(94年のルワンダでのジェノサイドへのフランスの関与を告発するイベントのようです。 “flickr”より By Cyril Cavalié
http://www.flickr.com/photos/cyrilcavalie/2556713496/)
*****仏当局、ルワンダ大統領暗殺事件の容疑者をパリへ移送 首都キガリでは抗議デモ***
1994年のルワンダでの大虐殺前に発生した大統領暗殺事件に関与したとしてドイツで拘束されたRose Kabuye容疑者(47)の身柄が19日、フランス当局に引き渡された。
Kabuye容疑者は、ルワンダのポール・カガメ大統領の長年の側近。元ゲリラ指導者で、現在はカガメ政権で儀典長を務めている
ドイツ警察は、フランス当局の逮捕状に基づき、フランクフルトの空港に到着したKabuye氏を拘束していた。Kabuye氏の身柄はフランクフルトでフランス当局者に引き渡され、パリへ移送された。
(中略)
欧州の捜査当局では、Kabuye容疑者らに対し準備されている訴訟内容を弁護士らが知るために、Kabuye容疑者が意図的に逮捕された可能性もあるとの見方も出ている。
ルワンダの首都キガリではKabuye容疑者の拘束を受け、3日間にわたって抗議デモが行われた。19日にも、Kabuye容疑者の身柄がフランスに引き渡されたのを受け、再び数万人規模の抗議デモが起きている。【11月20日 AFP】
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【94年当時のルワンダとフランス】
94年に起きたルワンダでのフツ族によるツチ族大虐殺の直接の契機となったのが、同年4月6日、ハビャリマナ・ルワンダ大統領の乗った飛行機(ブルンジ大統領も同乗)が撃墜された事件でした。
フツ至上主義者からは“ツチ族の仕業だ”という扇動がなされ、ツチ族虐殺が開始されました。
この事件へのツチ族反政府組織RPFの関与については、当時PRFを率いていたカガメ現大統領は否定しており、ツチ族一掃を狙ったフツ至上主義者の犯行ではないかとも言われています。
90年から政府軍とRPFは内戦状態にありましたが、フツ族政権を率いるハビャリマナ大統領はRPFの攻勢・国際世論を受けてツチ族RPFとの間でアルーシャ協定を締結します。しかし、フツ過激派がこれを拒否。
協定は凍結され、かわりRPFを含む暫定政府がつくられます。
フツ過激派にとっては、ツチ族に“譲歩”するハビャリマナ大統領が“邪魔”になりつつあったことが想像されます。
ハビャリマナ・ルワンダ大統領の搭乗機撃墜事件をめぐり、ルワンダ政府との結びつきが強かったフランス(撃墜機のパイロットもフラン人)は、事件はツチ族側の犯行という立場から、ルワンダのカガメ現大統領が首謀者だったとする報告書を04年にまとめ、カガメ現大統領の側近9人を国際手配しています。
これに反発するルワンダ政府は06年、仏政府の大虐殺での役割を調べるための特別委員会を設け、06年11月にはフランスと断交しています。
そして今年08年8月には、80万人が犠牲になったとされる94年のルワンダ大虐殺に、当時部隊を派遣していたフランスの政治家らが積極的に関与したとする報告書をルワンダ政府は発表しました。
この報告書では、120人の目撃証言に基づき、仏軍兵士が殺人やレイプに直接かかわったほか、民兵側の路上検問を黙認するなど、政治的・軍事的に支援したとしています。
そして、その責任者として、当時首相だったフランスのエドゥアール・バラデュール氏、当時外相だったアラン・ジュペ氏、当時ジュペ外相の側近を務めのちに首相となったドミニク・ドビルパン氏、当時大統領だったフランソワ・ミッテラン氏ミッテラン氏ら政治家と軍関係者計33人の名前が列挙されています。
このあたりの経緯については、8月6日ブログ「14年前のジェノサイドへのフランス関与を批判」で取り上げたところですので、ルワンダへのフランスの係わりについて再録します。
http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080807
****フランスの旧フツ族政権のつながり(8月7日ブログからの再録)*****
フランスは当時のフツ族政権を武器や人員派遣などの軍事援助で支える存在であり、フランスから購入された武器が虐殺に使用されたと言われます。
フランスは一貫してフツ至上主義政権とその配下の民兵を反政府軍RPFの攻撃下にある正統な政府組織と認め、同時にRPFをハッキリ敵だと見なしていました。
