写真の上に点線が書かれているのみ)をたどって行った。
 振り返ってみれば、アホなことだが、空撮写真を撮影した時からは時間が経ち、季節も違うから、そんなモノが役に立つハズはない。更に訪問時は真夏であったことから草木が生い茂り、踏み跡を確認してたどってゆくことは不可能だった。そうこうしているうちに、ぬれた草木に足を取られて少し滑落してしまった。落ちた段差の下から上を見上げると、重い釣り道具を持ったまま戻る気にはならず、とりあえず下に降りてエサを使い切ってから戻れば帰りは軽くなるとの判断から、更に下へ向かったのだが、岩伝いに垂直に切り立った岩壁を降りていた最中、掴んだ岩が外れてそのまま5mほどの高さから転落してしまったのだ。
 着地した際に鈍い音と共に両足首から激痛が走った。どうやら重い釣り道具と重い体による衝撃の全てが両足首にかかってしまったようだ。しかし、不幸中の幸いでオキアミの詰まったバッカン(EVA樹脂製の容器)が、ウマく尻と岩の間に入って緩衝材の役目を果たしてくれたおかげで、腰骨や尾てい骨といったそれ以上の箇所には痛みはなかった。

 「捻挫かヒビ程度だろう。」と、言い聞かせに近い自己判断をし、歩こうと思うのだが、どうにもこうにも自分の体が支えられず、タコのような”軟体足首”となってフニャフニャとその場にへたり込んでしまう。それと共に痛みが走り、どうにも耐えられない。
 そこで辺りを見回すと、「天の助け」と言うべきか、「渡りに船」と言うべきか、地元漁師さんの操るサザエ採りの小舟が視界に入った。
 そこへ向けて大声を出すと、有り難いことにこちらに近づいて来る。そして事情を説明すると漁師さんはボクを船内に収容して近くの港まで回航してくれるというのだが…。
 しかし、灯台横には妻が一人で残っているし、マニュアルシフトの1BOX車を、当時はペーパードライバーだった彼女が運転することは危険だ。そのことでボクが困り果てていると、漁師さんが親切にも灯台横まで上がって、とりあえずの連絡をつけてくれると言う。
 「どうやって?」と思ったが、聞けば、何とボクが降りた側と反対には、海から灯台へと行き来するためのステンレス製のハシゴが掛かっているというのだ。
 そこを伝って漁師さんは妻に連絡をとりに上がっていったのだが、船に残ったボクの頭には「こっち側にこんなハシゴがあったのなら、何も無理をする必要は無かったのに…。」と同時に別の考えが頭をよぎった。

 「このままだと、隠岐の島内に入院かも…。」
 そうなると、中ノ島内に取り残される妻のことや、休み明けの仕事の手配、その他のことを考えると、「このままではダメだ。」という、思いが駆け巡る。そして次の瞬間に火事場の馬鹿力が出たのか、ボクは船を這い出て、膝と痛みの少ない右足の一部を使ってハシゴを登り、何とか灯台横の駐車スペースまで来ることに成功したのだ。
 漁師さんには「島には残れない」という事情を説明し、島内の診療所を紹介してもらって、妻の運転で何とかそこに駆け込んだ。
 診断の結果は、「レントゲンの調子が悪く、はっきりとは言えないが、恐らく両足首の骨折だろう。」ということだった。
 診療所の先生の計らいで、便を早めてフェリーに乗り込み本土に戻ったが、その頃には両足はパンパンに腫れ、痛みで脂汗が出るほどだった。しかし、それを表情に出すと、途中の病院に入ることにもなりかねない。だから、自宅のある西宮市内の病院に到着するまでは、心配するる妻に愛想笑いをしながらこらえるしかなかった。
 結局、妻の必死の運転で西宮市内の救急病院に駆け込んだ後に再診断を受けると、見事に左足首が1カ所、右足首が2カ所の計3カ所の骨が折れていることが発覚し、三日ほど腫れが引くのを待った後に手術を受けることになった。そしてこの日から約2ヶ月の入院を余儀なくされ、その間は車いすの生活を送っていた。
 手術と治療の結果、両足で立ち、歩くことができるようになったが、今でも足首の動きは固く、和式のトイレで苦労することもある。


 当時を振り返る度に、地元まで連れて帰ってくれた妻に感謝すると共に、打ち所が悪ければ半身不随以上、あるいは「命までもが…。」という状況だっただけに「よく死ななかったモノだ。」と、思いは巡る。そしてそれ以来ボクは素人判断での釣行は二度とすることは無くなり、渡船店利用でしか磯には上がっていない。多方面に迷惑を掛け、今でも反省することしきりだが、これがボクの教訓だ。
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困った釣り天狗たち ~釣具店編

