(首都トビリシで熱弁をふるうサーカシビリ大統領 撮影は今年8月15日とありますので、ロシア侵攻直後の時期です。 その政治姿勢から国内の求心力がかげりを見せていた大統領ですが、紛争によって国内政治的には、ロシア憎しの国民感情を受けて大統領の支持率が一気に高まりました。 そして今、また風向きが変わりつつあるようにも・・・ “flickr”より By onewmphoto
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【2回目の国際会議】
グルジア紛争は北京オリンピック開幕の8月でした。
10月に行われた最初の国際会議は、南オセチアとアブハジアを独立国として参加させたいロシアと、独立を認めないグルジアが両地域の参加資格をめぐって対立し、実質的な協議に入れませんでした。
2回目の国際会議が今月19日、ジュネーブで開かれました。
会議は、EUと国連、全欧安保協力機構(OSCE)が主催し、ロシアとグルジア、米国が参加。
グルジアから独立を宣言した南オセチアとアブハジアの代表団も会場に入っており、両地域を協議に加えるため「個人資格」での参加にするという妥協が成立したようです。
次回会合を12月17、18日にジュネーブで開くことで合意して終了しており、初の実質的議論という意味で
一定の前進があったと報じられていました。
****グルジア:露と紛争後初の直接対話 和平へ前進****
会議は約3時間にわたって行われ、▽両地域の治安維持と安定の確保▽避難民の帰還--の二つの作業部会を開催。次回会合までに、避難民の安全な帰還や信頼醸成措置などに関する具体案を探ることで一致した。
米国代表のフリード国務次官補は会議後、「(両地域の)参加資格のような根源的問題に関する考えの違いは残っているものの、和平プロセスは動き出した」と語った。EUのモレル特別代表も「我々は大きな一歩を踏み出した」と強調した。
また、ロシア代表のカラシン外務次官は「(ロシアとグルジアの)立場の隔たりは大きく残っている」としながらも、「すべての代表者が最初から最後まで参加し、同じ資格で協議したことが重要だ」と述べた。【11月20日 毎日】
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アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議出席のためにペルーを訪れたブッシュ米大統領とメドベージェフ・ロシア大統領は22日、リマで会談しましたが、「会談は友好的だったが、率直で直接的な意見が交換された」(ペリノ米大統領報道官)とのことで、グルジア問題での双方の対立は解消しなかったようです。
(外交的な表現というのはなかなか面白いものです。)
【EUは軌道修正か】
対ロ強硬姿勢を維持しているアメリカですが、EUは軌道修正してきています。
紛争を受けて凍結していたロシアとの協力関係強化のための交渉再開を先月14日に決めたEUは、議長国フランスが21日、ロシアとグルジアの軍事衝突の原因や経緯などについて真相を解明するための調査を近く開始すると発表しています。
グルジア側の無差別砲撃が紛争の引き金を引いたというBBC放送など、グルジア側の「勇み足」を指摘する報道が出る中、調査結果がEUとロシア、グルジアとの今後の関係に影響を及ぼすのは必定とも報じられています。
8カ月にわたり現地で情報収集などの調査にあたり、来年7月末までに報告書をまとめる予定です。
****グルジア紛争:EUが原因調査へ…対露融和姿勢受け****
衝突発生の経緯を巡っては「南オセチアの分離派が攻撃したため、反撃した」と主張するグルジアに対して、ロシアは「グルジアが先に南オセチアに侵攻した」と反論、言い分が食い違っている。11月7日付米ニューヨーク・タイムズ紙は監視員の証言を基に「分離派に対するグルジア軍の無差別砲撃が市民やロシア軍平和維持部隊を危険にさらした可能性がある」と報じた。
グルジア紛争で和平合意を取りまとめたサルコジ仏大統領は14日のEUロシア首脳会議で、対グルジア人道支援を理由に軍用機・艦船を派遣して緊張を高めた米国の対応を批判。グルジアの反対を押し切り、ロシアとの戦略的パートナー関係確立を目指す協定交渉を12月2日に再開すると決め、メドベージェフ露大統領が提唱する「新たな欧州安全保障の枠組み」を協議する用意を表明、対露融和姿勢を強めている。
