透明タペストリー

本や建築、火の見櫓、マンホール蓋など様々なものを素材に織り上げるタペストリー

「地形で見る江戸・東京発展史」

2023-02-04 | A 読書日記

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 ラジオ番組に出演して火の見櫓について語ったことがある。その時、火の見櫓の姿形の特徴を言葉だけで簡潔に説明することは難しい、ということがよく分かった。テレビ番組で火の見櫓巡りをしたこともあるが、ラジオの時のような説明の難しさはさほど感じなかった。姿形を言葉で説明しなくても映像で視聴者に伝わるから。百回話すより一回見てもらう方が分かってもらえる、ということだ。

『地形で見る江戸・東京の』鈴木浩二(ちくま新書2022年)を読んだ。江戸・東京という都市の成り立ちに地形がどう関わっているのかというテーマについての論考だが、例えば江戸の街への上水の供給が土地の高低差を利用した自然流水によるものだということや、江戸の三大大火のうち、明暦の大火と目黒行人坂の大火(明和の大火ともいわれ、「ぼろ鳶組」にも出てくる)をが取り上げられ、地形と延焼との関係について説明がなされている。

どちらのテーマについても複数枚の2色の地形図(説明図)が載っている。地形図なしの文章だけでは理解が難しい内容だ。火の見櫓の姿形の特徴を口頭説明だけで理解することが困難なことと同じように。私は地形図を参照しながら文章を読んだが、詳細な内容にまで理解が及ばなかった。

百の文章より一の説明図。できればもう少し説明図を載せて欲しかった、というのが理解力不足な私の率直な感想。なお、本書は1月28日付 毎日新聞の書評面でも取り上げられ、評者の湯川 豊さんは**専門の研究が読者にわかりやすく伝えられる、新書のお手本のような一冊であった。**と評している。

この書評を読んだこと、書店で内容を見て明暦の大火が取り上げられていることが分かったことが本書の購入動機。