映像:藤沢周平ゆかりの善宝寺の山門
藤沢周平ゆかりの禅寺にやってきた。桜の季節には禅寺さえ華やかになる。
小説「龍をみた男」の素材となった寺。我が国唯一の魚鱗一切供養塔で知
られる五重塔があり、漁業関係に信仰厚いという。龍神信仰の古刹である。
放浪の俳人:種田山頭火の歌碑が湯田川温泉梅林公園にあった。種田山頭火は
主に九州で放浪・活動しているのだが東北までの足跡は信州国の俳人一茶、奥
の細道の芭蕉等が彼を惹きつけたのだろう。
歌碑:二首(種田山頭火)
『 みちのくは ガザさいて秋 兎死うたふ 』
『 朝蝉 夕蝉 なぜ あなたは 来ない 』
解説:第一の歌の「兎死」とは鶴岡の歌人和田光利の雅号であり、解釈すると
「ガザの花(タニウツギ)が咲く秋の日友が歌を詠む」くらいかな。また、第
二の歌はこれぞ山頭火という究極の歌だ。「真夏の暑い蝉しぐれ誰もい
ない」と筆者は彼の孤独を読み取った。「あなた」は友でも心の人でも、
家族でもいい山形の猛暑にただセミだけがなく空間に圧倒された歌だっ
た。因みにこの歌は平泉から鶴岡市湯田川温泉へ放浪した時の歌である。
参照#放浪の歌人『種田山頭火』探訪紀行
画面左の和服姿が野口智子氏、左の立っているのがファシリテータ
の佐々木純一郎弘大大学院地域社会研究科教授。Bグループの輪
弘前大学大学院地域社会研究科が県(まるごとあおもり情報発信チーム)と
コラボし、平成24年度あおもり観光人材育成事業としてあおもりツーリズム
創発塾弘大を設置し、第一回カリキュラム(観光人材の結集)が開催された。
基調講演にはスローライフでお馴染みの野口智子氏(スローライフジャパン
事務局長)の講演「津軽白神の魅力と課題の共有」に注目し、筆者はオブザ
ーバー参加した。
3.11東日本大震災後は、これまでのファーストからスローへの転換が必要
観光・地域・農漁業・食べ物…印象的なツーリズムが開発されるとの講話だ
温泉も又、団体行動から、個人グループ、極上湯、湯治湯への変化が見られ
まさしくスローライフ、スローフード、スロースパの時代が到来する予感。
所感:3.11以後、日本は経済成長路線から生活充実路線へ、消費から節約へ
スピードからスローへ、団体から個人へ人々の意識が激変しつつある。
たった一つの地球に50億の人類がひしめきあっている。私達は変化し
ないといけない。後退でない、立止まり、本当の幸せを再考するのだ。
真田広之主演「たそがれ清兵衛」のロケが行われた境内。
参道から社殿を望む。深い杉木立に真直ぐな階段参道が
清兵衛の真直ぐな武士を彷彿とさせる最高のロケ現場だ。
作家藤沢周平は湯田川温泉とは深い関係がある。代表的
な作品で映画化された『たそがれ清兵衛』の撮影現場と
なったのが温泉街中央部にある由豆佐売神社。映画では
実に渋い雰囲気を醸し出す。この階段参道の正面の小道
を抜けると共同浴場『正面湯』。斎藤茂吉、横光利一、
種田山頭火、竹久夢二など多くの文人が憩った温泉郷だ。
参照:湯田川温泉の中央部にある由豆佐売神社
湯田川温泉の守り神が「由豆佐売神社」である。映画「たそがれ清兵衛」の
ロケ地でこの神社の境内が使われた。山田洋次監督の目利きもさる事ながら
物語を描いた作家:藤沢周平の研ぎ澄まされた筆致がこの景観を引き寄せた。
社格:郷社 祭神:溝樴姫(みぞくいひめ)命、大己貴命、少彦名命 神事:温泉清浄祭
今回の春旅の最終目的地:湯田川温泉に到着。5年振りだ。
旅館の多くは木造瓦屋根で鄙びた温泉地雰囲気を醸し出す。
山形県内では肘折温泉に次ぐ古い温泉地。名湯の里である。
庄内藩主の湯治場で種田山頭火、藤沢周平ゆかりの温泉地。
記録:平成13年11月13日に国民保養温泉地に指定された。
参照#湯田川温泉を代表する泉質・湯情の共同浴場「正面湯」
エメラルド色の潟沼の傍らに歌人斉藤茂吉の碑が建っている。
茂吉は歌人であり、精神科医であった。そして山形県の出身
鳴子温泉は山形県境に。そんな関係で茂吉も訪れたのだろう。
『みづうみの
岸のせまりて
硫黄ふく
けむりのたつは
一ところならず』 茂吉
歌意:潟沼の急斜面に硫黄が吹き上げている
それもあちらこちらから激しく吹き上げる
感想:斉藤茂吉は美人弟子(永井ふさこ)と禁断の恋に落ちた
それも俳人;正岡子規の従妹という才女。この歌は心が
表現されていないのはむしろ不思議、拡大解釈をすれば
エメラルドの様な美しい恋人を潟沼に譬え、激しく吹く
硫黄は茂吉自身の切ない感情だろう。28歳も若い美人弟
子に夢中であった斉藤茂吉の心中を察して余りあるのだ。