今日の本茶(ふんちゃ、またはホンチャ)峠は少し霧が
かかっていた。雨の日の奄美は杜もよい。
ここは、今は「旧道」。一村は散歩の途中
この道から時々自分のすんでいる辺りを眺めたりして
いたのだろうか。
ソテツの隣に生えているクワズイモはみつかりません
でした。
一村が通っていた、名瀬市大熊(だいくま)の紬工場
の向かいに「よろウジ」が住んでいた。「ウジ」は、目上の
人に対する尊称でおじさんと訳せばよいのか。
使い方がユニークだ。「よろウジ」は確か与論島からやってきた
おじさんだから。他にも、その人の性格や特技、癖などを
ウジのまえに付けて呼ばれる名物おじさんはいるはずだ。
一村は痩せて背が高かったので子供たちは「ながウジ」と
よんでいたと思う。そう呼び掛けはしない。
「よろウジ」は漁の名人で、獲れたてのコブシメ(いか)などを
もらった記憶がある。子供たちは「ながウジ」が絵を描く
おじさんだとは知っていたが、どちらかというと、よろウジのほうを
尊敬していた。今は、逆というわけではない。