2012-01-21 12:30:00 | 釣り一般
■思えば色々と…■

 今まで合計すると約30年にもなるボクの釣り人生を振り返ると、様々な釣りに出逢ってきた。一般的にはボクのように淡水~海水、岸~沖まで何種類もの釣りをする人はそう多い方ではなく、自分の波長に合った釣りに限定する人の方が多いように思う。
 ボクはこと趣味に関しては「猪突猛進タイプ」であり、一度興味を持ち凝り始めると、とことん掘り進めることが多く、釣り場での実践と共に知識欲が満たされるまで突き進んでしまう性格だ。しかし、ある時点で自分の限界を感じると、「他に面白い釣りはないものか?」と思い始め、適当な物が見つかるとそれに乗り換えてしまう「移り気」な部分もある。であるから、今までに様々な釣りに取り組んできたワケだ。
 そうやって釣りの経験を積んでいるうちに、様々なところで様々な釣り人に出逢ったが、中でも印象に残っているのは、やはり「変な人たち」だ。

 「釣り天狗」という言葉で表現されるように、釣り人は自慢話をしがちだが、数ある大物を釣った自慢話の中には「尾ひれ」が付いて誇大化してものが混じっていることには、釣りの経験が長くなれば何となく気付くようになってしまう。
 一人で釣行する機会はいくらでもあるから、釣りの世界では証人が居ないことも多く、たとえ大物の写真を撮ったところで誤魔化そうと思えば方法はいくらでもあるし、写しであるはずの魚拓であっても上手下手で大きさが変わってしまうから、記録方法自体にあやふやなところがある。例えばスポーツの世界であれば、対戦相手がいたり、チームメイトがいたりで証人がいるから、自身の腕前(技術)や実績に関して嘘がつけないのとは対照的だ。
 そして大物自体がそれほどの腕前が無くても「運」で釣れてしまうこともあるから厄介だ。ボク自身も、最高記録の魚よりも、その下のサイズの魚の方がパワーがあって取り込みに手こずった経験があるし、「ただただ重い」と感じていただけの手応えだから、雑に扱った結果に上がってきたのが大物だった経験もある。こんな魚をお世話になった釣りクラブの会長は「明日死ぬ魚」と呼んでいたが、感覚的には同意できるところがある魚が居ることは事実だ。こういった魚は差詰め他のスポーツ=サッカーで言えば、「蹴り損なったボールがたまたま敵に当たってオウンゴールになった」といった感じだろうか?。

 大物に関する自慢話が誇大化したり、運で釣れた魚を自慢するくらいであれば、それこそ「かわいいもの」だが、中にはつい苦笑したくなるような困った人達もいる。今回はそんな人々の話の中で、釣具店で見掛けた人達を…。
 

■一流しか買わない男■

 今から5~6年前の話。大阪府内のとある釣具店の船竿コーナーに、メガネを掛け、作曲家のキダタロー氏風のモミアゲを生やした、年の頃なら50代半ばの男が立っていた。ナニヤラ船竿を物色中の様子で、1本の竿を手に取り、パッケージ越しに見ているようであった。そしてその男が、近くに居た店員を呼び止め、標準語調の口調でこう問い合わせた。~以下、ボクの( )部分は僕の心のツッコミ。~

 店員 「ハイ何でしょうか?」
 男  「この竿は何処のメーカーの竿?」
 ボク (「パッケージに書いてあるやろう!」)

 店員 「D社(3大メーカーの一つ)です。」
 男  「ほ~うD社か…。」
    「ぼか~ね~(ボクはね~)、時計ならロレックス、
     電化製品ならナショナルみたいに、一流しか興味がないんだよね。」
 ボク (「それって、いつの時代の一流感覚なの?
      しかも、着ているヨレヨレのコートも一流には見えないんだけど…。」)

 店員 「へ~そうなんですか~?」
 男  「ところでD社って、一流のメーカーだよね?」
 店員 「そうですが…。」

 男  「だったらコレ頂こうかな?」
 店員 「レジの方へどうぞ。」

 そしてその男はグレードとしては決して一流ではない、特価コーナーにあった¥8800の竿を掴んでレジへと向かって行った…。


■二番目を買う男■

 コレはつい先日の話。60台のある男が妻らしき人物を伴い、イカダ竿のコーナーで数本をパッケージから取り出して、曲げたり伸ばしたりをしながら、店員を捕まえてあれこれと話していた。

