■お助け魚■
磯釣りスペシャルの連載をしていた頃は、普段は上物釣りでグレを狙うことがほとんどだったが、グレ釣りにもオフがあって、産卵とその直後の2月下旬~4月下旬はその時期にあたるため、釣果は殆ど望めない。しかし、記事は年間を通じて書かねばならず、この時期限定でメインに据えて狙う重宝な魚にチヌ(黒鯛)があった。
もっとも、チヌ専門に狙う人は年中追いかけているのだが、それ以外の磯釣り師が春限定で狙うのは、磯の周囲にグレが居なくなるタイミングに合わせたかのように接岸し、産卵前の荒食いする魚=”乗っ込み魚”を狙えるからだ。
早春は水温が年間で一番低いために、エサ取りは殆どおらず、アタリがあればチヌであることが多い。寒い春先に朝からな~んにも起こらないまま、「今日はボーズで取材ボツか?」と思った頃に出るアタリは涙が出るほど嬉しかったことを記憶している。しかも、乗っ込み初期は大型が出る確率が高いので、ゲットした写真は見応えのあるモノになることが多く、この魚には何度も助けられた。
■チヌの釣り味■
チヌは、グレと並んで磯の上物釣りで狙う代表的な対象魚だが、こと大型魚同士を対比すると随分と難易度は違う。
実例を挙げるとボク自身の最大寸は56cmで、同寸を2回、一枚は愛媛県の宇和島1.5号ハリスを使い、もう一枚は長崎県の五島灘に浮かぶ江ノ島で1.7号を使って釣っているが、どちらも全く危なげない展開でゲットしている。もし同寸のグレを同じ仕掛けで掛けた場合は、”危なげ”だらけだったと思うが、それほどに両者の引く力には差が有るのだ。
単に「力勝負の差」だけではなく、習性にも違いがある。グレが近くの沈み根と呼ばれる海底の岩塊等を目指して一目散に走るのに対して、チヌのそれは、障害物を避けつつ縫って走るような印象がある。そのため、チヌの場合はハリスが細くてもリールを逆転させるか、ドラグを滑らせて道糸を出してもハリスが飛んでしまうことは少ない。(もちろん、テトラの穴に居着くタイプを食わせるなど、特殊な場合を除く)しかし、グレを掛けて同じことをすると、ハリスが岩塊等に擦れて飛んでしまうことが多くなるため、簡単には糸が出せないのだ。
乗っ込み期は腹に子や白子を抱えているため、引きが弱いとも言われる。しかし、江ノ島で釣ったのは6月で、産卵には関係ない個体だったが、そんなに強い引きではなかった。また、7月に長崎県の対馬で、兄が62cmという、トロフィーサイズをボクの横で釣ったが、本人は「重い、重い」と言うだけで、割とすんなりと取り込んでいた。したがって、取り込みの難易度ということに関しては、どうしても評価を高くできない。
食わせることに関しても、ほぼオキアミ一辺倒のグレに比べて、サシエサの工夫でエサ取りを避けられる分だけ展開が楽である。紀州釣りや、かかり釣りのように、ぬかベースのダンゴにサシエサを包んで狙える他、コーンやスイカなど、他の魚がなかなか食わないエサを口にすることも知られているし、他の魚が噛み潰せない殻付の貝類をサシエサに使って攻めることができる。
また、磯で狙っている際に潮が悪くなると、グレは真っ先に釣れなくなるが、チヌは口を使ってくれるので、悪潮にも強いとされている。
普段からグレを狙っていると、どうしてもチヌの方がアプローチが楽で、大型も釣り易いように感じてしまう。よって釣り味は5.5としたい。
■チヌの食い味■
殺生をする以上、なんとか食して往生させるため、今まで何度もチヌを食してきたが、どう料理をしてもマズくはないが、ハッキリ言って「ウマい」と感じたことがない。
刺身で食すると、身の締まりが少なくて柔らかなために食感が悪く、脂の甘みも少なめでイマイチの印象なのだ。そのため、焼き物にすることが多いが、それでも塩焼きの他、タレを使ったつけ焼きなどが、そこそこな味わいに感じる程度だ。また、悪食で知られるチヌだけに、生息域ごとに常食しているエサも違うし、水質も違うため、中には臭う個体もある。したがって、食い味は4.5となってしまうのは仕方がないことだ。
もっとも、TVの旅番組での料理紹介で「黒鯛の刺身」をウマそうに食うシーンを見かけるし、旅館の定番メニューで出しているところもあるようなので、ボクが釣った場所や料理法が悪いだけなのかも知れないが…。
■総合評価■
しかし、上述した評価は他のウマい魚や、グレの大型の釣り味との比較で差がついただけであって、この魚の最大の魅力は他にある。
50cm以上の大型をゲットするには、釣れる地域と磯が限られるグレに対して、チヌは大阪湾、伊勢湾(名古屋港)、それに東京湾といった大都市の防波堤周りでも55cmクラスまでなら生息数が多く、出会える機会は多い。そのため、近場であっても、釣り人の努力と工夫次第で大型のゲット数が伸びる点は評価に値する。
また、「かかり釣り」「落とし込み釣り」「フカセ釣り」「紀州釣り」等、釣種も多いことから、好きなスタイルで攻めることができるのもチヌ釣りの魅力になっている。
そんなチヌを相手に近場で腕を磨いて磯釣りデビューするも良し、そのまま好みの釣りスタイルで狙い続けて極めるも良しであり、いろんな意味で「親しみやすく奥が深い」という、貴重な魚なのだ。
そして、そういった意味を評価するとポイントは上昇し、総合評価は6となる。
