透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

空間の心地良さを考える の巻

2008-06-02 | A あれこれ


 設計条件が例えば面積が25㎡、天井高2.7mというように単純な数量で提示されれば、設計にはそれ程困難は伴わないでしょう。でも「居心地が良くって落ち着くリビングが欲しいんです~」などと抽象的で曖昧な条件が提示された場合にはその実現にはいろいろな困難が伴なうでしょう。

最終的にはどんなレベルの要求にも設計者は「もの」のありようを具体的に規定することで応えなければならず、それが設計行為だとも言えるのでしょうが、そこに至るプロセスは決して単純なものでないことを理解するのは容易でしょう。それだからこそ設計って楽しいんだ、と設計者は言うでしょうが。

昨日の夕方、カフェ・シュトラッセでしばし読書、そして考えました。心地良い空間は「何」で決まるのかを。

それは・・・、空間を規定する全ての要素が統合された状態、それを脳が歓迎するかどうかで決まるって、これは当然というかあたりまえなことで答えにはなっていません。

空間のヴォリューム、明るさの分布状態、各部のプロポーション、仕上げ材の色や質感、セッティングされた家具、雑貨や緑などの小物たち、静かに流れるクラシック、ほのかに漂うコーヒーの香り、そして細長い窓によってトリミングされた田園風景・・・。このカフェの心地良さを分析的に捉えようとしてもなかなか難しいです。

そもそも空間の心地良さを分析的に捉えることなど出来ないのかも知れません。空間という「総体」を分解してしまっては空間がどこかに消えてしまう・・・。近代科学のオーソドックスなアプローチ手法がぶつかったこのジレンマ。ではどうすれば・・・。「それが分かれば苦労はしないよ」という「プロ」の設計者の声が聞えてきそうです。

そう、これは回答不能な問いなのかもしれませんわたしのどこがいいの?」などという問いに答えることなど、たぶんできないのと同様に。