古来より菊には清浄な力が宿っているとされ、高貴な姿と優雅な香りが邪気を払うと信じられてきました。
薬草としても用いられ、重陽の節句には健康や不老長寿を願って菊の花を浮かべた菊酒をいただいたり、花びらを浮かべた湯船に入ったりといった風習もあるようです。寄せられた句の中にあって菊の香りを一番感じられる秀句だと思いました。
麗子さん:菊の香りは強くて部屋をあっと言う間に満たします。「活けるそばから」という中七がいい。
泉さん:菊の香りは強い。部屋が菊の匂いでいっぱいになる
竹葉さん、能登さん、童子さんも採っておられます。まさに共感、菊の香に包まれて静謐な空間に座っているかのようです。
香りに温度があるのなら、菊の香はひんやりしていると思います。鼻に抜けていく感じはユーカリやローズマリーのようなハーブ系の清涼感があり、感覚が研ぎすまされ覚醒していくようです。姿勢も正され、仏花はもちろんセレモニーには欠かせない花というのもわかります。
麗子さんに続き私も母を亡くしました。奇しくも告別式は敬老の日で、母は孫やひ孫に囲まれて幸せそうな笑みを浮かべていました。
祭壇の菊の香りに包まれていると心が透き通って穏やかな気持ちになりよいお別れができました。 郁子