透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

東京中央郵便局 保存とJPタワー

2008-06-29 | A あれこれ


「Casa BRUTUS」特別編集、2008年7月10日発行 

■ 普段雑誌を買うことはほとんどないが「世界に自慢したい!ニッポンのモダニズム建築100」という特集だったのでつい購入してしまった。

表紙は丹下さんの東京カテドラル聖マリア大聖堂/1964年 の正面の写真。HPシェルによる構造がそのまま美しい造形になっている。同時期に設計された代々木体育館は吊構造が造るカテナリー曲線がそのまま屋根の造形になっている。アーチ式ダムは構造的必然の造形の典型だろうが、このようなウソのない造形って美しいと思う。

この雑誌には「ドコモモ100選」がリストアップされていまる。

http://www.docomomojapan.com/docomomo100.html ←こちら

このリストの005(雑誌では順番が違うのか011)、「東京中央郵便局」についてだが、日本郵政が再開発計画を発表して存亡の危機に晒されたが保存運動が実を結び(?)外壁周りを残しつつ高さ200メートルの超高層ビル・JPタワーを建設することが決まったと先日新聞などで報じられた。

http://markezine.jp/static/images/article/4256/ny.gif ←こちら

最近若い女性がズボンの上に超ミニスカートを重ねたような服装をしているのを目にする(たぶんこのファッションにも名前があるのだろうが知らない)。どうも中途半端というか、どっちなんだ!と東海林さだお的突っ込みをしたくなる。ズボンならズボン、スカートならスカート、どちらかにせい、と。

発表されたJPタワーのイメージパースを見ているとこのファッションと同様のいらだちというか不満というか、まあそういう感情を抱いてしまう。保存を望む声を意識した妥協案と言ったらいいのか、とにかく中途半端な案だと思う。

東京駅ではいま開業当時の姿に屋根を復元するかなり大掛かりな工事が行われている。いろんな事情がもちろんあるのだろうが日本郵政も東京駅の復元プロジェクトに倣って欲しかったと思う。

過日、東京した際にこの郵便局の中に入ってみたが天井が高くてゆったりとした空間だった。外壁にはネットが張られていて、ちょっと写真を撮ろうという気にはならなかったが、それでも撮るなら今のうちかも知れない。

最後に雑誌から東京中央郵便局に関する説明文を引用しておく。

**東京駅前に建てられた、郵便局とオフィスのふたつの機能を複合した建物。台形の敷地に合わせてファサードを屈曲した2面で構成し、各面に個別のまとまりを与えながら柱型を配して両者を統合。オーダーなどを用いずに威厳のあるファサードを作り出したことにデザイン上の特徴がある。竣工当時、ブルーノ・タウトから日本における新しい建築の模範例だとして称賛された。** 1931年 逓信省営繕課(吉田鉄郎)設計


 


ブックレビュー 0806

2008-06-29 | A ブックレビュー



■「少年老い易く 学成り難し」月日の経つのは早いもの、今年も半分終る。6月の読了本を再掲する。

『磯崎新の「都庁」』文藝春秋 戦後最大といわれた都庁舎の指名コンペ。超高層ビルの設計経験者という資格条件が外されて磯崎さんが指名された。ツリーではなくてリゾーム。磯崎さんはかつて都庁内での書類の流れなどの調査をした経験から都庁はツリー(階層構造の象徴)ではなくてリゾーム(錯綜体)だという認識を得ていた。「敢えて」低層案を提出したのもこの認識故だった・・・。



著者の平松 剛さんには『光りの教会 安藤忠雄の現場』建築資料研究社という著書もある。出版社は違うが共に和田誠が装丁を担当していてデザインがよく似ている。

これからも同様の企画で興味深い本が出版されることを望む。