 男  「11月に○○(日本海の某所)で、52cmの年無し
    (50cmオーバーのチヌ=クロダイ)を釣ってねぇ。」
 店員 「ほ~う、年無しですか。」
 ボク (「そんなの真剣に釣ってたら、そのうちに釣れてくるサイズやけど…?」)
 
 男  「その時に感じたんやけど、今持っている竿では不満があってねぇ…。」
 店員 「それやったらコレなんかどうでしょうか?」

 男は店員が差し出したジッとパッケージに入った竿を見つめていたが、
 どうやら値段の方に目が行った様子…。

 男  「ボクはねぇ、何でも二番目を買うねん。」
    「最初から一番高い物を買うと、
     それが気に入らなかったら次に買う物が無くなるやろ。」
    「だいたいボクはベンツでも一番高いヤツは買わんと、二番目を買うんや。」
    「その感覚解るやろ…。」
 店員 「………。」

 こんな調子で大声で話す男にアホらしくなってボクは店を出たが、「もしや」と思って店外の駐車場を見渡してみた。そこには二番目のグレードであるEクラスを始め、メルセデス・ベンツ社の車は一台もなく、外車すら一台もなかった…。

 以降、ネタ切れの機会に続く…。
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ボクが大キライな言葉と、大好きな”釣りワールド”

2010-05-29 12:30:12 | 釣り一般
■嫌いな表現■

 「太公望達がノンビリと釣り糸を垂れている。」
これは新聞やテレビなど、報道機関で釣り風景を表現する言葉としてよく使われているフレーズだ。だが、ボクはこの表現が大キライだ。理由は後で解るが、「的を外している」と感じる釣り人は多と思う。
 また、CMやドラマで釣りをするシーンを採り上げていることがあるが、例えば「両軸受けリール」という、竿を持った場合に上側に装着するリールを反対向けにしていたり、変に端っこの部分を握ってバランスを崩していたりと、とても考証をしているとは思えないシーンに出会うと、本当にガッカリとしてしまう。
 かつてドラマ「北の国から」等の脚本で有名な倉本聰氏が
 「ドラマというフィクションの中の描写で細かい部分で『ごまかし』をやってしまうと、全体がウソっぽくなる。」と言っているのを見たことがあるが、正にその通りで、ボクも
 「何でやねん。」とツッ込んでチャンネルを変えたくなってしまう。

 釣りという趣味は様々な情報を元に次の一手を打つという「ゲーム的要素」、魚を掛けてからは糸をかばいつつ、切られないように操作する「スポーツ的要素」、釣りの種類によっては「山登りの要素」や「ボート操船の要素」まで含まれ、それぞれが複雑に絡み合っているからオモシロイのだ。そんな釣りを文章で表現し、その実際を想像してもらうのは非常に難しい。以前までは、磯なら磯、渓流なら渓流で釣りをする人に対する情報を流すつもりで時系列順の簡単なレポートを3年以上このブログを書き続けてきたが、ふと
「釣り人以外の人が見ても、そのおもしろさが伝わっているのだろうか?」と思う瞬間があったのは事実だ。
 そこで、大袈裟?な表現をすれば、釣りの魅力を後世に伝えなくてはならない年にもなってきたことでもあるし、釣り場での実際を伝えて、「その魅力を少しでも共感し、理解してくれる人が増えるならば」と、お気付きの人がいれば幸いだが、「高原川のレポート」を始めた辺りからスタイルを変えている。
 特に、頭の中で何を考え、それをどうやって実行に移しているかを以前よりも詳しく書いているつもりだ。