磯釣りスペシャルの連載をしていた頃は、普段は上物釣りでグレを狙うことがほとんどだったが、グレ釣りにもオフがあって、産卵とその直後の2月下旬~4月下旬はその時期にあたるため、釣果は殆ど望めない。しかし、記事は年間を通じて書かねばならず、この時期限定でメインに据えて狙う重宝な魚にチヌ(黒鯛)があった。
もっとも、チヌ専門に狙う人は年中追いかけているのだが、それ以外の磯釣り師が春限定で狙うのは、磯の周囲にグレが居なくなるタイミングに合わせたかのように接岸し、産卵前の荒食いする魚=”乗っ込み魚”を狙えるからだ。
早春は水温が年間で一番低いために、エサ取りは殆どおらず、アタリがあればチヌであることが多い。寒い春先に朝からな~んにも起こらないまま、「今日はボーズで取材ボツか?」と思った頃に出るアタリは涙が出るほど嬉しかったことを記憶している。しかも、乗っ込み初期は大型が出る確率が高いので、ゲットした写真は見応えのあるモノになることが多く、この魚には何度も助けられた。
■チヌの釣り味■
チヌは、グレと並んで磯の上物釣りで狙う代表的な対象魚だが、こと大型魚同士を対比すると随分と難易度は違う。
実例を挙げるとボク自身の最大寸は56cmで、同寸を2回、一枚は愛媛県の宇和島1.5号ハリスを使い、もう一枚は長崎県の五島灘に浮かぶ江ノ島で1.7号を使って釣っているが、どちらも全く危なげない展開でゲットしている。もし同寸のグレを同じ仕掛けで掛けた場合は、”危なげ”だらけだったと思うが、それほどに両者の引く力には差が有るのだ。
単に「力勝負の差」だけではなく、習性にも違いがある。グレが近くの沈み根と呼ばれる海底の岩塊等を目指して一目散に走るのに対して、チヌのそれは、障害物を避けつつ縫って走るような印象がある。そのため、チヌの場合はハリスが細くてもリールを逆転させるか、ドラグを滑らせて道糸を出してもハリスが飛んでしまうことは少ない。(もちろん、テトラの穴に居着くタイプを食わせるなど、特殊な場合を除く)しかし、グレを掛けて同じことをすると、ハリスが岩塊等に擦れて飛んでしまうことが多くなるため、簡単には糸が出せないのだ。
乗っ込み期は腹に子や白子を抱えているため、引きが弱いとも言われる。しかし、江ノ島で釣ったのは6月で、産卵には関係ない個体だったが、そんなに強い引きではなかった。また、7月に長崎県の対馬で、兄が62cmという、トロフィーサイズをボクの横で釣ったが、本人は「重い、重い」と言うだけで、割とすんなりと取り込んでいた。したがって、取り込みの難易度ということに関しては、どうしても評価を高くできない。
食わせることに関しても、ほぼオキアミ一辺倒のグレに比べて、サシエサの工夫でエサ取りを避けられる分だけ展開が楽である。紀州釣りや、かかり釣りのように、ぬかベースのダンゴにサシエサを包んで狙える他、コーンやスイカなど、他の魚がなかなか食わないエサを口にすることも知られているし、他の魚が噛み潰せない殻付の貝類をサシエサに使って攻めることができる。
また、磯で狙っている際に潮が悪くなると、グレは真っ先に釣れなくなるが、チヌは口を使ってくれるので、悪潮にも強いとされている。
普段からグレを狙っていると、どうしてもチヌの方がアプローチが楽で、大型も釣り易いように感じてしまう。よって釣り味は5.5としたい。
●自己記録その1●
■チヌの食い味■
殺生をする以上、なんとか食して往生させるため、今まで何度もチヌを食してきたが、どう料理をしてもマズくはないが、ハッキリ言って「ウマい」と感じたことがない。
刺身で食すると、身の締まりが少なくて柔らかなために食感が悪く、脂の甘みも少なめでイマイチの印象なのだ。そのため、焼き物にすることが多いが、それでも塩焼きの他、タレを使ったつけ焼きなどが、そこそこな味わいに感じる程度だ。また、悪食で知られるチヌだけに、生息域ごとに常食しているエサも違うし、水質も違うため、中には臭う個体もある。したがって、食い味は4.5となってしまうのは仕方がないことだ。
もっとも、TVの旅番組での料理紹介で「黒鯛の刺身」をウマそうに食うシーンを見かけるし、旅館の定番メニューで出しているところもあるようなので、ボクが釣った場所や料理法が悪いだけなのかも知れないが…。
●自己記録その2●
■総合評価■
しかし、上述した評価は他のウマい魚や、グレの大型の釣り味との比較で差がついただけであって、この魚の最大の魅力は他にある。
50cm以上の大型をゲットするには、釣れる地域と磯が限られるグレに対して、チヌは大阪湾、伊勢湾(名古屋港)、それに東京湾といった大都市の防波堤周りでも55cmクラスまでなら生息数が多く、出会える機会は多い。そのため、近場であっても、釣り人の努力と工夫次第で大型のゲット数が伸びる点は評価に値する。
また、「かかり釣り」「落とし込み釣り」「フカセ釣り」「紀州釣り」等、釣種も多いことから、好きなスタイルで攻めることができるのもチヌ釣りの魅力になっている。
そんなチヌを相手に近場で腕を磨いて磯釣りデビューするも良し、そのまま好みの釣りスタイルで狙い続けて極めるも良しであり、いろんな意味で「親しみやすく奥が深い」という、貴重な魚なのだ。
そして、そういった意味を評価するとポイントは上昇し、総合評価は6となる。
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