■八剣神社(諏訪市)の宮坂清宮司が解説
諏訪湖を覆う氷が割れてせり上がる「御神渡(おみわた)り」の観察が年明け1月6日から始まる。近年は温暖化もあり、なかなか出現を見ることはできないが、
観察ツアーができるなど注目度は高い。
観察と御神渡りの認定を担っているのは諏訪市小和田の八剣神社。室町時代の1443年から580年間にわたる観察記録が残る同神社で、
1986年から観察を続ける宮坂清宮司(72)に御神渡りの基本的な知識や観察の楽しみ方を聞いた。
■湖の筋の交差点 神様の参会場所
―御神渡りができる条件は。
氷点下10度以下が数日間続くと諏訪湖が全面結氷し、氷が膨張と収縮を繰り返すと亀裂ができてせり上がります。湖を南北に走る最初の筋を「一之御渡(いちのみわた)り」、
2番目の筋を「二之御渡(にのみわた)り」、東西に走る筋を「佐久之御渡(さくのみわた)り」と呼び、筋の交差点は、神がご参会になられる場所とされてきました。
―観察時季と時間は。
観察は二十四節気の「小寒」にあたる1月6日から節分の2月3日までで、日の出前の午前6時半から始めます。氷が張りやすく、観察しやすいとされる諏訪市豊田の湖畔で行います。
寒さをこらえながら観察していると、陸に上がった時に太陽のぬくもりを感じられるようになるはずです。
■記録580年 畏敬の念が信仰の原点
―なぜ神社には580年間も記録が残っているのか。
普通の自然現象ではないからこそ人々が記録にとどめていたのではないでしょうか。毎年同じような場所に現れるため、(現代人の)「冬の風物詩」というような感覚より
もっと強烈な印象を受けたでしょう。自然に畏敬の念を抱いたのが、信仰の原点になったと考えています。
―諏訪信仰との関わりは。
御神渡りは夏暑く冬寒い諏訪の自然を象徴するもの。昔の人々にとって暖冬は大変なことで、諏訪湖に異変があると一抹の不安を覚えました。
聖なる自然を人間の力の及ばないものとして見る自然信仰の原点で、諏訪信仰を象徴するものの一つだと思います。
■自然との関係 考えるきっかけに
―2018年に5季ぶりに観察できた時の思いは。
みんな待ち望んでいたことで、ほっとしました。そして神社で収穫したわらを使ってしめ縄を作り、しっかりと拝観しようと思いました。
湖とともに人々が生きていると改めて感じさせられました。
―近年、注目が高まっていることをどう捉えるか。
注目の高まりは自然と人間の関わりが疎くなってきた表れで、御神渡りはそれを思い起こさせる格好の伝統文化になっています。
北海道や鹿児島など全国から自然の偉大さを見ようと来る見学者もいます。自然との関わりを自分で感じ、脱炭素や省エネなどについて考えるきっかけにしてほしいです。
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昨シーズンの御神渡りを取材した「御神渡りウオッチング」は以下のURLからご覧ください。
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