虐殺発生後も、アメリカなどが動かないなか、「軍事的・人道的介入」と称して“ターコイズ作戦”を提案し、2ヶ月間の期間限定ながら国連の承認を得て、武器使用が許可された軍を展開します。
フランス軍のスポークスマンは「二重のジェノサイド」を喧伝してRPFをクメール・ノワール(黒いクメール)と呼び、虐殺を行ったフツ至上主義者ではなく、進撃するRPFと交戦してその進撃を止めています。
難民保護を目的とするフランス軍のターコイズ作戦は結局のところ、ツチ族の虐殺をさらに一ヶ月続けさせ、ジェノサイドの命令者たちが多くの武器を持ったままザイールへ逃亡する安全な通路を確保したにすぎないとの評価があります。
カガメ大統領は「ターコイズ作戦でフランス人は犠牲者を保護するのではなく、殺人者を救助しようとした」と発言していますが、フランス政府はこれを「事実に反する」と批判しています。
もっとも、フランス元大統領ジスカール・デスタンも「大虐殺をした者を保護している」と非難しています。
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【余裕ある社会】
話は全く変わりますが、「米ドルはもはや世界の基軸通貨ではない」といったサルコジ大統領の挑戦的とも言えるような言動が話題になっています。
そんななか、最近目にしたフランス関連の話題。
****【パリの屋根の下で】山口昌子 定年延長反対、もう働きたくない*****
「65歳まで働くなんて、とんでもない。余生の楽しみを政府は奪おうとしている」。仏南部ニース空港でエールフランス(AF)の制服を着た美人乗務員はこう主張した。(中略)
サルコジ政権は最低限の公共サービスを維持するミニマムサービス法を今年1月から発効させた。しかし、相変わらずストは「フランス名物」だ。先週の週末だけの予定だったAFのストは今週にずれ込み、鉄道、郵便、教員ストも始まった。 (中略)
フランスもご多分に漏れず、年金のほか健康保険料なども含む社会保障費は巨額の赤字だ。政府は65歳、あるいは70歳まで定年を延長することで、掛け金を少しでも増やそうとの算段だ。(中略)
30年以上も前の留学生のころ、フランス人は55歳から60歳への定年延長に反対していた。当時もいまも日本では一般的に「定年延長大歓迎」だから、「定年延長反対」の主張は理解しにくいかもしれないが、フランス人の説明を聞いていると説得されそうになる。
「職場の嫌な人間に永遠に別れを告げ、読書や音楽会、旅行などをたっぷり楽しみたい」
もちろん、フランスのように社会保障制度で老後がきちんと保障されていることが前提条件だ。まず年金でほぼ暮らせるので、定年後の就職先、つまり収入源を探す必要がない。ぶらぶらしていても「いいご身分」と皮肉られることもないし、「再就職先がない無能力者」という扱いもされない。「後期高齢者」の呼び方に象徴されるような老人切り捨て社会ではなく、老人はまあまあ大事にされている。【11月19日 産経】
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ただならぬ不況の襲来に脅える日本で職を探す高齢者を思うと、仕事に対する考え方の違いがあるにせよ、“定年延長反対”というのはうらやましい余裕であり、また、確かにできるものなら自分も人生もそうありたいものだと思わなくはありません。
日本も欧州並みの所得水準を達成してしばらく経ちますが、そこにはやはり差があるようにも見えます。
旅行していても、休暇・バケーションのとり方が全く違います。
このような余裕ある社会を支えているのは富・資産に関するストックでしょう。
もちろん文化の違いもありますが。
フローの比較だけではわからないものがあるようです。
【植民地支配】
しかし、そのヨーロッパ社会が抱えるストックはどこから由来したのか?
やはり長年の植民地支配から収奪した利益の蓄積によるところが大きいのでは。
その植民地支配に関し、05年アルジェリアを訪れたパリ市長のベルトラン・デゥラノエは次のような明確な謝罪を述べています。
「植民地支配は、歴史上の極めて遺憾な行為です。人々が平等でない限り文明社会は存在しません。」
「植民地支配という行為は不当なものであります。正当なものとは、人々が自由であるということです。」
「ドイツの名においてヴィリー・ブラントがひざまずき、許しを請うたとき、ブラントはドイツの威光をさらに高めたのです。過ちを認めることが自らを貶めることにはなりません。」
手にした自国権益を守るべく現地勢力と結託して・・・というようなことがもしあるとすれば、決別したはずの植民地支配と殆ど変わらない構図のようにも思えます。