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小説『ドーナツ屋で…』

2010-05-31 08:42:03 | 短編小説

作:都月満夫

 

 

 

 オレは、スーパーで買い物をしていた。

 

 帰り際に隣り合わせになったご婦人。互いに目が合う。あれ…、この人…。

 

 ワタシは、いつものように買い物をしていました。帰り際で隣り合わせになった殿方。互いに目が合いました。あら…、この人…。

 

 「佐希子さん?」

 

 「桜井君?」

 

 五十を過ぎて、高校時代の彼氏と彼女が、ご対面。

 

 「どうしてたの?佐希ちゃん。」

 

 どっ…。どうしてたの?って…。どうしよう。いまだに私、独身なんて言えないよ。きっとサクラ、結婚してるんだろうな。

 

「ええ…、マア…、普通に…。」

 

 …、普通か。どうしよう。オレは結婚も出来ない、中年オヤジ、なんて言えないよな。

 

 「佐希ちゃん、暇?」

 

 …。あ、余計なこと聞いちゃった。

 

 「ええ、まあ…。」

 

 まっ…。まずいわ、お茶でもなんて言われたらどうしよう。

 

 …。暇なのか、誘わないとまずいよな。

 

 「そこのドーナツ屋で、コーヒーでも…、どうかな…。」

 

 やっ…。やっぱりきたよ。暇って言っちゃったし…。

 

 「ええ…、そうね。ちょっとの間なら、まだ…、旦那も帰ってこないから…。」

 

 いっ…。イヤだ。旦那だなんて…、余計なこと言っちゃった…。

 

 「ああ、旦那さんいるんだ。そうだよね。いて当たり前だよね。」

 

 …。いるよな…。

 

 

 

 二人はレジ袋を下げたまま、スーパーの店内にある、ドーナツ屋に入りました。

 

 「佐希ちゃん、何にする?」

 

 「コーヒーでいいわよ。」

 

 「じゃあ、オレ、買ってくる。」

 

 どっ…。どうしよう。旦那がいるなんて言わなければよかった。サクラは、結婚…、してるんだろうな。

 

 「ハイ、お待たせ。」

 

 いっ…。イヤだ。私、お弁当買ってる。それも、ひとつ。バレないように…。

 

 佐希子は、レジ袋の向きを静かに回転させた。心臓が、相手に聞こえるんじゃないか、と思うくらいの音をたてる。

 

 「ありがとう。」

 

 ちょっとの間…、沈黙。ズズーっと、コーヒーを啜る音がやけに大きい。

 

 「あの…。」

 

 「ええと…。」

 

 同時に話し出し、また沈黙。

 

 「佐希ちゃん、変わらないね。若くて…、結婚してるように見えないよ。」

 

 「そお…。アリガトウ。」

 

 やっ…。ヤッパ、バレてんのかな…。普通の奥さん、こんなに髪伸ばしてないもん。

 

 「サクラも、若いわ。サクラこそ、独身みたい。」

 

 …。マズい。判るのかな。どうしよう…。あっ、オレ、弁当買ってる…。

 

 「あれれ、サクラ、お弁当買ったの?ひとつじゃない。」

 

 …。ああ…。白状するか。

 

 「うん、実はオレ、一人なんだ。」

 

 「一人って…、奥さん、どこかへ出掛けているの?」

 

 「いやあ、そうじゃなく、独身。」

 

 「あら、別れたの…。」

 

 「そうじゃなく、ズーッと独身。」

 

 「え、一度も結婚していないの?」

 

 「そう、一度も…。面目ない…。」

 

 …。何度も確認するなよ。

 

 「別に面目ないってことはないわよ。」

 

 わっ…。私も見栄を張らずに、言っちゃえばよかった。でも手遅れ…。このまま、既婚者を決め込むしかないわ。そこに触れないように話をすればいいのよ。

 

 「佐希ちゃん、結婚生活ってどうなの?」

 

 いっ…。いきなりかよ。

 

 「別にどうってことはないわよ。普通よ、普通。」

 

 「普通か…。じゃあ、専業主婦なの?」

 

