ひらひらと飛ぶ蝶。軽い蝶が墜落。
その音が結氷期の世界に響き渡った。
不思議なイメージの句です。
以前、爆笑問題が大学教授との対談で、カオスの話をしていました。
ほんのちょっとした事が、どんどん大きくなっていく。
たとえば、一匹の蝶がひらひらと飛びあがったことによって、
地球の気象に大きな変化が生れる。
それがカオスの理論だというのです。
富沢赤黄男の句は、そんな理論などなかった時代のもの。
俳人の直感はカオスの理論を理解していたでしょうか。
切株はじいんじいんとひびくなり
この句も不思議な句。
なぜ切株なのか?他のものでは?
と考えてみましたが、やはり切株しかないかな?
切断というコトバがじいんじいん、に響きあっているような感じ。
確かに切り傷がじいんじいんとすることがあります。
音のないところに音を聴いている点では、芭蕉の、
閑かさや岩にしみいる蝉のこえ
とは、また違った世界のようです。
遅足