■釣り場での現実■

 釣りをしている最中、ボクの頭の中では四六時中、様々な思考がグルグルと巡っている。特にこれは性格が影響しているのか?疑り深さが支配することが多い。例えば、1匹の魚を釣ると普通であれば、しばらくはそのまま仕掛を触らずに流す人が多いものだが、ボクの場合は魚を釣った、そのすぐ後の1投目であっても、続くアタリがすぐに無ければ、「もう魚のタナ(泳いでいる深さ)が変わっているのでは?」と疑ってしまい、エサを流す層や距離を変えようとする。
 また、水面や地形を見る目は常に鋭く、得られる情報全体から魚の気配を感じ取ろうとしている。だから、格好つける訳ではないしレベルも全然違うが、プロ野球の打者がホームランを打った際の球種や球筋を覚えているのと同様に、釣りを本格的に始めてから、現在までの間で印象に残っている魚を釣った場所の風景や背景を映像で覚えている。そして「その場に行って、魚を釣った水面を指せ」と言われれば、確実に「ここだ!」とピンスポットで指し示す自信すらあるのだ。それくらい息つく暇もなくアレコレと集中して考えている訳だから当然、「ノンビリと釣り糸を垂らしている」ヒマなど皆無なのだ。もし、どうしても他人からそう見えてしまうのなら、それは集中しすぎて邪念が消えたことで逆に間の抜けた馬鹿面をしているせいではないのか?とも思ってしまう。
 現場では、こんな調子で常に釣りのことばかりを考えているから、それこそ周囲からは「そのまま飲み込んでいるのか?」言われるくらいのスピードで食事をとっている。そう言えばその昔、妻と釣りに行った最中に手作り弁当を食べていたのだが、鷲掴みで食べる様を見た彼女に叱られた経験があるくらいだ。今、凝っている渓流釣りでも途中で「河原に座って…」という余裕もなく、時間節約のため車の移動中に「次はどこに入ろうか?」と考えながらパンをかじっている次第だ。
 また、年に一度のペースで釣行している男女群島での磯釣りの場合、現地2泊3日の航海中には約58時間に渡って磯の上に居る計算になるが、その間の睡眠時間は合計でも8時間は確実に切っているだろう。もちろん起きている間は、短時間でとる粗末な食事タイムを除いて釣りっぱなしの状態だ。
 しかしながら、そこまでやっても大したことがない釣果も多いことが問題なのだが…。
 ここまで「根(こん)を詰めた釣り」を実践している人が、どのくらいの割合で居るのかは判断できないが、多かれ少なかれ、集中している時にはそうなっていることだろう。ボクが尊敬する釣り師である小里哲也さんは「釣りたければ魚になりなさい」と、よく書いておられるが、正しくその通りで、魚を釣りたければ人間の都合よりも魚の都合に合わせるしかない。そのためには考え抜き、実践するしかないのだ。


■様々な釣り■

 一口に釣りと言っても様々な種類があるのは皆さんもご存じだとは思うが、好みには当然個人差がある。ボクの場合は現在では「磯のグレ釣り」「渓流(特に本流での)釣り」「船から狙うマダイ&ヒラマサの”完全フカセ釣り”」の中から、その時にの気分や、釣れ具合でセレクトすることが多いが、これらの釣りに共通するのは、「引きが強いターゲットに対して繊細な方法でアプローチする」という、テクニカルな要素が多い部分だ。だから、今まで色々な釣りをこなしてきたが、大味に感じる釣りは長続きしなかった。考えることが多ければ多いほど、やることが多ければ多いほど楽しく感じるのだ。その意味ではトローリングのような、ある意味「船頭(キャプテン)任せ」の部分が多い釣りには全く興味が湧いてこない。

 
■Mの世界■

 ここまでボクが「如何に考え、如何に行動しているか」を書いてきたわけだが、振り返ってみるとホントに窮々と考えながら釣りをしていることが多い。モチロン、ボクも人間だから、ふと前方に見える景色に感動したりもすることもあるが、それは稀だ。また、人からは「よく一人で行くな~。」なんて言われることもある。モチロン、行き帰りくらいは人が居た方が「寂しくないかな?」と思うことも多少程度はあるが、いつもこんな調子だから釣り場に着いてからは一人でいることは全く平気で、むしろ孤独に一人で悩むことを楽しんでいるくらいだ。だから、もしかしたら釣りの最中にボクは「『Mの世界』をさまよっているのかも知れない?」とも思う。

 このブログを読んだ釣り人以外の人からは「そんな苦しそうな趣味の、どこが楽しいの?」と言われてしまいそうだが、ボクがこれまで30年以上に渡って釣り続けてこられたのは、こんな苦労をして導き出した先にある「大物との出会い」の味を何度か味わっており、そこで得た感動は苦労をして得た物ほど大きいことを知っているからだ。
 そう、「緊張と緩和の連続」これがボクの釣りの神髄だ。
 以前B・バス釣りに凝っていた頃に読んだ本の冒頭には、こう書いてあった。
 「悪魔の趣味にようこそ」
長らく悪魔に心を捕まれたままのボクなのである。




■追伸■

   

 このブログが公開された時間には、帰港のために九州本土近くを航行している最中だと思うが、実は26日夜からは恒例の「男女群島ツアー」に参加している。
 好敵手である「尾長グレ」という悪魔に魅入られ続けて、このツアーへの参加は今年で連続4年目に突入している。しかし、結果は2年目の一昨年にイイ目をした以外は思わしくない。今年はどうなっているのやら…。だが、相変わらず、ほとんど寝ずに考えて釣りをしてるんだろうな。ともあれ今回のツアーの内容については来週、このブログで報告だ。
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