 どっ…。どうしよう。そう、仕事の話に持っていけばいいのよ。

 

 「専業主婦なんて、ご大層な身分じゃないわよ。働いてるわよ。」

 

 「パート、してるんだ…。」

 

 「パートじゃなくて、社員。」

 

しっ…。しまった。パートって言えばよかった。そのほうが主婦らしい。

 

 「へえ…、社員なんだ。よく…、社員になれたね。」

 

 あっ…。ああ、そうだよね。

 

 「いや…、結婚前から、働いてるとこ…。」

 

 「ああ、そうなんだ。どこなの?」

 

 そっ…。そんなに突っ込むなよ。

 

 「いいじゃない、どこだって…。」

 

 「そりゃあ、いいけど。言ったっていいじゃないか。」

 

 いっ…。意外としつこい…。

 

 「プロパンガスの事業組合。」

 

 「あれ、意外と身近だったんだ…。」

 

 「身近って何よ。」

 

 「オレ、北海熱供って会社。そこの石油部で経理の仕事してるんだよ。ウチにもプロパン部があるから…、知ってるよね。」

 

 こっ…。これじゃあバレバレじゃない。

 

 「ええ、プロパンの人は来るわよ。でも、石油部の人は関係ないわよね。」

 

 「ああ、関係ないよ。でも、こういうことってあるんだな。こんな身近にいたのに、知らなかったなんて…。」

 

 「ほんとね、偶然…。」

 

 「今度、覗いてみようかな…。」

 

 なっ…。なに言い出すのよ…。

 

 「いいわよ、よしてよ。趣味が悪い…。」

 

 「ウソだよ。オレだって…、何か恥ずかしいしさ…。」

 

 よっ…。よかったわ。何とかクリア…。でも、何で恥ずかしいのよ…。

 

 「恥ずかしいって何よ!私と知り合いがいがイヤってこと…。」

 

 なっ…。何てこと言ってんだよ…。

 

 「なんとなく、照れるじゃない。どんな知り合い?なんて聞かれたら…。」

 

 「そっか、そうよね…。」

 

でっ…。でも、釘を刺しておかないと…。

 

 「絶対こないでよ。私だって恥ずかしいから…。来たら絶交よ。」

 

 「絶交って何だよ。交際してるわけでもないのに…。」

 

 あっ…。あら、またまずいこと言っちゃった。

 

 「違うわよ。そういう訳じゃなく。言葉の綾よ…。」

 

「言葉の綾で絶交はないだろう…。」

 

さっ…。サクラ、本当に怒ってる?

 

「何でそんなにむきになるのよ…。」

 

「別に、むきになってるわけじゃ…。」

 

こっ…。この人、まだ私のこと好きなのかも…。

 

「もしかして…、私のこと、まだ…、好きだったりして…。」

 

「あっ、いや…、その…、嫌いじゃないけど…。」

 

しっ…。しまった。なんで旦那がいるなんていったんだ…。バカだね、ワタシ…。

 

「好きって言われたって…。」

 

「えっ、なに言ってるの…。好きとは言ってないよ。嫌いじゃないって言っただけだよ…。」

 

なっ…。なんてこと聞いたんだ…。

 

「嫌いじゃないってことは、好きってことじゃないの…。」

 

あっ…。あいやっ…。墓穴掘ったかも…。

 

「佐希ちゃんこそ…、オレのこと、まだ好きだったりして…。」

 

うっ…。うわっ。見透かされたか…。

 

「ワタシだって、嫌いじゃないわよ…。変な意味じゃなくて…よ。勘違いしないで…。」

 

ぼっ…。墓穴深くしちゃったかも…。

 

「変な意味って、どういうことだよ…。」

 

「だから…。そのまんま…よ。勘違いされたら困るから…。」

 

かっ…。勘違いしてもいいのよ…。

 

「勘違いで、人を好きになるほど、オッチョコチョイじゃあないよ。」

 

…。オレ、まだ佐希ちゃんのこと、好きなのかも…。

 

「本気だったら、迷惑よ。」

 

