『磯崎新の「都庁」』より以下同じ
■ 『磯崎新の「都庁」』平松剛/文藝春秋にはこんな話が出てきます。
横浜港国際客船ターミナル(横浜大桟橋)国際コンペの審査員の磯崎さんは同じく審査員としてオランダからやってきたレム・コールハースと東京駅で落ち合い車で一緒に横浜に向かったそうです(1995年のことでした)。余談ですが横浜大桟橋は私も見学に出かけたことがありました。
コールハースは途中で工事中のある建築を目にして磯崎さんに言ったそうです。「おい、磯崎、あそこに君の都庁が建ってるじゃないか。コンペには負けたんじゃなかったのかい?」磯崎さんは「え?・・・・ああ・・・・・いや、違うんだ。あれは丹下さんの仕事なんだよ(笑)」(会話の部分は本書より引用しました)
上の断面図は磯崎さんの新都庁舎案ですが、立体フレームに球体が載っています。球体の材質はチタンだと本文に出てきます。これとよく似たビルで丹下さんの設計といえば・・・。そうお台場にあるフジテレビ本社ビルですね。建築に詳しくない方でもピンときたでしょう。テレビにも時々登場しますから。
コールハースは丹下さんの設計であることをちゃんと知っていて磯崎さんをからかったのかも知れないと平松さんは書いています。
ところで磯崎さんが丹下研に入った当初、旧都庁第一庁舎がちょうど建設工事中だったそうです。磯崎さんは旧都庁第一庁舎は日本の1950年代の建築の代表作だと思っているそうですが、磯崎さんの新庁舎低層案のプロポーションはこの旧都庁第一舎によく似ています。
丹下さんの旧庁舎
磯崎さんの新庁舎立面図
磯崎さんの新都庁舎案は丹下さんの旧都庁舎へのオマージュだった・・・。そしてそのことに気が付いた丹下さんがフジテレビ本社ビルで磯崎さんに応えた・・・。
こんなふうに想像して眉唾な説をもっともらしく語るって楽しいです。