苔生した石垣の並びに呼び戻されたような気持ちでゆっくりと坂を下る。
向こうの先のカーブを曲がって、この石垣道に入った時、「ここだったんだ」と歩いて麓から登った頃の記憶が甦ってきた。
光の当たり具合では、ビロードのようで、触れてみたくなる。
たぶん杉苔ではないかと思って調べてみると、次のような文を見つけた。
『苔は普通のどの植物より強い生命力を持っています。
スギゴケは、空気中の水蒸気からの水分と自力の光合成による栄養補給によって、生育に必要な要素のほとんどをまかなっています。ですからこれといった手入れも必要ではありません。』
この小さな塊が、自力によって成長し、山肌を覆うのには、やはり年月の積み重ねの多さを物語っているのではないだろうか。
大澤寺の歴史と共に生きている苔に、愛しさをおぼえた。