なっ…。何で言うのよ…。心、裏腹…。

 

「迷惑でも…、好きって言ったら…、佐希ちゃん、どうする?」

 

けっ…。結構大胆なこと言ってくれるじゃない…、サクラ。

 

「ワタシに、不倫を迫るわけ…?」

 

けっ…。結婚もしてないのに、不倫はないか…。

 

「不倫…?そんなこと言ってない…よ。ただ、どうするって聞いただけだよ…。」

 

…。こいつ、慌ててるよ…。

 

「そんなこと…、聞かないでよ。答えようがないじゃない…、バカ。」

 

ばっ…。バカなんて言っちゃったよ。

 

「バカはないだろう…。佐希ちゃん。」

 

「ゴメン…。今のは、失言。」

 

しっ…。失言はマズイか?

 

「失言ってことは、思ってるってことじゃないか。撤回してくれよ…。」

 

そっ…。そうよね…。

 

「失言は、失言でした。撤回します。これでいいんでしょ…。」

 

なっ…。何故、こんなこと言うんだ…。

 

「変わらないよな…、そんなとこ…。」

 

けっ…。結構、許してるのか…?

 

「変わらなくて、悪かったわね。どうせ、進歩なしの、おバカよ…。」

 

ほっ…。本当だ。いつもこうやって、喧嘩ばかりしてたのよね…。懐かしいわ。この感じ…。

 

「バカじゃないよ。いつもこうやって、喧嘩ばかりしてたけど、たまに、凄く懐かしく思うことがあってさ…。佐希ちゃん、どうしてるのかな…って。」

 

そっ…。そんなこと思ってたの。なら、連絡くれればいいのに…。サクラが大学に行ってから、音信普通だったし…。あのころは、携帯もなかったし…。ワタシだって…、チョッとは気にしてたのに…。サクラの家には電話しづらいじゃない。今更って感じで…。

 

「そうね…。ワタシも、時々思うことがあった。サクラ、結婚して、幸せなんだろうな…、って…。」

 

 

 

二人の思いが、一目散に時を賭け戻る間、ちょっとした沈黙があった。

 

「…、でもサクラ、結婚してなかったんだよね。何かホッとした。」

 

ほっ…。ホッとしたって何だよ…。

 

「オレも、佐希ちゃん、若くて、綺麗で、怒りっぽくて、すぐムキになって…、あの頃と同じだな…って、安心した。」

 

すっ…。スルーしてくれたよ。

 

「そっかー、同じだね。」

 

「コーヒー、お代りしようか?」

 

「うん。」

 

佐希子は、旦那がいるといったことなど、忘れていた。

 

 

 

「オレさ、家を持ってるんだ。自分の家。一人暮らしが侘しくて、家を建てて、庭を造って…。家の前に小川が流れててさ、いいところなんだ。」

 

なっ…。なに、こいつ、ワタシに何が言いたいの?

 

「家建てて、一人で住んでるなんて、尚更侘しくない?好きな人…、いなかったの?」

 

「うん、仕事が忙しくてさ…。そんな暇なかった。でも…、暇は作るもんだよな。今頃気づいても遅いか…。」

 

「遅いってことはないんじゃない。これからってことだって…。何が起こるかわかんないよ…。」

 

なっ…。何で励ましてんだろう。

 

「そういってくれるのは、佐希ちゃんだけだよ。オレ、ただのオジサンだし…。」

 

「そんなことないって…、まだまだいけるよ。ガンバンなよ、サクラ…。」

 

「会社では、若い子に結構人気があるけどさ…。それは、オジサンとしての人気であって、男性としての人気ではない…、ってことぐらい、自分で分かってるよ…。」

 

なっ…。なんだ、サクラ。急にショボクレてきたよ。

 

「サクラ…、何だよ、そんなにショボクレて…。そんなサクラ、嫌いだよ。」

 

「えっ、じゃあ、やっぱり、もしかして、オレのこと好きだった?」

 

