実りある湯めぐりだ。残念なのは、最も温泉密度が濃い鹿児島市内
の温泉銭湯をチェック出来なかった事だ。未踏の温泉地を含め次回
の楽しみとしたい。これから麓の空港を目指し霧島温泉郷を下る。
湯之谷山荘の内湯硫黄泉の手前の小さな枡湯。29℃のぬる湯は湯壷
からあがる事を許さない。体の隅々に炭酸が染み渡るそんな浴感だ。
【Data】単純炭酸泉 29℃ pH5.3 源泉:湯之谷ラムネ泉
参考:本物の名湯ベスト100(講談社現代新書:石川理夫著)-18位霧島温泉郷
夜明け前に高千穂を後にする。もう時間がない。帰りは鹿児島空港からだ。
で、時間を見つけて霧島温泉郷の秘湯の一つ、東北は谷地温泉を思わせる
湯之谷山荘に寄る。鹿児島最後の温泉だ。熱の湯とぬるい湯との交互入浴。
谷地温泉の古くからの入浴法とまったく同じ。北と南の似た入浴法に驚く。
映像は熱い硫黄泉、その手前に次に紹介する小さい枡湯があり温い。二人
も入ったら満杯だ、体がくっ付くよ。やはり、一人で交代で入るのがよい。
【Data】 単純硫黄泉 44.1℃ PH5.3 源泉:湯之谷硫黄泉
参照#湯之谷交互浴温い湯壺 ②東北青森の秘湯交互浴「谷地温泉」
青森県野内川河口鮭が一匹ゆっくり泳いでいた。
満身創痍の姿にはこの生命の終末を予感させる。
ここはまだ河口だと言うのに…生命の引継ぎは?
11月26日降雪があってもおかしく無いこの地は
穏やかな残照がこの消え行く命を照らしていた。
川の流れに逆らい緩やかに果てるまで泳ぎ抜け!
鹿児島霧島温泉まで辿り着き、どうしてもその先の神話の里に行きたい思いに駆ら、
れ深夜車を飛ばしてこの地に来た。社殿は深い闇におどろおどろしく包まれていた。
社格:村社(天岩戸の民間信仰) 祭神:大日孁尊(おおひるめのみこと)
神事:天岩戸神楽まつり(11月3日)
参照#天岩戸神社(宮崎県高千穂町)
妙見温泉の秘湯『和気の湯』その謂れは興味深い。小生たまたま京都出張の
折、護王神社の前を通りかかった。京都は社寺が多いのだが小奇麗なこの神
社に参拝し、祀っている謂れを見てビックリなんとこの社は時の権力者道鏡
の謀略により大隈の国(鹿児島)に流された和気清麻呂公を祀っていたのだ。
和気この変わった苗字の公家。当時は京都遷都長官という高官。この鹿児島
と京都の点が小生の目の前で見事線となった。和気清麻呂は鹿児島妙見近辺
で失意の日々を送ったのだ。そして癒されたのが『和気の湯』(想像であるが)
和気清麻呂は、幼少から天皇に仕え尽くす様にと親から教えられ育ったとか
因みに姉君は安芸(広島)に流された。権力とはこの様に無残な仕打ちをする。
1200 年前の出来事。温泉観光士は秘湯『和気の湯』を日本最古の秘湯認定。
社格:別格官幣社 祭神:和気清麻呂公、和気広虫姫
参照#和気の湯(鹿児島妙見温泉)
「どさんこ」の若旦那の案内で妙見温泉の奥地に秘湯を訪ねる。「和気湯」
全くの野天風呂、所有は個人。多少温目だが由緒ある物だった。坂本竜馬
夫婦も入った とされる。京の公家和気清麻呂から『和気湯』の名前が由来。
京都で偶然この秘湯の由来元和気清麻呂を祀る神社に辿りつく事と成った。
【Data】含土類ー重曹泉 40℃前後 PH6.1 源泉:和気の湯
参考:本物の名湯ベスト100‐56 新川渓谷温泉郷(講談社現代新書:石川理夫著)
参照:護王神社(祭神:和気清麻呂)
『どさんこ』貸切湯を味わい暫し渓谷を散策。新川渓流沿いに斉藤茂吉の文学碑
がある。歌人斉藤茂吉は山形最上地方を拠点としたが与謝野夫妻の感化か全国の
温泉地に足を伸ばしている。交通が相当に不便な時代、偉人のエネルギーを感ず。
