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明治維新 1858-1881 (講談社現代新書)
坂野 潤治 (著), 大野 健一 (著)
5つ星のうち 4.6 (10件のカスタマーレビュー)
名瀬の書店で、たしか暑いさかりの時分に目にした。読む気になれずいたが師走になってまだ書店にあったので
この前に読んだ2010年11月26日 (金曜日)
『西郷隆盛と“東アジアの共生”』高 大勝 (著)
の征韓論の部分だけでも、読もうと思って買ってよんだ。(来年は少し計画的な読書にしたいものだ)
読み出すと、理路整然と無駄なくわかりやすくおもしろく、一気に読めた。
そっけないタイトルだが、副題?の1858-1881をよく考えよ。
1858年(安政5)は日米修好通商条約を皮切りに蘭露英仏との通商条約があいついで調印された年であり、翌年から本格的な対欧米貿易が開始された。
1881年は明治十四年の政変。1881年(明治14年)に自由民権運動の流れの中、憲法制定論議が高まり、政府内でも君主大権を残すビスマルク憲法かイギリス型の議院内閣制の憲法とするかで争われ、前者を支持する伊藤博文と井上毅が、後者を支持する大隈重信とブレーンの慶應義塾門下生を政府から追放した政治事件である。1881年政変ともいう。wiki
本書ではこの期間を「変革期」として、多角的に分析する。
明治維新は薩長土肥の軍事力に中央集権政府が樹立され、その中央政府の富国強兵策により、日本の近代化が達成されたとする通説の概念に本書では「封建商社」と「封建議会」の結合というモデルが対置される。p40
「封建商社」といえば鹿児島藩が奄美の砂糖の独占販売をもくろんだ「大島商社」や「南島興産商社」を思い出すが、奄美の砂糖にはあまり触れられず、以下の五代友厚が「琉球国の砂糖」についての意見が目についたので書き出しておきます。
開国第一の良策
幕末雄藩の「富国強兵」策についてはすでに詳しく見てきたところだが、ここでは薩摩藩の五代友厚が1864(元治元)年に藩に提出した意見書の要約を追加するにとどめよう。
五代は、攘夷などをいまだに唱える者は世界情勢に暗いのであって、これからは開国交易の時代であるから、薩摩は他の諸藩に先駆けて富国事業を展開すべきであると論じる。具体的には、上海にコメ・生糸・茶・椎茸・昆布・するめ・木材などを輸出せよ、そのうち生糸は目下のとろ貿易禁止品であるから、江戸藩邸から手を回して関東産生糸を買い占めて輸出すれば、上海における利益はまた格別であるという。茶は領内の地味が適しているから、道の左右にまで並木のように植えつけ、それを紅茶にして売ればこれもまた大きな利益が見込める。昆布は、北海道産を長崎に輸送したうえで倉庫にとどめ、時期をよく見はからって上海へ回すとこれも大儲けができる。琉球国の砂糖にいたっては、天下無類の産物だから、上海でコメを売って得た利益で製糖機械20台を西洋から輸入して白砂糖を製造し、これを上海で売ると実に100万両以上の利益が得られるというソロバンをはじき、これこそ開国第一の良策であるから早々に実行されたいと力説するのである。(石井孝『明治維新の舞台裏』第二版 岩波新書 1975年 62~63頁)
本書194頁
『征韓論の変」そのものの経緯については、通説と変わりはないが、以下の記述は前掲書と共通する部分もある。もう一度確認したい。
内戦終了後に革命軍が東アジア諸国との一戦を求めたなかでは、この引用文(板退肋監修『自由党史』上巻、岩波文庫、▽1957年、65頁)中にある「台湾の一条」が最大の事件であった。欧米から大久保が持ち帰った殖産興業路線や木戸が決意を固めて帰ってきた憲法制定構想の大きな障害になったのは、歴史教科書で大きくとりあげられている1873年の征韓論分裂ではなく、翌74年の台湾出兵の方であった。前者は明治政府内部での権力争いのレベルにとどまった事件であったが、後者は陸海軍の出動と財政負担をともなう実際の軍事行動であった。
軍艦五隻と正規兵3600人(他に鹿児島の西郷配下の義勇兵も参加)が半年余にわたって台湾の一部を占領しつづけたのは、当時の明治政府にとっては大変な財政負担であった。大久保があれほど熱心に視察してきた欧米の機械制工業を日本に移植しようにも、その財源は台湾出兵に食われてしまったのである。しかも台湾は中国の一部であるからこの出兵は日中間の軍事衝突のリスクさえはらんでおり、もしそれが現実となれば明治国家にとっては大問題で「殖産興業」どころではなくなる。p58
内容紹介
途上国ニッポンはなぜ一等国になれたのか?
「富国強兵」「公議輿論」――。
幕末維新期、複数の国家目標を成就に導いた「柔構造」モデルとは何か?
政治史家と開発経済学者が明治維新の本質を捉え直す一冊
内容(「BOOK」データベースより)
西郷隆盛、大久保利通、木戸孝允、板垣退助―途上国を一等国に導いた指導者を分析する。
登録情報
新書: 227ページ
出版社: 講談社 (2010/1/19)
言語 日本語
ISBN-10: 4062880318
ISBN-13: 978-4062880312
発売日: 2010/1/19
商品の寸法: 17.6 x 10.8 x 1.8 cm
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伊藤博文―知の政治家 (中公新書) [新書]
瀧井 一博 (著)
5つ星のうち 4.3 レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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新書にしては重厚で、内容も高度で充実。ついでいけず飛ばし読みをした部分もかなりある。
伊藤博文は有名な割りには学会での評価は低く、司馬遼太郎の小説の中でも高い評価は見られない。一般にも 韓国併合の推進者とされ、極めて低い評価を受けている。しかし本書では、そうではないとして緻密な論述が続くのだが、素人には一度読んだだけではなんとも判断しがたい。しかし、現在の国際情勢を見る上でも参考になる所もあり、うなずけるところはいくつかあった。歴史好きには面白く読めるのでは。
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
幕末維新期、若くして英国に留学、西洋文明の洗礼を受けた伊藤博文。明治維新後は、憲法を制定し、議会を開設、初代総理大臣として近代日本の骨格を創り上げた。だがその評価は、哲学なき政略家、思想なき現実主義者、また韓国併合の推進者とされ、極めて低い。しかし事実は違う。本書は、「文明」「立憲国家」「国民政治」の三つの視角から、丹念に生涯を辿り、伊藤の隠された思想・国家構想を明らかにする。
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登録情報
新書: 376ページ
出版社: 中央公論新社 (2010/04)
ISBN-10: 4121020510
ISBN-13: 978-4121020512
発売日: 2010/04