「うん、好きだったよ。ずっとね。でもさ…、好きだってことだけじゃ、どうにもならないんだよね。好きだっていう言葉の空間を飛び越えなきゃ、それだけ…、なんだよ…。」

 

「そうだな、そうなんだよ。その空間は、いつも、こんなに近かったのに…。近すぎて見えなかったんだよ…。オレたち。」

 

二人は、互いの胸に湧き上がる想いを沈めるように、押し黙ってしまった。

 

このまま別れたくない。二人はそう思っていた。しかし、今更、そう今更なんだと、互いに思っていた。今更…。

 

 

 

「サクラ…、今度、サクラの家、見にいってもいいかな…?」

 

いっ…。言っちゃったよ。

 

「いいよ。佐希ちゃんなら、大歓迎だよ。いいとこだよ。毎日野鳥は来るし、家の前の小川には、虹鱒が泳いでいる。周囲も、結構緑が多いし、庭には、オレが作ったガーデンテーブルとベンチがある。天気のいい日は、そこに座ってコーヒーなんか飲んでさ…。」

 

「それって、よさそうだね。でも、そのコーヒーは、インスタントじゃダメだよ。サクラが、ドリップしてくれたやつでなきゃ…。」

 

「そりゃ…、そうだよ。美味いぜ、オレの落としたコーヒー。病み付きになるけどいいのかな…。」

 

「いいよ…。病み付きになってやるよ。本当に美味しいならだけど…。」

 

まっ…。また言ってるよ。素直になれ、佐希子…。

 

「美味しいさ…。美味しいに決まってるじゃない…。オレが佐希ちゃんのために落とすコーヒーが、不味いわけがないだろう…。」

 

「じゃあ、今度暇なとき、行ってやるよ。なかなか暇がないけどさ…。」

 

「いいよ…。佐希ちゃんの暇なときで…。」

 

「彼女の一人も作れないオヤジだけど、ワタシが相手になってあげますよ。言っとくけどね、なってあげるってとこ…、忘れないでよ。分かった…。」

 

「分かってるよ…。」

 

 

 

二人が高校生のような会話を始めてから、一時間が経過していた。

 

佐希子は、自分が結婚していると嘘を言ったことなど、完全に忘れていた。

 

「佐希ちゃん、そろそろ…、帰ろうか…。」

 

「えっ、いやだ。もうこんな時間…。」

 

「そろそろ…、帰ってくるんじゃないの。」

 

「誰?あ、ええ、そうよ、旦那がいたんだ…、ワタシ。どうしよう。」

 

「いいよ、佐希ちゃん。旦那なんかいないんだろ?分かってるよ。」

 

「何いってるのよ…。」

 

「旦那さんがいる人が、お弁当ひとつ買わないよ。今度、ご飯…、食べに行こうか。」

 

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MY GARDEN 2010.05.31「スイセン」

2010-05-31 08:32:40 | 雑学・豆知識・うんちく・小ネタ

今朝は昨日に引き続き青空です。長雨の影響で咲き遅れていた水仙が花をつけました。

今日は朝撮りの「白水仙」を紹介しましょう。

水仙 (すいせん)

・彼岸花(ひがんばな)科。               

・学名  Narcissus tazetta var. chinensis 

(日本水仙)

Narcissus : スイセン属         

tazetta   : 小さいコーヒー茶碗  (イタリア語)

chinensis : 中国の             

Narcissus(ナルキッサス、ナルシサス)はギリシャ神話の美少年の名前にちなむ。   

        開花時期は、12/15頃~翌4/20頃。

        早咲きものは正月前にはすでに咲き出している(「日本水仙」「房咲き水仙」などの 

  早咲き系は12月から2月頃に開花)。   

  3月中旬頃から咲き出すものは花がひとまわり大きいものが多い。            

  (「ラッパ水仙」や「口紅水仙」などの遅咲き系は、3月から4月頃に開花) 

・地中海沿岸原産。平安末期に中国から渡来。

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したっけ。

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倉内佐知子

「涅槃歌 朗読する島 今、野生の心臓に 他16篇(22世紀アート) 倉内 佐知子 22世紀アート」

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