575の会

名古屋にある575の会という俳句のグループ。
身辺のささやかな呟きなども。

亡き夫の日記の余白余寒なほ  亜子

2021年04月09日 | Weblog

 

初夏かと思う陽気が続いていましたが、まだ少し底冷えを感じる日もあり、

一進一退で春が深まっていくのを感じます。

 舌端に触れて余寒の林檎かな 草城

余寒=残る寒さはいろいろなものに詠まれます。

亜子さんの句は、亡くなった夫の日記の余白に思うという切ない句です。

ある日を境に空白のページが続く日記帳・・ページを繰っても次の書き出しが見つかりません。

 

 能登さん:日記の余白に感じるもの・・作者の心情が伝わってきます。

 須美さん:余白余寒で悲しさ淋しさがひしひしと伝わります。

 

私の父は、亡くなって二十数年たちますが

遺品整理の時に出てきた日記代わりのデスクカレンダーを見たとき、同じように感じました。

闘病中に書かれたものでしたが、徐々に筆圧が弱り、字が乱れ、ぷっつり途絶えるその日から白い余白が寒々と見えたのを思い出します。

ある意味、故人の肉筆は写真よりも有機的に存在感を感じませんか。

文字に人柄や思いがあふれているだけに喪失感も大きいのです。

執筆を日課のようにしている方であればなおさら。。

下五「余寒なほ」でまだ癒えぬ胸の痛みが続いているのがわかります。

 

 余寒なほ爪立ちともすひとりの灯  樋口冨貴子

この句も、合わせて心に響きました。郁子

         

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三月のかもめ並んで黙祷す  能登

2021年04月08日 | Weblog

先月の句会の自由題の部でトップ賞になった能登さんの句。

東日本大震災から10年。あの日を思い、皆が頭を垂れ黙祷します。三陸のかもめたちも並んで黙祷するように見えるまさに鎮魂の一句です。

皆さんのコメントをご紹介します。

亜子さん:「三月と黙祷」と言えば3.11の東日本大震災のこととすぐに分かる。悼む気持ちをかもめの姿に託した共感を呼ぶ一句。

結宇さん:東北の地震はつい今しがたでしたものね。海を見つめるカモメを想像できます。

竹葉さん:この時期は海にむかって祈りたくなりますが、海鳥のかもめの登場が深刻さを感じさせなくて良いと思います。

泉さん:3月11日になると思い出す海、かもめも静かにしている。

 

能登さんは兼題でも東日本大震災のことを詠まれました。

「大川小の悲鳴が聞こゆ修二会かな」

すみさん:大川小の悲劇と修二会が同じ時期と改めて感じた。

亜子さん:お水取りと大川小学校の悲劇は一見関係はないかも知れないが、途切れなく続く伝統行事と、津波で突然命を絶たれてしまった子供たち。深い意味があると感じられた。

 

10年経っても復興というにはほど遠く、東北の方の心の傷も癒えてはいないと思います。決して忘れてはいけない教訓として私たちはこの悲劇を語り継くためにも、俳句としても詠み続ける意味があると思いました。 

                                       麗子

 

 

 

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桜花や 背びら一片<ひとひら> 峠越え <殿>

2021年04月04日 | Weblog

丹沢の山歩きは久しぶり。小田急線の渋沢駅から塔ノ岳を目指します。峠を越したところで小休止。背には桜の花びらがひとひら。

 

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なか空に 春風<しゅんぷう>流れ 鳶過る <殿>

2021年04月04日 | Weblog

二子玉川の堤。渋谷からは首都高の高架下をR246が走り地下鉄となりました。しかし、昔は都電が走り二子玉川には小さな遊園地がありました。高校生の時に遊園地でデート。多摩川を見ながら彼女が作ってくれたお弁当を食べた記憶があります。いま、二子玉川は「ニコタマ」と変わりモダンな街へと変遷。しかし、堤からの空はあの頃のまま。鳶が飛んでいきます。

 

