「摘み草を 飾る酢飯の 宴かな」
当句の宴、祝いの集まりなのでしょうか。摘み
草と酢飯の色や香り、宴の談笑まで聴こえてき
ます。作者は英語と独語に堪能。夏目漱石のよ
うに訳すことを前提に詠んでいる気がします。
時間軸に従いバランスよく語句が配置された明
快な句。
万葉の時代、摘み草は風雅な遊びとして楽しま
れました。また、蔬菜の栽培が普及するまで野
草や山菜は副食。酢飯の飾りではなく重要な食
材だったようです。
万葉集 2-221
「妻もあらば 摘みて食げまし 沙弥の山 野の上
の*うはぎ 過ぎにけらずや」<柿本人麻呂>
歌意
ここに妻がいれば一緒に摘み食べることができ
ただろう。沙弥の山、野のヨメナは時が過ぎて
しまった。
「*うはぎ」は春の摘み草の「ヨメナ」<嫁菜>
のこと。菜飯、天ぷら、和え物。汁の実などに
用いられます。都内のカントウヨメナは別種。
葉が堅く香りもなく食用には適しません。
代々木公園にひっそりと咲くカントウヨメナ。
手前に大きな注意書きがあります。「公園の
草木は採らないでください」万葉の歌人なら
窮屈な世だと苦笑するかもしれません。
遅足氏の代筆にて駄文お許し願います。<殿>