
2020年2月1日 6時00分
建築家・藤森照信さん設計の新しい高部公民館の模型。来年5月の完成が見込まれる。屋根の上には火の見やぐらをしのばせる柱が立つ
茅野市高部区は、来年5月完成をめどに高部公民館を現在地に建て替える。新公民館の設計を同区出身の東大名誉教授で建築家の藤森照信さん(73)=東京都=に依頼。基本設計がこのほど出来上がり、区総会で報告された。外観は藤森さんのコンセプトを取り入れた造りとなり、木造平屋の外壁は昔の村の木の塀や倉の腰板にちなんで本格的な焼き杉の板張りにする。公民館を区のシンボルと位置付け、一部柱を屋根を抜いて立て、かつてあった公民館横の火の見やぐらをしのばせる。
同区は諏訪大社上社本宮と前宮の中間地にある。区内には藤森さんが設計した第1号の建造物「市神長官守矢史料館」(1991年開館)のほか、藤森さんがその後手掛けたユニークな形の「茶室」も点在。周辺には多くの人たちが訪れており、関係者は「藤森さんが設計した公民館ができれば巡回する場所が増え、地域の活性化につながるのではないか」とする。
現公民館は木造2階建て323平方メートルの広さ。建設から70年以上が経過し老朽化が進行、区は公民館建設基金を設けこれまで建設費を積み立ててきた。2017年に検討委員会を設け、その後、建設委員会に移行。19年に藤森さんに設計を依頼したところ「生まれ育ったところだから」と快諾を得た。
敷地は県道岡谷茅野線と市道を挟んだ三角地。公民館と隣接する民有地を昨年買い上げ拡大。既存地と合わせ625平方メートルを確保した。部屋の数や面積、使い勝手などは区側が藤森さんに要望。基本設計は、藤森さんがイメージし、親交のある諏訪n(スワン)設計企画=同市穴山=が設計図に書き起こした。
新公民館の面積は約260平方メートル。階段のない平屋にしてお年寄りの利便性を向上。現公民館より全体面積は狭くなったものの、大広場の大きは現状を維持した。
屋根の上まで抜く柱は、建物西に1本立てて、火の見やぐらに付き物の半鐘をつるすほか、それに合うよう東側にも対照的に一本屋根を抜いて柱を立てる。区の伝統的な相本社の秋の例大祭に合わせて例年公民館で行う「甘酒祭り」にも配慮。厨房の続きに上屋を設け荒天時に対応できるようにした。屋根は県道側が鋭角なこう配のある銅板ぶきとし、その逆側は鈍角なこう配のトタンぶきにする。
藤森さんはシンボルとなる何本かの柱は区内の木を使い、壁の焼き杉作業など危険のない作業は子どもを含む区民の参加を希望しているという。
計画だと、工事請負工事の入札は4月に実施。近くのプレハブ仮公民館に引っ越した後、現公民館の取り壊しに5月に着手し、新公民館は来年5月の完成を予定している。用地買収費を含む総事業費は約9000万円を見込んでいる。
公民館建設委員会の立石良忠委員長(71)は「敷地の地形などに合わせた理想的な形に設計してもらった」とし、「国外でも知られる藤森さん設計の公民館が出来上がれば、周辺を訪れた人も、公民館を訪ねるのではないか。一層ここに多くの人たちが訪れることで、地域の活性化になればと期待している」と話す。
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