3本の松の幹をよく見ると、真ん中の松の幹にだけ枝からでなく、直接幹から葉が出ている。
他の2本は、高く伸びた枝から、緑の葉を繁らせている。これが普通の松である。
真ん中の松を見上げると、幹を這うようにして、葉が、ずっと上まで幹から出ている。
広い松林の中をみんな見て回ったわけではないが、その辺りを歩いて見たが、同じような松は見当たらなかった。
そこで、もう一度その松のところに戻り、かれて落ちている松葉を指で摘まみながら見た。
風で集められて地面に出ている根方の落ち松葉の中に、葉が3本ある松葉を見つけた。
三鈷の松に違いない。
弘法大師伝説の三鈷の松は、四国お遍路のお寺や、京都の永觀堂でみたことがある。
しかし、この浜寺公園の松林の中で見たのは、大きな感動だった。
落ち松葉が無数にある中で、三鈷の松の落ち葉を探すのは、少女の頃,校庭の端のクローバーの中から四葉を見つけると幸せになれると、わくわくしながら、友人と探しあった,あのときめきに似ている。
見つけた三鈷の松葉を、先が折れないように、根元が外れないように、バックの中に入れていた、大事な詩の絵本に丁寧に挟んだ。
この小さい絵本ならしっかりと松葉を家に持って帰る役目を果たしてくれるだろうと。