『日当山 妙見 安楽 塩浸 湯は沸き出でて くすき国ぞ』
斉藤茂吉の長男、精神科医斉藤茂太氏が先ごろなくなった。歌人であり、著名な
精神科医でもあった茂吉のDNAの一つが途切れた。
映像:温泉好き西郷どんの足跡を訪ねて、すっかり西郷翁になりきっての入浴の筆者
桜島、垂水と移動、いよいよ最終予定地妙見温泉に遊ぶ。霧島連峰のお膝元、天降川
流域新川渓谷沿いの温泉地。もちろん西郷どんも来ただろう。日本温泉地域学会仲間
の温泉旅館に立ち寄る。『味の宿どさんこ』である。九州なのに「どさんこ」?以前
北海道に縁があるとか。主人の案内で貸切露天風呂に湯遊。渓谷からの風が心地良い。
【Data】含土類ー重曹泉 48.5℃ PH6.7 源泉:妙見40号
参照:妙見温泉近く、鉄っちゃん人気の無人駅「嘉例川駅」
映像:日本一長い足湯:長さ60㍍幅60㌢深さ40㌢水深30㌢
桜島から大隈半島に渡る。高隅山の斜面にはカボスが実り南国の情緒を醸し出す。
そんなのどかな地に桜島を見ながらの垂水温泉足湯〔道の駅たるみず湯っ足り館〕
がある。垂水といえば、飲む泉水で知れているが、飲んで良し入って良しである。
【Data】弱放射線単純硫黄泉 49.8℃ PH9.6湯量 90ℓ/m 源泉:垂水温泉
飲用:生命の源天然ビフォアクロレラが多く含まれる。 天然ゲルマニウムが通常
の温泉水の100倍以上8.89ppbも含まれている。
映像:国民宿舎レインボー桜島の浴室の窓からは錦江湾越しに鹿児島市内が見えた。
学校の窓は太い金網で覆われ、あちこちに『防空壕』、まるで戦時中?そう火山弾
からの退避処が設置されているのだ。非常事態宣言がいまにも出そうな桜島にも多
くの人々が生活しているそして温泉がある。ズバリ『マグマ温泉』!まるで溶岩を
思わせる色だ。これはただの食塩泉では無い、複数の成分を内包するマグマ源泉だ。
【Data】食塩泉 55.8℃ pH6.6 源泉:桜島マグマ温泉 ラドン7.88ベクレル/㎏
陽イオン:ナトリウム4854㎎、カリウム545㎎、マグネシウム325㎎、カルシウム1265㎎
陰イオン:塩素10760㎎、硫酸803mg、炭酸水素201㎎ 成分総計19150㎎
参照#鹿児島県 温泉地 データ・ベース
映像:飛行機からみた桜島(御嶽)上空・錦江湾の様子
鹿児島温泉探査もいよいよ佳境に入ってきた。限られた日数で点でしか辿れない
もどかしさ。今回の悔しさを次回に生かそうと思う。桜島は今も噴気のある火山。
温泉の源が其処にある。霧島からも鹿児島市内からもどこからでも見える火山島。
日本百名山:作家深田久弥が選定した100の名山には入っていないが、名著の
後記には次の様に記述されている
『九州は六座選んだが、ほかに由布山、市房山、桜島山が念頭にあった』
記録:標高1,117m 山系:独立峰 種類:成層火山、活火山ランクA
温泉:桜島の麓に湧く温泉。その名も、桜島マグマ温泉。
霧島山麓から発する天降川の流域、西郷どんが野山を掛けた地、日当山。『♪兎追いし彼の山、
小鮒釣りし彼の川…』この歌は長野県豊田村界隈の情景を歌にしたのだが、西郷どんは歌の
ように野に遊び狩猟をし、お湯に親しんだ。何処でも見られる懐かしい『日本の故郷の景観』。
日当山は戊辰戦争後、傷を癒したと言われ西郷隆盛がもっとも長く滞在した温泉地、
天降川沿いに「西郷どん湯」がある。200年の歴史を持つ日当山最古の温泉で通
称 “元湯”。撮影をしていたら女将さんに呼び止められた!温泉関係者(日本温泉地
域学会認定温泉観光士の名刺提示)を確認したら、親切にも施設を案内してくれた。
【Data】芒硝泉 49.6℃ PH7.8 源泉:日当山36号