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春時雨 遺影となりし 叔母の笑み <殿>

2021年04月03日 | Weblog

亡くなった叔母の家は撤去されることになりました。ドイツ在住の従姉妹に送るのは家族のアルバム。開くと叔母の笑った写真が一枚。鎌倉に春の雨が降っています。

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つちかぜに 花の便りも 色褪せて <殿>

2021年04月03日 | Weblog

「つちかぜ」とは黄砂の意。中国やモンゴルの砂漠で発生した砂嵐が海を越えてやってきます。特に、近年は地球の砂漠化によりスーパー砂嵐が多発。中東諸国からの飛来も観測されているとの由。ちなみに「つちふる」の漢字表記は「霾」<ばい> 。古代中国では黄色に染まる大地は雨冠の下にいる狸の妖怪の仕業と考えたようです。黄砂が風にのると蒙古風、霾風、つちかぜ、となります。せっかくの春の花々を汚してしまう黄砂。しかし「土埃」でさえ風物詩としてしまうのが日本人の美意識かもしれません。

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春雨や 海は嫌いよ 少女言ふ <殿>

2021年04月02日 | Weblog

「須賀」はくじ引きの「スカ」を意。砂の混じった非農耕地を意味したそうです。モデルの名は「須賀」千葉の漁港の生まれとか。子ども時代に悲しいことでもあったのでしょうか。「海は嫌いよ」とぼやきます。春雨の降るロケ。 文と写真<殿>

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お水取り青衣の女人のまぼろしや  佐保子

2021年04月02日 | Weblog

青衣の女人 

 発音すると「しょうえ の にょにん」となります。

 

作者の佐保子さんの誕生日は、なんと「お水取り」の3月12日で

お父さまが奈良の佐保山に宿る(春の神様)にちなんだ名前をつけてくださったそうです。

今回の兼題選びも、こんなご縁があったからなのですね

 

 選句された竹葉さんのコメントです。

【「青衣の女人」のことを知り、女人禁制の時代に立派な女人がいたものと感心しました。ずーと、まぼろしでも過去帳に入れるなんて粋な二月堂ですが、これを詠まれたのはもっと凄いと思いました 】

 

20年ほど前、佐保子さんは、本などで調べた「お水取り」を一度観てみたいと、ひとりで宿をとって見にいらっしゃったそうです。

火の粉を浴びるほどお近くでご覧になれたのでしょうか。青衣の女人が幻想的で印象にのこり句にされたと伺いました。

 

青衣の女人とはいったい・・?

私も気になり、調べてみました。

 ≪鎌倉時代の修二会で、集慶(じゅうけい)という僧が過去帳を読み上げていると、青い衣を来た女性が現れます。

もちろんこの世の人のようではなく、誰ともわからない。

この女性が、「何故私を読み落としたのか」とうらめしそうに僧に問うたと言います。

僧は咄嗟に「青衣の女人!」と低い声で言うと

その青い衣の女性は、すーっと消えて行ったということです・・ ≫

 

不思議な出来事ですね。

そういえば同じく鎌倉時代、「吾妻鏡」に

のちに暗殺される源実朝が、青い女の人を見たというお話がでてきます。

不安な世相を反映したか、宗教や陰陽師の祈祷に頼ったころですね。今にも通じるかもしれません。

何百年もたつのに、今も低い声でゆっくりと「青衣の女人~」と読み上げ続けるという二月堂のお水取り。

少し背筋がゾクゾクしましたが(笑)いろいろなことを知り、とても楽しかったです。

お水取りの日から急速に暖かくなり、今や春爛漫。マスクをとって深呼吸したいものです。郁子

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水取や宿の戸口に鹿朝寝  等

2021年04月01日 | Weblog

新年度が始まりました。緊張感を持って臨む日に今朝はなぜか朝寝坊してしまいました。昨年度のいろんな疲れが吹き出した感じです。

さて、等さんのこの句は、お水取りの次の日の朝の様子。例年は観光客で遅くまでにぎやかなお水取り。

静寂を取り戻した朝と春の訪れに鹿が安心して旅館の戸口で寝ている様子を詠まれました。

ほほえましい古都奈良ではの一句。

着眼点がユニークで私も採らせていただきました。皆さんの感想です。

須美さん:ユーモラスで可愛らしい

能登さん:お水取りと朝寝の鹿の取り合わせの妙。

お水取りが見たくてひとりで奈良に20年くらい前におでかけになった佐保子さんも採られています。

今朝の奈良の鹿はどんな様子でしょうか?観光客は増えて来ているのでしょうか?

ちょうど10年前、震災のあと東大寺に平安を祈願に行きました。満開の桜が悲しいほど美しかったことを思い出します。麗子

 

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