『SAPIO(サピオ) 』2017年 10 月号 [雑誌]– 2017/9/4
名瀬の書店で買った。
ドラマの原作では、菊次郎が父西郷隆盛との思い出を回想する場面から始まると、聞いたことあるが、本誌でも、世界一の親日国台湾から始まる。奄美、西郷、菊次郎、台湾、のつながりは、よく知られているわけではなさそうだ。ドラマでは奄美発の西郷像が描かれるのだろうか。
・親日を巡る旅 第1回 台湾が今も大切にする日本精神
台湾で今でも尊敬される菊次郎は、2番目にすこし登場するだけで、奄美大島・龍郷潜居時代の西郷隆盛と愛子(愛加那)の長子として生まれたことなどは説明にない。菊次郎でさえ、歴史好きの人でも、その名前、経歴を知る人は少ないだろう。やはり、奄美発の西郷どんの必要が感じられる。菊次郎が、台湾宜蘭(ぎらん)庁長時代に宜蘭河に立派な堤防を築き水害から人々を救ったことを記念して建てられた「西郷庁憲徳政碑」の小さな写真と菊次郎の善政がいまも台湾で語り継がれているとの2行の説明文だけだ。関連 新しい『奄美発の「西郷どん」』パンフいただきました。
wiki西郷菊次郎:龍郷遠島中の西郷隆盛と愛子(愛加那)長子1861年生。同父母妹に、大山誠之助(大山巌の弟)の妻となる菊子(菊草)がいる
8歳で鹿児島、12歳で米留学。17歳で西南戦争で負傷。
外務省、米国公使館や本省で勤務。台湾、宜蘭庁長など。
京都市長(6年半
35頁までの特集を熟読した。
一番注目したのは
社会学的考察
死を恐れぬ武士の資質は政治家の限界でもあった
西郷は日本右翼の原型である 社会学者 橋爪大三郎
筆者の『はじめての構造主義』 (講談社現代新書)1988
は昔よんで、非常にわかりやすく2度読んだ記憶がある。
それもこの記事に注目した理由のひとつになるが、
『ふしぎなキリスト教 』(講談社現代新書)2011
は、途中まで読んで、本が行方不明になっていることに
今気づいた。
西郷の「敬天愛人」には、間接的ながらキリスト教の影響があることが最新の研究で明らかになっていると19頁の別の記事にある。
「代表的日本人」(内村鑑三)の西郷の言葉にある、どこかバタ臭い不思議な響きも謎だ。
それはさておき、
農業経営にも従事せざるを得ない薩摩の下級武士は、ドイツのユンカーに似ているとの指摘は、この記事の最後の結論である「対米英戦争は、かたちを変えた征韓論だった」につながている。意外で興味深い論理だが、それが非常にわかりやすい。ダイナミックな展開だ。
新しい政体を模索した多くの脱藩者たちが敗れさり、代わりに主力となった改革派が
藩を乗っ取った雄藩の指導者らが新政府の中枢のポストに就いたという指摘も現在を考える上でも示唆的だ。
しかし、新政府は彼らに行政ポストを与えることができなかった。
ここから、明治6年征韓論争から西南の役までの「西郷の特徴と弱点」を追う。
「西郷には集権的な国家が必要だという認識はあったが制度の構想がなかった。自分の私心のない真心がその代わりだった。」
これも、これまでの西郷イメージによく符合する。
個人倫理で制度の欠陥を乗り越えようとする、日本右翼の原型である。だから内村鑑三は、西郷を「代表的日本人」とよんだ。
「右翼の本質は、重要なものが奪われた喪失感を、死を賭した行動で埋め合わせようとする。
その行動の結果、喪失が深まるばかりなのに。」
「大日本帝国憲法は、制度を理解しない人びとのあいだではうまく機能せず、対英米戦争に帰着した。制度を超えたロマン的心情を代弁するものとして西郷隆盛は日本人の、心の深層に伏流する。対米英戦争は、かたちを変えた征韓論だった。」
この構造は現在もいたるところに見出せそうだが、西郷のごとき英雄がいないせいか、大事にはいたっていない。
ここで、制度を理解しない人びと(西郷を含めてなのだが)という言葉がポイントになる。それは現在では、どういう人々をいうのだろうか、あるいは、もう今はいないのか。
結論は簡単には出ない。それは「西郷の特徴と弱点」でもあるのだろうが。
これは
童門冬二の(PHP 2017/05)
西郷は、「情」に棹さして流され、大久保は「知」働いて角を立てて死を招いた。
つまり、人間関係か組織の論理か、
そして、西郷が「何を」人間ではなく、「誰が」人間だった、という指摘にも
ある意味対応するのだろう。
以下2017 10/3日追記
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つぎの注目。
心身の異常
西郷のストレス、下痢が日本の歴史を変えた。
「満身創痍の西郷」では運動不足や食生活などからくる肥満、ストレスが引き起こす
さまざまな心身の疾患の原因のいくつかが、島での牢生活に求められている。こういう役回り?が多いなあ島はW。それだけではないはずなのに。やはり、奄美発の西郷隆盛が必要だ。
深遠な論理的社会学的考察と比べると
身もふたもない感じもするが、それだけに史実(史料)に照らして指摘されるとみょうに納得もするのだが、生身の人間のことだから、それを言ったらどのようにも・・・との感がしないでもない。
きりがないのでこのくらいにしておこう。
その他、「老後の不安を一気解消できる「経済頭脳」の鍛え方
も読んでおこう。
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雑誌
出版社: 小学館 (2017/9/4)
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(2017年09月08日 | 本と雑誌)
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