北大西洋条約機構(NATO)は12月2、3の両日、ブリュッセルで開く外相会議で、将来のグルジア加盟の見通しと、凍結している大使級対露協議の再開の是非を協議する。南オセチアなどにロシア軍部隊が残留していることから、米国は「従来通りの関係に戻るのは困難」(フリード国務次官補)と早期協議再開に後ろ向きだ。ロシアとの関係を巡り、米国主導のNATOと、EUの間で足並みの乱れが露呈する可能性がある。【11月22日 毎日】
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【「バラ革命」同志も離反】
グルジア国内においても、サーカシビリ大統領に対する“逆風”が吹き始めています。
親欧米民主派がシェワルナゼ前大統領を追放した政変「バラ革命」から23日で5年。
バラ革命の同志だったブルジャナゼ前国会議長が23日に新たな野党を旗揚げしました。
****グルジア:「バラ革命」5年 大統領苦境 対露衝突で内外支援変化*****
党首となったブルジャナゼ氏は、ロシア軍の侵攻で南オセチアとアブハジアを事実上失ったサーカシビリ政権を厳しく批判。「戦争に負け、国土の一部のコントロールを失った政府は退陣するか、国民が選挙で交代させなければならない」と訴えた。ブルジャナゼ氏は次期大統領選の有力候補とされる。
一方、サーカシビリ大統領は22日夜、テレビ演説し、「バラ革命で期待されたことがすべて実現したわけではない。期待は常に可能性を上回るからだ」と国民に理解を求めた。
グルジアではこれまでに「バラ革命」の同志の多くが大統領の強権体質などを理由に政権を離れ、野党に回った。8月の紛争直後は大統領の求心力が高まったが、その後、開戦責任論が浮上し、野党勢力は大統領の辞任と繰り上げ大統領選の実施を求めている。【11月24日 毎日】
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【疑惑の銃弾】
そんな折、100年前だったら世界的戦争にも繋がりかねない物騒な銃弾が飛びました。
****グルジア、ポーランド両首脳の車列に銃撃 オセチア近辺*****
インタファクス通信によると、グルジアのサーカシビリ、ポーランドのカチンスキ両大統領の車列が23日、南オセチア自治州に近い緩衝地帯で銃撃された。AFP通信によると、グルジア大統領報道官は南オセチアに駐留するロシア軍部隊が銃撃したとしている。両大統領は無事という。
イタル・タス通信はワルシャワ発で、カチンスキ大統領の車列に向けて銃撃があったことを伝えた。23日はグルジアの民主化運動「バラ革命」の5周年の日で、記念行事が首都トビリシで催され、同じ反ロシアの立場をとるカチンスキ大統領も出席していた。【11月24日 朝日】
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カチンスキ・ポーランド大統領は「約30メートルの至近距離で銃撃音がしたが、車列に向けた発砲だったのか空中への警告射撃だったのかはわからない」と語っています。
ロシア国防省や南オセチア当局者は発砲を全面否定。ロシアのラブロフ外相は24日、APEC首脳会議のため滞在中のリマで「グルジア側が仕掛けた挑発行為」だと非難しています。
常識的に考えても、EUの動きに見られるように、風向きがフォローにかわりつつあるロシアがここで、“大統領銃撃”などを意図的にやるとも思われません。
“インタファクス通信によると、南オセチアの治安当局者は、約30台の車列の一部がグルジア側から南オセチア側へ境界を許可なく強行突破しようとしたため、「違法行為への警告措置を取った」と説明。発砲は否定している。”【11月25日 毎日】
「違法行為への警告措置を取った」というのがなんでしょうか?
“ひょっとして、国内外の情勢が厳しくなってきたサーカシビリ大統領が、自作自演の危ない芝居を打ったのでは・・・”とも最初思ったのですが、上記インタファクス通信報道が正しければ、発砲を否定している南オセチア側の「違法行為への警告措置」だったのでしょうか?
それにしてもきわどい警告です。